プール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/29 20:31 UTC 版)
形態
プールの利用形態には、遊泳、教育、水泳(競泳、水球、アーティスティックスイミング、飛び込み)、潜水などがある[3]。競技用のものは国際水泳連盟によって種目別に細かく規格が定められており、オリンピックなどの国際大会で使用するプールはこの規格を達成していなければならない[4][5]。
遊泳
プールの水深は一般遊泳では1.2メートル程度、児童遊泳では0.6-0.8メートル程度が目安とされている[3]。
教育
教育目的の場合、プールの水深は小学校では0.8-1.2メートル程度、中学校では0.9-1.4メートル程度が目安とされている[3]。飛び込みで頭を打たないように、飛び込み台の近くは深くなっている。
飛び込みに関しては危険が伴い、死亡などの事故も起きているため、2012年の学習指導要領で禁止になった。2019年現在のスタート時の指導は以下の通り[6]。
- 小学校 - 水中からのスタートを指導する
- 中学校 - 泳法との関連において水中からのスタート及びターンを取り上げる
競泳
競泳用のプールでは、短水路と呼ばれる長さ25メートルのものと、長水路と呼ばれる長さ50メートルのものが定められており、競泳のタイムは水路によって別々に扱われる。これは、ターンの際に壁面を蹴ることによって加速が行われるため、特に長距離の種目ではターンの回数が多くなる短水路の方が長水路に比べてタイムが短くなる傾向があるためである[7][8]。長水路のプールは幅25メートル、水深2メートル以上のものも多く、長水路のプールを横方向に使って短水路の競技を行うこともある。
正確な長さについては、東京辰巳国際水泳場などの主要な国際水泳大会などが行われるような日本水泳連盟の公認プールは、長水路50.02メートル・短水路25.01メートルに設計されている。これは、タイムを測定するために厚さ1センチメートルのタッチ板を長水路ではプールの両端に1枚ずつ、短水路ではスタートサイドに1枚設置するためである。また、スタート台にはリアクションタイム(号砲が鳴ってから足が離れるまでの時間)を測定するための装置が付いており、台にかかる圧力によってそのタイムを測定する。これらの装置は、リレーのフライング判定にも組み合わせて使用される。なお、スタートの場合は号砲が鳴る前にスタート動作に入ったらフライングと判定される(日本水泳連盟競泳競技規則第4条2項)ため、リアクションタイムはスタートの反応を知るための参考にしかならない。リレーの引き継ぎは、リアクションタイムがマイナス0.03秒以上早いと自動的に失格となる。
水温についても国際規格で、摂氏25℃から28℃までの範囲内に収まるよう調節しなければならないとされるが、2010年の改正以前は26℃を一つの目安、±1℃を許容範囲としていた。この範囲を逸脱した状態での記録は公認されない。
水球
水球競技では、水深2メートル以上のプールに、男子は縦30メートル×横20メートル、女子は縦25メートル×横17メートルのコートをフィールドロープで区画して作り、コートの両ゴールライン中央にはゴールが浮かべられるため、ゴールのスペースも含めた競技面積以上のプールが必要となる。一般には50メートル競泳プールが使用されるが、宮城県仙南総合プールは35メートル×25メートルの水球公認プールで、国内唯一の屋内温水水球専用プールとして知られる(非公開施設としては、秀明栄光高校の屋内温水水球専用プールや秀明大学の屋内女子水球専用プールも存在する)。
アーティスティックスイミング
アーティスティックスイミング用のプールでは、定められた面積について3メートル以上の水深を持つことが必要であるが、フィギュアとルーティンによって要求される面積は異なる。競泳用プールと共用するため、東京辰巳国際水泳場などではプールの底が可動式になっており、水深を競技によって変更できる。
飛び込み
飛込競技用のプールでは、水深は5メートル以上が必要であり、高飛び込み用の10メートル、7.5メートル、5メートルの高さの台と、板飛び込み用の3メートルと1メートルの高さの台が設置される。各飛び込み台の端は、プールの上空に張り出した形状になっている。
潜水
潜水用のプールでは、水深は1.5メートル程度(初心者は1.35メートル程度)が目安とされている[3]。潜水用のプールには、5.5メートルという深さを持つものもある[3]。
注釈
出典
- ^ プールは泳がずとも運動に 水中歩行で無理なく鍛える『日本経済新聞』朝刊別刷りNIKKEIプラス1(2018年7月15日)2018年8月5日閲覧。
- ^ 多度峡天然プール 三重県観光連盟(2018年8月5日閲覧)。
- ^ a b c d e f 建築思潮研究所『建築設計資料 (41) 体育館・武道場・屋内プール』建築資料研究社、1993年、17頁。
- ^ 国際水泳連盟 (FINA) による規格
- ^ ベースボール・マガジン社による解説
- ^ 第4章水泳指導と安全 学校体育実技指導資料第4集「水泳指導の手引(三訂版)」(文部科学省) (PDF)
- ^ 短水路世界記録 (FINA)
- ^ 長水路世界記録 (FINA)
- ^ a b c d e f g 瀧澤次朗『知れば100倍楽しめる!オリンピックの秘密』彩図社、2008年、108-109頁
- ^ “第9回世界水泳大会福岡2001 プール導入事例”. ヤマハ. 2023年10月5日閲覧。
- ^ “ヤマハ発動機、プール事業から撤退 国内需要低迷で”. 日本経済新聞 (2023年7月3日). 2023年10月5日閲覧。
- ^ a b c “学校における水泳プールの保健衛生管理”. 財団法人日本学校保健会. p. 40-46. 2022年7月6日閲覧。
- ^ プール監視員の道/吸水口・排水口の事故事例の一覧(2018年8月5日閲覧)。
- ^ 「YAMAHA」のプールが、学校でどんどん増えていったワケ (4/7)
- ^ “目洗う蛇口「平成の遺産」? プールの授業で洗眼器使われず”. 北国新聞. 2022年7月6日閲覧。
- ^ “避難所となる学校施設の防災機能に関する調査研究(p6)”. 文部科学省大臣官房文教施設企画部 (2023年). 2024年1月20日閲覧。
- ^ 南海クリヤー・クリヤー 南海化学
- ^ a b c “遊泳用プールの衛生基準”. 厚生労働省. 2013年4月14日閲覧。
- ^ a b “衛研ニュース 第4号”. 川崎市衛生研究所. 2013年5月14日閲覧。
- ^ “[改訂版]学校環境衛生管理マニュアル 「学校環境衛生基準」の理論と実践”. 文部科学省. 2013年4月14日閲覧。
- ^ http://nspf.org/en/NewsNew/15-05-19/Healthy_Pools_Red_Eye.aspx
- ^ “プールの水に寄生虫や病原菌、集団感染の原因に”. CNN (2018年5月17日). 2018年5月19日閲覧。
- ^ 「飛び込みで後遺症 中学プール事故で和解へ/岐阜・多治見」 産経WEST(2018年2月20日)2018年8月5日閲覧。
- ^ 水深1mプール飛び込み大事故に「授業で禁止」がなぜ 朝日新聞 2019年5月20日
- ^ The Promise: A Tragic Accident, a Paralyzed Bride, and the Power of Love, Loyalty, and Friendship - Amazon.co.jp
- ^ 笠原真 (2018年8月27日). “プール4歳死亡、保育園長ら書類送検へ 監視に過失疑い”. 朝日新聞 2022年8月26日閲覧。
- ^ 訓練中に学生が死亡 学校が謝罪 NHK 2020年7月11日
- ^ 藤澤安貴夫「学校における水泳プールの保健衛生管理に関する研究」学位論文(2010/3) 兵庫教育大学
- ^ プールで泳いでクリプトスポリジウムに感染!!神奈川県衛生研究所 感染症情報センター(2018年12月6日閲覧)。
- ^ Neale RE, Purdie JL, Hirst LW, Green AC (November 2003). “Sun exposure as a risk factor for nuclear cataract”. Epidemiology 14 (6): 707-12. doi:10.1097/01.ede.0000086881.84657.98. PMID 14569187.
- ^ ナイトプール、ちょっとプレミアムな夏の夜『日本経済新聞』電子版及び夕刊2017年8月14日
- ^ 朝日デジタル 2018年2月23日- 景色とプール・温泉がひとつにつながるプリンスホテルの「インフィニティ」を紹介
- ^ Leitereg, Neal J. (2015年3月26日). “Chris Bosh drops price on hilltop estate in Pacific Palisades”. ロサンゼルス・タイムズ 2018年9月16日閲覧。
- ^ Osborne, Claudia (2015年3月4日). “14 Enchanting Infinity Pools That Are Built to Take Your Breath Away”. Traveling Sage. 2015年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月16日閲覧。
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