中村錦平 中村錦平の概要

中村錦平

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/04 01:43 UTC 版)

人物像

東京焼窯元、多摩美術大学名誉教授、金沢美術工芸大学名誉客員教授、(財)クラフト・センター・ジャパン元常務理事、国際陶芸アカデミー会員(~2001)、日本国際文化研究センター共同研究員(2004 - 2008)。

1935年、金沢の窯元・中村梅山の三代目として生まれる。金沢美術工芸大学彫塑科中退。「割烹 中嶋」で北大路魯山人の器と料理を学んだ後、やきものを始める。1945年(小学4年・10歳)の敗戦で心身ともに揺さぶられ、理想主義と批判と革新の意識をもつ。しかし、世襲によって保守的な陶芸界が展開する生地・金沢の状況にぶつかる。その状況が反面教師として機能し、アプレゲール(戦後派)なやきものを生む。1966年の銀座ソニービルや1967年のモントリオール万博日本館の「陶の壁」制作、個展「せめぎあう戒め度し難し」を評価され、1969、70年にJ.D.ロックフェラーⅢ財団(現:アジアン・カルチュラル・カウンシル)の日米文化交流フェローとなる。

帰国後、「時代こそが素材、土は宅配便で」と東京・青山に電気窯を設置、「東京焼」と呼称。多摩美術大学絵画科油画専任講師に就任し「伝統を拠り所とする日本陶芸vs.現代文明とのやりとりで成る米国の陶芸」の比較研究を基に、1973年「現代陶芸」を開講。1989年《やきもの新基地東京・現代日本の陶芸家たち》(学研)が「80年代には多摩美術大学を卒業した人達が登場、現代陶芸の新段階に入る」と紹介[3]。1993年、個展「東京焼・メタセラミックスで現在をさぐる」(石川県立美術館)で第44回芸術選奨文部大臣賞。1998年、多摩美術大学に新設された工芸学科の初代学科長に就任。2006年、文化庁長官表彰

「陶や土を核とするものの『文明/社会/時代とのやりとりに表現を与える』といったアートをめざす。この半世紀、文明が手工業 → 工業化/高度工業化 → 情報化へと著しく展開するのを見た。初期文明における手工業や陶芸も美しい。だが文明の展開とやりとりできない存在は中身を欠き形骸となる。自らの表現を元気にするのは、時代と切り結ぶことだ、と考えるに至った。」[4]

大学教育においても学生達に同時代的手本を示したく実績を積む。「彼は、現代の社会に対して積極的に語りかける。戦後民主主義と文化国家建設の理念の、強烈な時代の申し子的世代の彼としては当然のことだが、戦後30数年を経過した現在では、まことにめずらしい貴重な存在といえる。」「彼の解答である造形は、文学性に富み、詩情に溢れている。従って、一見難解さに満ちているようだが、彼の作家としての義務感、責任感の良心的発露は時として戦闘的、ポレミーク[5]にみえるが、それこそが彼の造形の真の魅力でもある。」[6]

個展

  • 1969 「せめぎあう戒め 度し難し」壱番館画廊 (東京)
  • 1976 「土⇋⇋水」インスタレーション アートコア (京都)
  • 1981 「デコレーション・物質感希薄な空間のために」グリーン・ギャラリー (東京)
  • 1984 「陶祠」インスタレーション ギャラリー白 (大阪)
  • 1988 「日本趣味解題」フジヰ画廊モダーン (東京)
  • 1993 「東京焼・メタセラミックスで現在をさぐる」インスタレーション 石川県立美術館
  • 1994 「東京焼・メタセラミックスで現在をさぐる」 スパイラルガーデン(東京)・芦屋市立美術博物館 (兵庫)
  • 2000 「東京焼・Anti-Virtual-Reality《触》と《飾》」インスタレーション ギャラリーなつか (東京)
  • 2003 「東京焼VS.MESH WORK 中村一家 錦洋組展 -触×飾×透-」インスタレーション ギャラリーなつか (東京)
  • 2014 「OPAM VS.東京焼」インスタレーション 竣工記念 大分県立美術館

  1. ^ 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.486
  2. ^ a b 「あの名作住宅をふたたび」藤森照信 『モダンリビング』 2013 1月号
  3. ^ 『現代日本の陶芸家達 やきもの新基地 東京』学習研究社 1989
  4. ^ 「20世紀後半 現代陶芸の50年」中村錦平 『多摩美術大学研究記要26号』(2012)に詳述
  5. ^ 「論争的」という意味。
  6. ^ 『現代日本の陶芸 第14巻』講談社 1984
  7. ^ 『伝統工藝再考 京のうちそと』稲賀繁美編 思文閣出版 2007 所収
  8. ^ 「光を塗りこめて棲む」中村錦平 『流行通信』 1979 4月号


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