リスク回避 リスク回避の概要

リスク回避

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/16 14:58 UTC 版)

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定義

任意のギャンブルAから得られる利益を確率変数 とし、 には期待値 が存在するとする。さらにギャンブルBを確実に の利益が得られるギャンブルとする。 この時、ある選好がリスク回避的(: risk averse)であるとはその選好においてギャンブルBは少なくともギャンブルAと同等以上に好ましい時を言う[1]

リスク愛好的であるとは、ギャンブルAが少なくともギャンブルBと同等以上に好ましい時を言う。リスク中立的であるとは、ギャンブルAとギャンブルBが無差別である時を言う。

確実性等価

ある選好関係が期待効用関数

で表されるとする。ただし は何らかの関数とする。この関数 はベルヌーイ効用関数(: Bernoulli utility function[2]、基礎的効用関数(: cardinal utility function[3]などと呼ばれる。この時、確率変数 の関数 についての確実性等価: certainty equivalent)とは次を満たす定数 のことを言う[4][5]

確実性等価は不確実性な利益 をもたらすギャンブルと同じ効用水準をもたらす不確実性のないギャンブルで支払われる利益を指す。ベルヌーイ効用関数 が単調非減少である時、以下の3つは同値であることが知られている[6]

  • 数式(1)における期待効用関数で表現される選好がリスク回避的である。
  • 選好が数式(1)における期待効用関数で表される時、凹関数である。
  • 任意の確率変数 の関数 についての確実性等価を とすると、 が成り立つ。

3番目の条件から、リスク回避的な選好を持つ意思決定者は、不確実なギャンブルに対しては確実なギャンブルから得られる利益以上の平均的な利益を要求することが分かる。

リスク回避度

ある選好が数式(1)による期待効用関数表現を持ち、ベルヌーイ効用関数 が2階微分可能であるとして次を定義する。

ただし、 はそれぞれ関数 の1階微分と2階微分を指すとする。 この をベルヌーイ効用関数 についてのアロー=プラットの絶対的リスク回避度: Arrow-Pratt coefficient of absolute risk aversion)、またはアロー=プラットの絶対的危険回避度と呼ぶ[7][8][9][10]。単純に絶対的リスク回避度と呼ぶこともある。 が単調増加かつ凹関数ならば、 の絶対的リスク回避度は必ず非負になる。

リスク回避的な選好を表現している期待効用関数のアロー=プラットの絶対的リスク回避度の大きさはその選好がどれほどリスクを嫌うかを表している。つまり、異なる単調増加かつ凹関数であるベルヌーイ効用関数 について、その絶対的リスク回避度 が、 を満たすならば、 をベルヌーイ効用関数として持つ期待効用関数で表現される選好の方が をベルヌーイ効用関数として持つ期待効用関数で表現される選好に比べてよりリスクを嫌う傾向にある[11]

また同様に次で定義される係数をアロー=プラットの相対的リスク回避度: Arrow-Pratt coefficient of relative risk aversion)と呼ぶ[12][13]


  1. ^ Mas-Colell, Whinston and Green & (1995) p.185
  2. ^ Mas-Colell, Whinston and Green & (1995) p.184
  3. ^ 池田 & (2000) p.12
  4. ^ Mas-Colell, Whinston and Green & (1995) p.186
  5. ^ 池田 & (2000) p.17
  6. ^ Mas-Colell, Whinston and Green & (1995) p.187
  7. ^ Mas-Colell, Whinston and Green & (1995) p.190
  8. ^ 池田 & (2000) p.19
  9. ^ Arrow & (1951)
  10. ^ Pratt & (1964)
  11. ^ Mas-Colell, Whinston and Green & (1995) p.191
  12. ^ Mas-Colell, Whinston and Green & (1995) p.194
  13. ^ 池田 & (2000) p.22
  14. ^ 池田 & (2000) p.30
  15. ^ a b 池田 & (2000) p.32
  16. ^ 任意のベルヌーイ効用関数を用いた期待効用関数と、そのベルヌーイ効用関数に対する任意の正アフィン変換をベルヌーイ効用関数として用いた期待効用関数は同じ選好を表現している。 Mas-Colell, Whinston and Green & (1995) p.173
  17. ^ Mas-Colell, Whinston and Green & (1995) p.209


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