マクドゥーガル報告書 慰安婦問題に影響する附属文書

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マクドゥーガル報告書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/03 08:03 UTC 版)

慰安婦問題に影響する附属文書

背景

1990年初期に始まった元「日本軍慰安婦」の個人補償請求運動が、被害者の主張に賛同する国際世論を導きだしJCL[要曖昧さ回避]ILO、ICPO-INTERPOL、WCC[要曖昧さ回避]などの支持と協力を得て展開された。国連での活動は1992年頃から主に国連人権小委員会を足場にして行われ様々な報告と決議がおこなわれてきた。

1992年12月18日、人権小委員会でIED[要曖昧さ回避](国際教育開発)が慰安婦・強制連行の問題を取り上げ、この問題の国際的解決を訴えた。1993年5月国連人権委員会で日本政府に対して、元慰安婦に対して個人補償を勧告するIEDの最終報告書が正式に採托され、日本政府に留意事項として通達された。1994年国連人権委員会の「人権委員会差別防止・少数者保護小委員会」で「戦時奴隷制問題」の特別報告者にリンダ・チャペス委員が任命され、その後マクドゥーガル委員に代わった。

この時期日本政府はアジア女性基金を設置し元慰安婦個人への補償を行う方針を決めていたが、1995年4月の現代奴隷制作業部会は「第2次世界大戦中に性奴隷とされた女性の問題に関して」初めて日本政府を名指しし、行政的審査会設置による解決を勧告した。1995年8月国連人権委員会はこの勧告を受け入れる決議をしている。

これ以前にも、国連人権委員会の「人権委員会差別防止・少数者保護小委員会」特別報告者であるファン・ボーベンによる最終報告書(1993年8月提出)[5] 、同じく「戦時奴隷制問題」の特別報告者のラディカ・クマラスワミにいよるクマラスワミ報告書(1996年4月採択)[6] がある。

批判

アジア女性基金は名乗り出た慰安婦への援助金を集めて分配したが、その終了にあたって2004年にまとめた「慰安婦問題とアジア女性基金」において、マクドゥーガルが報告書の附属文書で、慰安所を等しく「レイプセンター」と呼び、慰安婦20万のうち14万人以上の朝鮮人慰安婦が死亡したという内容はまったく根拠がなく、その原因は自民党 荒舩清十郎代議士の全く根拠の無い放言にあるとしている[7]。もし朝鮮人慰安婦の死者が14万5000人(荒舩放言は14万2000人)で生存率が25%なら、朝鮮人慰安婦だけで58万人いたことになる。(荒舩は「徴用工に戦争中連れて来て成績がよいので兵隊にして使ったが、この人の中で57万6000人死んでいる。」と言っている。)(詳しくは荒舩清十郎#荒舩放言を参照)

マクドゥーガル報告書 (付属文書の抜粋) (アジア女性基金 訳)

序論

1 1932 年から第二次世界大戦が終わるまで、日本政府と日本帝国軍は20万以上のアジ ア女性を強制的にアジア各地のレイプセンターの性奴隷とした。

(略)

Ⅱ.レイプセンターの性格と規模

7 (略)これらのセンターで日本軍によって奴隷化された女性たちの多くは11歳から20歳であったが、この女性たちは日本支配下のアジア全域の指定地区に収容され、毎日数回強制的にレイプされ、厳しい肉体的虐待にさらされ、性病をうつされたのである。5) こうした連日の虐待を生き延びた女性はわずか25%にすぎないと言われる。6) 「慰安婦」を確保するために、日本軍は身体的暴力、誘拐、強制、詐欺的手段を用いた。7)


注釈:6) Ibid., p. 499 and note 6(第二次大戦中に14万5000人の朝鮮人性奴隷が死んだという日本の自民党国会議員荒舩清十郎の1975年の声明を引用している)。
  • 原文注釈、1975年の荒舩清十郎の声明は、1965年の荒舩放言の間違い。


また、吉見義明からも学術的姿勢に欠陥を指摘されている。吉見はマクドゥーガルが政府調査に基づくと報告した中で実際に政府資料にない箇所を本人を前に指摘したが、マクドゥーガルは無視したという[8]


  1. ^ ほか、『戦時・性暴力をどう裁くか:国連マクドゥーガル報告全訳 凱風社 2000』でも和訳あり。
  2. ^ 条約法に関するウィーン条約第53条では「いかなる逸脱も許されない規範として、また、後に成立する一般国際法の規範によってのみ変更することのできる規範として、国により構成されている国際社会全体が受け入れ、かつ、認める規範」(日本政府による日本語訳)と定義される。加害者又は被害者にその国の国籍がなくても、犯罪の実行がその国の領土でなされていなくても、普遍的裁判管轄権にもとづき全ての国家が訴追できる(戦時性暴力をどう裁くか、凱風社、2000)
  3. ^ 戦争犯罪と法、多谷千香子、岩波書店、2006
  4. ^ United Nations Treaty Collection: Rome Statute of the International Criminal Court”. 2012年4月15日閲覧。
  5. ^ 名称は「人権と基本的自由の重大な侵害を受けた被害者の原状回復、賠償及び公正を求める権利についての研究」
  6. ^ 名称は「女性への暴力特別報告」
  7. ^ 荒船放言
    昭和四十年(1965年)6月、日韓基本条約が締結。このとき3億ドルの無償援助を含め8億ドル以上の援助を与えることになった。3億ドル=1080億円は、当時の政府予算の約1割である。また他の5億ドルも利子が低く返済が20年など長期で事実上の無償援助と言われた。 荒舩清十郎代議士はこの半年後に地元選挙区で、日本は巨大な金銭的人道的非道をして莫大な補償を求められたが、それらを3億ドルに負けさせたと全くの嘘をついた。このことは、後に慰安婦問題につながり、国連のマクドゥーガル報告書の日本軍の性奴隷制+虐殺の根拠とされた。
    「「慰安婦」問題とアジア女性基金」(11頁=p12/100)[1] によると、荒船は選挙区の11月20日の集会(埼玉県秩父郡市軍恩連盟招待会)で以下のように語った。―――
    「戦争中朝鮮の人たちもお前たちは日本人になったのだからといって貯金をさせて1100億になったがこれが終戦でフイになってしまった。それを返してくれといってきていた。それから36年間統治している間に日本の役人が持ってきた朝鮮の宝物を返してくれといってきている。徴用工に戦争中連れてきて成績がよいので兵隊にして使ったがこの人の中で57万6000人死んでいる。それから朝鮮の「慰安婦」が14万2000人死んでいる。日本の軍人がやり殺してしまったのだ。合計90万人も犠牲者になっているが何とか恩給でも出してくれといってきた。最初これらの賠償として50億ドルといってきたが、だんだんまけさせて今では3億ドルにまけて手を打とうといってきた。」
    日韓条約交渉時に韓国側は、韓国人労務者、軍人軍属の合計は103万2684人であり、うち負傷ないし死亡したのは10万2603人だと指摘したのですが、「慰安婦」のことは一切持ち出していません。あげられた数字はすべて荒船氏が勝手にならべた数字なのです。国連機関の委嘱を受けた責任ある特別報告者マクドゥーガル氏がこのような信頼できない資料に依拠したのは、はなはだ残念なことです。
    中国では金一勉氏の論文から荒船発言を知り、これを信じて、朝鮮人の「慰安婦」が14万2000人いたとすれば、自身の推定した36万、ないし41万の「慰安婦」総数のうち中国人「慰安婦」は20万人にのぼると結論する研究も出ています。これも荒船放言に導かれた誤った推論です。――――とされている。
  8. ^ 日弁連主催のゲイ・マクドゥーガル講演会(1999年6月2日 東京都千代田 弁護士会館)


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