ライトレール 概念

ライトレール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/10 08:45 UTC 版)

概念

ライトレール (Light rail) という概念は、1972年ごろにアメリカ合衆国運輸省都市大量輸送管理局(UMTA、現・連邦公共交通局英語版、FTA)によって制定された。これによれば、「大部分を専用軌道として部分的に道路上(併用軌道)を1両ないし数両編成の列車が電気運転によって走行する、誰でも容易に利用できる都市の交通システム」とされ、高コストな建設費を避け、輸送力は高架鉄道や地下鉄よりは小さく、路面電車路線バスよりは大きく、専用軌道を基本とし併用軌道を最小限とすることで、概ね運行が道路交通に影響されない形態の都市旅客鉄道を意味する。

これは大量輸送力を持つ本格的な鉄道[注 3]である都市高速鉄道(北米のラピッド・トランジットメトロのこと)に対比させており[注 4]路面電車 (streetcar[注 5]) からも利用の容易性などの一部の長所を取り入れ、新たな第三の都市鉄道となっている[注 6]。概ね専用軌道比率が高く、また連節車を2、3編成程度連結して運行する形態が多い。

ただし北米以外では、必ずしも統一された定義があるわけではなく、「車体幅が2.65m以下のやや小型な車体を使用し、中量輸送(最大輸送量が1時間当たり5000~15000人ぐらい)をする電気鉄道」がこう呼ばれることが多く、高架で自動運転されるロンドンのドックランズ・ライト・レイルウェイもLRTとされる[1]。アメリカやカナダ、イギリスでは高床車両を用いた専用軌道の形態も多い。アジアでもフィリピンのマニラLRT-1線マニラMRT-3線、香港の軽鉄でも同様に高床車両を用いている。

なお近年は低床車両の導入および都市計画との密接な連携をセットにして導入される事例も見られる[注 7]日本では低床車両の路面電車(併用軌道)を指してLRTと呼称することも多い[独自研究?]

イギリスでライトレールなどの情報をまとめている第三者団体、ライトレール交通協会 (LRTA)は、専用軌道比率の高い日本の江ノ島電鉄広島電鉄宮島線筑豊電気鉄道京福電気鉄道(嵐電)、東急世田谷線阪堺電気軌道の6路線をライトレールに相当する鉄道として分類している[2]。これに対して富山ライトレールは「トラムトレイン」、宇都宮ライトレールは「トラム」、また地方鉄道路線の多くは「Electric light railways(電気軽便鉄道)」に分類している。


注釈

  1. ^ Light rail vehicle (LRV) という言葉は、アメリカ標準型路面電車(US Standard Light Rail Vehicle、ボーイング・バートル社製造)から始まった。
  2. ^ 近年のライトレール向け車両は、トラムトレインなどの併用軌道の走行を考慮して設計されているケースが多く、高速大量輸送対応の高規格型路面電車とも設計的に近いことがある。
  3. ^ ライトレールに対比して、ヘビーレール (Heavy Rail) と呼ばれる場合がある。
  4. ^ 自動車道路交通の影響を受けない都市高速鉄道メトロの軽量版の形態は、大別すると北米のライトレール(路面電車の利点を取り入れている)と各国の自動案内軌条式旅客輸送システム(欧州等のライトメトロ、北米では中量軌道交通、日本では新交通システム)とがある。
  5. ^ 路面電車を指す言葉は、欧州等では tram、北米では streetcar と呼ぶ。
  6. ^ 北米の都市鉄道は、ラピッド・トランジット(ヘビーレール)、ライトレール (LRT)、streetcar(路面電車)という区分で認識される。
  7. ^ ライトレールは、トランジットモールの公共交通機関として走行する事例があることから、日本ではこの2つをセットで紹介することが多いが、ライトレールの都心走行区間がトランジットモールとなっている例が特に多いわけではない。
  8. ^ ただしケルンのシュタットバーンでは、高床車両路線に加えて、1995年よりプラットフォームを高くせず低床車両を導入する路線も始めた。
  9. ^ 路面電車と地下鉄が直通する路線は、20世紀初頭にはアメリカのボストン(現在のグリーンライン)、アルゼンチンブエノスアイレス等に存在している。また、路面電車の一部が単に地下線になっているだけではシュタットバーンとは呼ばれない。現にボーフムエッセンでは、シュタットバーンと地下を走る路面電車の双方が存在する。ただし、その境は曖昧である。
  10. ^ ライトメトロの形態を持つ鉄道。自動運転の高架鉄道であり、日本で言う自動運転の新交通システム(鉄輪式)に近い。

出典






英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ライトレール」の関連用語


2
100% |||||

3
100% |||||

4
100% |||||

5
100% |||||

6
100% |||||

7
100% |||||

8
100% |||||

9
100% |||||

10
100% |||||

ライトレールのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ライトレールのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのライトレール (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS