マクドゥーガル報告書 問われている犯罪(国際法に対する違反)

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マクドゥーガル報告書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/03 08:03 UTC 版)

問われている犯罪(国際法に対する違反)

基礎には国際法に明文化されていなくても絶対に守るべき規範というユス・コーゲンスの考え方[2] があり、奴隷制、拷問、ジェノサイドがこれにあたる。日本政府はこの件で今まで国際裁判所などで訴追されたことはない。しかし理論的には2002年発効した国際刑事裁判所では、戦争犯罪についてはいつでも扱えうる(時効はない)。日本は未加盟であるが、オーストラリアなどの締約国が付託し(問題を預け)、常任理事会で認められ、検察官が起訴に適当とすればいつでも扱える状態にある[3](2007年7月に、日本は国際刑事裁判所ローマ規程加入している。(署名を経なくとも批准同様に法的拘束力を持つ)[4])。

奴隷制の国際慣習法による禁止は第二次大戦時までには明確に成立しており、第二次大戦後、刑事裁判の準備のために国際慣習法を明文化した東京・ニュルンベルク両裁判憲章に盛り込まれた。第二次大戦前には奴隷制に対する国際的非難が高まり、国際連盟で討議された1926年の奴隷条約は、奴隷制を「ある人に対して、所有権に伴う権能の一部または全部が行使される場合の、その人の地位または状況」と定義した。したがって遅くとも第二次大戦期には国際慣習法になっていた。奴隷制の禁止が当時既に国際的慣習でありコス・ユーゲンス(いついかなる状態でも守るべき規範)であるので国際法に明記されていなくても、奴隷制禁止に違反した罪で訴追できるとしている。
奴隷化、奴隷にするため移送すること、広範囲または組織的に行われた強姦の罪。これらは戦時、平時を問わずに訴追できる。また実行に限らず計画立案、方針検討でも訴追要因となる。更に大規模な侵害(多数で広範囲な地域への慰安所設置)という事態に直面した場合、行動を起こさなかった事自体も訴追の要因だとしている。
ジェノサイド犯罪の中核的要素は民族などある集団を滅ぼそうとする意図だが、女性という集団を通じてこれが成立する可能性が十分ある。その集団全体を滅ぼそうとする意図の証明は不要であり、かなりの部分を滅ぼそうとする意図の証明で十分である。意図の証明は殺害行為自体から推定する事がある程度認められる。(参考:ルワンダ紛争の判決では強姦によるジェノサイドが認められている)
  • (4) 拷問
武力紛争下の強姦と深刻な性暴力はその大部分が拷問として認定できる。欧州人権裁判所は拘禁中の強姦は拷問に相当するものとしている事を付記している。
戦争犯罪としての強姦の罪。強姦と強制売春が当時慣習法として禁止されていたことは十分に立証されている。戦争犯罪は国内・国外を問わずに武力紛争下における犯罪に問える。戦争犯罪としての強姦は被害者の意志に反しているという証明は不要であり、戦争下に慰安所にいたという状態だけで被害の証明になるとしている。

  1. ^ ほか、『戦時・性暴力をどう裁くか:国連マクドゥーガル報告全訳 凱風社 2000』でも和訳あり。
  2. ^ 条約法に関するウィーン条約第53条では「いかなる逸脱も許されない規範として、また、後に成立する一般国際法の規範によってのみ変更することのできる規範として、国により構成されている国際社会全体が受け入れ、かつ、認める規範」(日本政府による日本語訳)と定義される。加害者又は被害者にその国の国籍がなくても、犯罪の実行がその国の領土でなされていなくても、普遍的裁判管轄権にもとづき全ての国家が訴追できる(戦時性暴力をどう裁くか、凱風社、2000)
  3. ^ 戦争犯罪と法、多谷千香子、岩波書店、2006
  4. ^ United Nations Treaty Collection: Rome Statute of the International Criminal Court”. 2012年4月15日閲覧。
  5. ^ 名称は「人権と基本的自由の重大な侵害を受けた被害者の原状回復、賠償及び公正を求める権利についての研究」
  6. ^ 名称は「女性への暴力特別報告」
  7. ^ 荒船放言
    昭和四十年(1965年)6月、日韓基本条約が締結。このとき3億ドルの無償援助を含め8億ドル以上の援助を与えることになった。3億ドル=1080億円は、当時の政府予算の約1割である。また他の5億ドルも利子が低く返済が20年など長期で事実上の無償援助と言われた。 荒舩清十郎代議士はこの半年後に地元選挙区で、日本は巨大な金銭的人道的非道をして莫大な補償を求められたが、それらを3億ドルに負けさせたと全くの嘘をついた。このことは、後に慰安婦問題につながり、国連のマクドゥーガル報告書の日本軍の性奴隷制+虐殺の根拠とされた。
    「「慰安婦」問題とアジア女性基金」(11頁=p12/100)[1] によると、荒船は選挙区の11月20日の集会(埼玉県秩父郡市軍恩連盟招待会)で以下のように語った。―――
    「戦争中朝鮮の人たちもお前たちは日本人になったのだからといって貯金をさせて1100億になったがこれが終戦でフイになってしまった。それを返してくれといってきていた。それから36年間統治している間に日本の役人が持ってきた朝鮮の宝物を返してくれといってきている。徴用工に戦争中連れてきて成績がよいので兵隊にして使ったがこの人の中で57万6000人死んでいる。それから朝鮮の「慰安婦」が14万2000人死んでいる。日本の軍人がやり殺してしまったのだ。合計90万人も犠牲者になっているが何とか恩給でも出してくれといってきた。最初これらの賠償として50億ドルといってきたが、だんだんまけさせて今では3億ドルにまけて手を打とうといってきた。」
    日韓条約交渉時に韓国側は、韓国人労務者、軍人軍属の合計は103万2684人であり、うち負傷ないし死亡したのは10万2603人だと指摘したのですが、「慰安婦」のことは一切持ち出していません。あげられた数字はすべて荒船氏が勝手にならべた数字なのです。国連機関の委嘱を受けた責任ある特別報告者マクドゥーガル氏がこのような信頼できない資料に依拠したのは、はなはだ残念なことです。
    中国では金一勉氏の論文から荒船発言を知り、これを信じて、朝鮮人の「慰安婦」が14万2000人いたとすれば、自身の推定した36万、ないし41万の「慰安婦」総数のうち中国人「慰安婦」は20万人にのぼると結論する研究も出ています。これも荒船放言に導かれた誤った推論です。――――とされている。
  8. ^ 日弁連主催のゲイ・マクドゥーガル講演会(1999年6月2日 東京都千代田 弁護士会館)


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