フダイビーヤの和議 内容

フダイビーヤの和議

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/21 19:13 UTC 版)

内容

交渉の結果、以下の内容の和約が締結された。

  • 10年間の休戦[1][15][16][17][18]
  • 巡礼団は一旦マディーナ(メディナ)に帰還し、翌年にムスリムの巡礼のために3日間マッカを開放する[4][16]
  • 保護者の同意なくマディーナに移住したマッカの住民を無条件でマッカに送還する[16][17]
  • ムハンマドの元からマッカのクライシュ族の元に移った人間はそのままマッカに留め置かれる[18][17]
  • マッカ周辺の部族、個人は自由にムハンマドと同盟を締結できる[16][17]

マッカ側はムハンマドが「アッラーの使徒」として和議を結ぶことを認めず、「アブドゥッラーの息子ムハンマド」として書名を行わせた[19]。和約の条件はクライシュ族にとって有利なものであり、ムスリムの中でもアブー・バクルは無条件にムハンマドの決定に従ったが、ウマルのように和約の内容に不満を抱く者もいた[18]。また、目的の小巡礼を果たさずにマディーナに帰還することに、多くの信徒が困惑した[19]しかし、ムハンマドは期待以上の成果を上げたと考え[20]、和議の結果はムハンマドの戦略眼の確かさを示す例にも挙げられる[19]

和約の成立後、上に挙げられた条件に基づいて、ムハンマドの信徒の一人であるアブー・ジャンダルが改宗を認めない父親によってマッカに連れ戻された[21]。和約の成立後、ムハンマドは頭を剃り、生け贄を奉げる儀式を行った。この時にムハンマドは先にバドルの戦いで敗死したアブー・ジャハルが所有していたラクダを生け贄として屠り、クライシュ族を挑発した[22]。マディーナへの帰途で、ムハンマドは和約がムスリムにとって有利な結果に繋がる啓示を一団に伝え、帰還した[23][24]


  1. ^ a b c d 後藤「フダイビヤの和議」『新イスラム事典』、429頁
  2. ^ a b 佐藤『イスラームの歴史』1、72-73頁
  3. ^ イスハーク『預言者ムハンマド伝』3、121頁
  4. ^ a b c d e 前嶋『イスラムの時代』、80-81頁
  5. ^ a b 森、柏原『正統四カリフ伝』下巻、28頁
  6. ^ a b 小杉『イスラーム帝国のジハード』、136頁
  7. ^ イスハーク『預言者ムハンマド伝』3、129頁
  8. ^ 森、柏原『正統四カリフ伝』下巻、28-29頁
  9. ^ イスハーク『預言者ムハンマド伝』3、130頁
  10. ^ 森、柏原『正統四カリフ伝』下巻、30-31頁
  11. ^ 森、柏原『正統四カリフ伝』下巻、31-32頁
  12. ^ イスハーク『預言者ムハンマド伝』3、130-131頁
  13. ^ 森、柏原『正統四カリフ伝』下巻、32頁
  14. ^ 森、柏原『正統四カリフ伝』下巻、32-33頁
  15. ^ a b 佐藤『イスラーム世界の興隆』、63頁
  16. ^ a b c d 高野「フダイビーヤ」『岩波イスラーム辞典』、848頁
  17. ^ a b c d イスハーク『預言者ムハンマド伝』3、134頁
  18. ^ a b c 森、柏原『正統四カリフ伝』下巻、33頁
  19. ^ a b c 小杉『イスラーム帝国のジハード』、137頁
  20. ^ デルカンブル『ムハンマドの生涯』、92頁
  21. ^ イスハーク『預言者ムハンマド伝』3、135頁
  22. ^ イスハーク『預言者ムハンマド伝』3、138頁
  23. ^ 森、柏原『正統四カリフ伝』下巻、33-34頁
  24. ^ 小杉『イスラーム帝国のジハード』、138頁
  25. ^ a b c イスハーク『預言者ムハンマド伝』3、143頁
  26. ^ a b 森、柏原『正統四カリフ伝』下巻、34頁
  27. ^ 森、柏原『正統四カリフ伝』下巻、36-37頁
  28. ^ 小杉『イスラーム帝国のジハード』、139頁
  29. ^ デルカンブル『ムハンマドの生涯』、94頁
  30. ^ 小杉『イスラーム帝国のジハード』、139-140頁






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