ピエタ (ミケランジェロ) パレストリーナのピエタ

ピエタ (ミケランジェロ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/12 18:56 UTC 版)

パレストリーナのピエタ

『パレストリーナのピエタ』。

概要

この作品がフィレンツェのアカデミア美術館へ収蔵されるようになったのは1939年のことであり、それまでの数世紀のあいだはパレストリーナのサンタ・ロザリア聖堂内に放置されたままとなっていたため『パレストリーナのピエタ』と呼ばれる。1756年にパレストリーナの歴史学者チェコーニがこの作品を「ブオナローティの未完成作品」と著書に記していることや、この作品のためのデッサン(これらが描かれたのが1550年代半ばであるため、本作の制作時期も同じ頃と推定されている)がブオナローティ資料館に残されていることなどから真作とみなしうるが、長らく存在が知られないまま放置されていたことなどから贋作であることを疑う学者も多い。

構成

他のピエタと異なり、なかば浮き彫りのような形で表現されているのが大きな特色である。『フィレンツェのピエタ』において構成を乱していたマグダラのマリアに該当する4番目の人物を取り除き、統一感を取り戻している。ニコデモがいた位置には再び聖母マリアが、聖母マリアがいた位置にはマグダラのマリアが据えられた。

解釈

聖母の手は力強くイエスの遺骸を支えるために太く表現されており、もはや『サン・ピエトロのピエタ』に見られた古典的な優美さはない。本作とほぼ同時期に構想を抱いた次作『ロンダニーニのピエタ』と同様、典型的なルネサンス様式からの離脱は明らかである。

ロンダニーニのピエタ

『ロンダニーニのピエタ』。

概要

ミケランジェロの第4のピエタ、彼が生前最後に手がけたこの大理石彫刻は、1952年ミラノスフォルツァ城博物館に収蔵されるまでローマのロンダニーニ邸の中庭に置かれていたことから、『ロンダニーニのピエタ』と呼ばれる。

『ロンダニーニのピエタ』に最初に取り組み始めたのは、『フィレンツェのピエタ』とほぼ同時期であったらしいが、ミケランジェロは一度作業を中断して晩年(1559年頃)に至ってから再開し、晩年の素描や自分の墓に飾るつもりであった『フィレンツェのピエタ』と同様、みずからの死の予感や宗教的霊感を強く抱きながら制作に取り組んだ。腰が曲って頭を上げることすらままならず、さらには視力を失いながらも手探りで鑿を振るい、病に倒れる前日まで制作を続けたと伝えられている。

構成

本作において、ミケランジェロは再び「死せるイエスを抱く聖母マリア」という最初のピエタの構想に回帰する。左側に立っている棒状のものは、最初の構想にあったイエスの右腕がそのまま残されたものである。つまり作業が中断された時点ではイエスはもっと前屈みになっており、これからマリアを彫り出すための大理石の塊を背負うような形になっていた。作業の再開にあたってミケランジェロはイエスの前半身を打ち砕き、後ろの塊から改めてイエスを彫り出していったのである。

解釈

幽霊のようでみすぼらしくさえあるマリアとイエスは、ミケランジェロの初期のスタイルに代表されるような理想的な像からはかけ離れており、ルネサンス彫刻というよりはゴシック彫刻のやせ細った像との類似がしばしば指摘されている。

この像を後ろから見ると、マリアがイエスを抱いているというよりも、イエスがマリアを背負っているかのように見える。これはイエスを亡くして悲しむマリアをイエスの霊が慰めている様を表現するために、両義的な解釈が可能となるようミケランジェロが意図したのだといわれている。


  1. ^ 片桐史恵「ミケランジェロの死生観に関する一考察 : 作品「ピエタ」を中心に」『中部学院大学・中部学院大学短期大学部研究紀要』第9号、2008年3月、35-41頁、NAID 400162303682020年4月14日閲覧 
  2. ^ 「聖母に何の恨みが 「俺はキリスト」と犯人」『朝日新聞』昭和47年5月22日夕刊、3版、9面





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