ロシア文学 現代ロシア文学

ロシア文学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/03 23:31 UTC 版)

現代ロシア文学

20世紀末には、ロシア文学は難しい局面を迎える――数十年間に及ぶソ連の社会主義によって損なわれた土壌の再生の局面である。この時期に必要とされたことが2つあった。新しい才能の育成と発見および、ロシアにおける出版市場の創出である。出版社は成長のための資金を、三流の小説を売ることで獲得した。ヴィクトル・ペレーヴィンウラジーミル・ソローキンのように頭角を現す作家は僅かであった。出版社は、共産主義時代の重苦しい作品や、サミズダートにより知られていた作品などはほとんど出版しなかった。

ロシアの出版社にとっての金の卵は、他国同様、推理小説であった。ダリヤ・ドンツォヴァロシア語版の皮肉の込められた推理小説は大成功を収めた。ドンツォヴァの50に及ぶ推理小説は数百万部を売り上げ、ヨーロッパ諸語へも翻訳された。

21世紀初頭には、ロシア語出版の需要は、質と量の双方で大きく増大した。その結果、ロシアの出版界は「ロシアの悲劇四部作[注釈 4]」で知られるエドワード・ラジンスキー等の新しい文学的才能を発掘し、報酬を与えることで顧客に作品を供給しなければならないようになった。出版社と部数は増加を続けている。

タチヤーナ・トルスタヤリュドミラ・ウリツカヤといった一部のロシア作家たちは今では西ヨーロッパや北アメリカでも人気となっている。ボリス・アクーニンの探偵小説『エラスト・ファンドーリンロシア語版』シリーズはヨーロッパや北アメリカでも刊行されている。ロシア最大の探偵小説作家アレクサンドラ・マリーニナポリーナ・ダシコワも、その作品をヨーロッパで売ることに成功しており、特にドイツで大きな成功を収めている。

より伝統的な文学も、地方のインテリの日々の困難と喜びの物語を書くペルミの作家ニーナ・ゴルラノヴァロシア語版や、チュクチのアイデンティティの問題を語るチュクチ自治管区の作家ユーリー・ルィトヘウロシア語版といった遠隔地出身の作家たちの到来によって新しい飛躍を迎えている。

ドミトリー・グルホフスキーセルゲイ・ルキヤネンコといった作家はサイエンス・フィクションで成功を収め、映画化やコンピュータゲーム化もされている。


注釈

  1. ^ ロマノフ朝は1917年、ニコライ2世まで続く
  2. ^ 今日用いられているキリル文字ウラジーミル・レーニンによる1917年の2度目の改革によるものである。
  3. ^ 19世紀全般を指す場合と1800年から1840年頃(プーシキン、レールモントフの時代まで)を指す場合があるので注意。
  4. ^ 「ロシアの悲劇四部作」とは、農奴解放英語版期を描いた『アレクサンドル2世暗殺』、日露戦争期を描いた『真説ラスプーチン』、ロシア革命期を描いた『皇帝ニコライ処刑』、スターリン時代を描いた『赤いツァーリ』、以上の歴史小説四部作を指す。

出典

  1. ^ Efim Etkind, Georges Nivat, Ilya Serman, Vittorio Strada, Histoire de la littérature russe. Des origines aux Lumières, p. 11.
  2. ^ Efim Etkind, Georges Nivat, Ilya Serman, Vittorio Strada,Histoire de la littérature russe. Des origines aux Lumières, p. 12.
  3. ^ Porte-parole slavophile, auteur d'une Histoire de la littérature russe, essentiellement ancienne (1846-1860) très répandue à l'époque, cité par Efim Etkind, Georges Nivat, Ilya Serman, Vittorio Strada, Histoire de la littérature russe. Des origines aux Lumières, p. 703.
  4. ^ Efim Etkind, Georges Nivat, IlyaSerman, Vittorio Strada, Histoire de la littérature russe. Des origines aux Lumières, p. 11.
  5. ^ Traduction de Heni Bloch et Alzir Hella, Grasset. 1949, 309 p
  6. ^ Maisonneuve et Larose, 2001, 350 p. ISBN 2-7068-1491-8






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