フィニアス・ゲージ ゲージの事故

フィニアス・ゲージ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/21 14:35 UTC 版)

ゲージの事故

1848年9月13日、25歳のゲージは、作業員の職長として、バーモント州の町カヴェンディッシュ (en)の外れで、ラットランド・アンド・バーリントン鉄道 (en)の路盤を建設するための発破を行う任務にあたっていた。爆薬を仕掛けるために、岩に深く穴を掘り、火薬・ヒューズ(導火線あるいは信管(fuse))・を入れて、の突き棒で突き固める作業があった。[5]ゲージはこの仕事を午後4時半ごろ行なっていたが、(おそらく砂が入れられていなかったため)突き棒が岩にぶつかって火花を発し、

火薬が爆発して、彼がそのとき扱っていた直径1と4分の1インチ、長さは3フィートと7インチの道具が彼の頭部を貫いた。鉄の棒は彼の顔の横から入り、左目の後ろを通り抜け、頭頂から抜け出した。[脚注 3]

ゲージの事故を「アメリカの鉄梃事件」とした19世紀当時の文献は内容を明確にする必要がある。ゲージの突き棒には鉄梃(バール)につきものの湾曲部や鉤がなく、むしろただの円柱状であり、「円くて、使用によってわりと滑らかになっていた[6]」。

先に突き刺さった側の端は尖っていて、12インチにわたり先が細くなっていた。この形状のため被害者は命を永らえたのだと思われる。この鉄の棒は他では見られないものであり、持ち主の好みを満たすように近傍の鍛冶屋で作られたものである。[脚注 4]

重量が6kgあったこの”突然図々しくすっ飛んできた客”[脚注 5]は、血液と脳にまみれて25mほど先に落ちたと言われている。

驚くべきことに、ゲージは数分もたたないうちに口を利き、ほとんど人の手も借りずに歩き、街にある自宅への1.2kmを荷車に乗っているあいだ背筋を起こしたまま座っていた。最初に彼のところへ到着した医師はエドワード・H.ウィリアムズ博士であった。

私は馬車から降りるより先に頭の傷口に気がついた。脳の血管の拍動がはっきり見て取れた。ゲージ氏は、私がこの傷口を調べている間、周囲の人に自分が怪我を負った時の様子を語っていた。私はそのときゲージ氏の述べることを信じず、彼が騙されたのだと思った。ゲージ氏はその棒が頭を貫通したのだと言い張った。…ゲージ氏は立ち上がり嘔吐した。嘔吐しようと力んだため、ティーカップ半杯ほどの脳が押し出され、床にこぼれ落ちた[7]

ジョン・マーティン・ハーロウ医師 (en)が1時間ほど後にこの症例の担当となった。

こう評しても皆さんお許しくださるでしょうが、私の見せられた状態は、軍隊での外科処置に慣れていない者が見たら、まさにおぞましいと言えるものでした。しかし患者は、最も英雄的な断固さをもってその苦痛に耐えていました。彼は私が誰だかすぐ認識し、怪我があまりひどくないと良いがと言いました。彼の意識は完全に清明であるようでしたが、出血のため体力を消耗していました。脈拍は60で整。彼の身体も、横になっていたベッドも、文字通り一塊の血糊となっていました[8]

ハーロウの熟達した診療にもかかわらず、ゲージの回復には時間がかかり困難を伴った。脳圧が高かったため[脚注 6]ゲージは9月23日から10月3日までなかば昏睡状態にあり、「話しかけられない限りほとんど口を利かず、返事も1シラブルのみである。友人や看護の者は彼が数時間のうちに亡くなるであろうと予想しており、棺と死装束を準備している。」[9]

しかし、10月7日にはゲージは「起き上がることに成功し、一歩歩いて椅子にたどり着いた」。一か月後には彼は「階段の上り下りができ、家の周りを歩いたり、ベランダに出たりすることができた」。そしてハーロウが一週間留守にしている間ゲージは「日曜以外は毎日通りに出ていた」。彼の希望は、ニューハンプシャーの家族のもとへ帰って「友人らに煩わされずにすむこと…足を濡らして寒気がした」。彼はすぐに熱を出したが、11月半ばまでには「あらゆる点で以前より良好。…再び家の周りを歩いている。頭は全く痛くないとのこと。」この時点でのハーロウの予見は以下のようであった。「ゲージは回復の方向に向かっているようである、ただし制御できるならばだが。」[10]







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