ビルボード 集計方法

ビルボード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/18 06:18 UTC 版)

集計方法

ビルボード総合チャートHot 100はセールス(フィジカル・ダウンロードの売上を合算)、ストリーミング(サブスクリプション・ソーシャルメディアの再生回数を合算)、エアプレイ(ラジオの放送回数)のデータを基に順位が決定される(2022年現在)。なお、フィジカルはCD・レコード・カセットテープ、ソーシャルメディアはYouTubeFacebookが集計対象である。

集計期間はセールスとストリーミングが金曜から木曜、エアプレイが月曜から日曜となっており、火曜日にチャートが発表される。

日本でアメリカンTop40がアメリカの総合シングルチャートのごとく紹介された影響からか、ラジオフォーマットの一つであるCHR/Top40(ポップ)チャートを総合チャートと勘違いし、それ以外のフォーマットも全て合計するビルボードのエアプレイチャートおよび総合チャートであるHot 100と乖離しているとする声も一部あるが、ラジオ局はフォーマットによってかける曲が異なり、オーディエンスも異なるアメリカでは結果的に総合チャートであるHot 100が「ポップ」チャートでないということは有り得ることである。そのためPop 100というチャートも2005年2月から開始されている。このチャートではグリーン・デイの「Boulevard Of Broken Dreams」は3週連続で1位、ワンリパブリックの「Apologize」は計8週(4週連続2回)1位となっているが、両楽曲はHot 100では2位止まりである。

集計方法の変更に伴うチャートへの影響

長い歴史の中で、チャート集計方法は何度か変更されているが、特に1991年末にそれまでのエアプレイ重視(エアプレイ75%:セールス25%)から、セールスにより比重をおくようにした(エアプレイ60%:セールス40%)[要出典]。この大改変以降、HOT100チャートにおいて急激にヒップホップR&Bといったブラックミュージック系が上位を占める割合が大きくなった。これはアルバム志向が強い白人層に対し黒人はシングル志向が強く、シングルセールスチャートの上位はブラックミュージックが占めていたことによる。

この改変以後、シングルセールスよりもエアプレイが主体であるロック系の楽曲が上位(特に1位)を獲得することは極めて難しいものとなった。一方でセールス主体のヒップホップR&Bなどブラックミュージック系の曲が数ヶ月にわたって1位を取り続けることが恒常化していった。この改変以前は10週連続1位を獲得することは稀で、1970年代のデビー・ブーン(「恋するデビー」)や80年代のオリビア・ニュートン=ジョン(「フィジカル」)など数える程度でしかなかったのが、1992年以降はボーイズIIメンの「End Of The Road」が13週連続で1位になったのを皮切りに、ホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」の14週、ボーイズIIメンとマライア・キャリーによる「One Sweet Day」の16週、他にもAll-4-One「I Swear」やブランディ&モニカ「The Boy Is Mine」、パフ・ダディ「I'll Be Missing You」などブラック系を中心に10週以上の1位を獲得する曲が続発した。また、ブラック以外でもロス・デル・リオの「恋のマカレナ」が14週1位、エルトン・ジョンの「Candle In The Wind 1997」も14週間1位、サンタナの「SMOOTH」も13週間1位を獲得している。

「End Of The Road」や「I Will Always Love You」は『HOT100 Airplay』でも10週以上の1位を記録しており、セールスの力だけで1位になったわけではない。例えばHOT100の1位連続記録を樹立した「One Sweet Day」にしても空前の売上を記録したわけではなく(およそ230万枚)、R&Bチャートでも1位になっていない(最高2位)。これは『HOT100 Airplay』の主要構成要素であったPOPやAC(Adult Contemporary)、Rhythmic(Rhythm Crossover)といった各フォーマットで連鎖的にヒットしていったことが長期に亘る大ヒットに繋がったことを示している。また、この時期にリアル・マッコイの「Another Night」や、クリスタル・ウォーターズの「100% Pure Love」といったダンスチューンが45週を超える長期ランクインを果たしたのもほぼ同様の理由である。

また、セールスにこだわるあまり、一時期シングルカットしない人気曲がHOT100にまったく反映されないことも問題視されるようになった。エアプレイでかなりの人気を誇ったノー・ダウト「Don't Speak」、カーディガンズ「Lovefool」、ナタリー・インブルーリア「Torn」を筆頭に、パール・ジャムグリーン・デイを始めとする楽曲はラジオ&レコーズのチャートやHOT100の構成要素となる「HOT100 AIRPLAY」では上位に食い込んでいたものの、当時のHOT100はシングルカットしていない曲はジャンルを問わずランキングの対象としなかったため、当然これらの曲がHOT100上位にランクインすることはなかった。

ビルボードの知名度を世界的なものに押し上げた人気ラジオ番組「American Top 40」もこのような流れの中で、HOT100がセールス重視を打ち出したのとほぼ時を同じくしてHOT100をチャートソースから外し、エアプレイ主体のランキングに切り替えたものの、その後は同じくエアプレイ主体である「ラジオ&レコーズ」をチャートソースとする「Rick Dees Weekly Top40」や「Casey's TOP40」に人気を奪われる形となり、1995年にいったん番組が打ち切られてしまう。1998年に復活した「American Top 40」もビルボードではなく、ラジオ&レコーズのCHR/Pop Chartをチャートソースに使うようになってしまった。また、1998年にはグー・グー・ドールズの「Iris」が、8月1日付けのチャートから12月5日付けまでの間、10月3日付けのエアロスミスの「I Don't Want to Miss a Thing」を除いて約4ヶ月に渡り、HOT100 AIRPLAY史上最長となる18週1位を記録したのだが、発売されていないということを理由にランキングに載せられていないという事態が発生。このような状況の中、ビルボードは1998年12月5日付で、エアプレイとセールスの比率を3:1に再変更した。この初のチャートで「Iris」は9位にランクインした。

この再変更ではR&Bやカントリーなど各ジャンルからのチャートを集計した総合チャートとしての色彩を強め、これまで認めてこなかったエアプレイのみでの発表曲もチャートインさせることにした。しかし、例えばR&Bやヒップホップの曲はメインストリーム(ポップ)局だけでなくR&BやRhythmic、Urbanなどの各フォーマットでクロスオーヴァーヒットするため合計ポイント数が自ずと高くなるが、それに対しカントリーはほぼカントリー局、ロックはロック系フォーマットやポップ系フォーマットでのみ集計されるためもともとオーディエンスが少なく、ジャンルによって強弱が目立つ集計となり(Top40/ポップ系のオーディエンスがオーディエンス全体の中で実際はあまり多くないため[要出典])、結局その後もオーディエンスの多いヒップホップ系やR&B系の曲ばかりが上位に上がり、長期間1位に滞在し続けるというポップ・ロックファンから見れば偏った「総合チャート」が毎週発表され続けることになる。遂にニッケルバックの2001年のシングル「How You Remind Me」を最後にその後6年近くもロック系アーティストによる楽曲が1位に到達することはなくなってしまう[4]

また、2000年代に入るとアメリカン・アイドルで注目された新人がシングルCDを出すと突発的に1位になるものの、すぐに順位が低落してしまう(Fantasia「I Believe」のように週間で1位を獲得したにもかかわらず年間チャートで100位にも入れない楽曲も現れた)というこれまでではあまり見かけなかったチャート上の欠陥も目立つようになった。これは、この時期アメリカではシングル市場が崩壊していたために、他にCDのセールスポイントを稼いでいる曲が無かったためである。[要出典]

2005年2月になってダウンロードセールスを新たにカウントするようになり、ダウンロード1000件をエアプレイオーディエンス100万人と同ポイントに計算するルールになったと思われる。ダウンロードはCDやレコードに比べるとクリック1つで気軽に購入でき、売れ筋の曲がすぐにチャートに反映されるため、様々なジャンルがチャートを賑わすようになった。

2007年5月にはロックバンドであるマルーン5の楽曲「Makes Me Wonder」がこのダウンロードセールスが効き3週1位となった。ポップバンド扱いされることもあるが、ロックバンドによる1位獲得はニッケルバック以来のことであった[5]。このようにダウンロード件数重視により、ポップ・ロックソングに対する門戸が広まったといえる。しかし、同時にダウンロード件数増加によりそのポイントが強力になりすぎて、ダウンロードが解禁されたとたん大幅にジャンプアップするという現象が発生するようになった。この「Makes Me Wonder」は当時史上最高となる64位からのジャンプアップだった。このように、現在の集計方法においては上位はほぼエアプレイを無視したチャートになっており、集計方法に対する試行錯誤は当分続くことになると思われる。


  1. ^ Billboard 19 Dec 1970
  2. ^ 米ビルボード、世界200以上の地域のストリーミングとダウンロードに基づいたグローバル・チャート発足、Biiboard JAPAN、2020年9月15日。
  3. ^ 米ビルボードの新グローバル・チャートにおける地域ごとの割合を分析 J-POPは何曲チャート・イン?、Biiboard JAPAN、2020年9月17日。
  4. ^ 【ビルボード最新ニュース】Ne-Yoのシングル、アルバムの効果でチャート上昇! 株式会社まぐまぐ 2007年5月12日配信
  5. ^ 【ビルボード最新ニュース】Chris Brownが9月にニューアルバム『Exclusive』をリリース!先行シングルは「Wall To Wall」に決定! 株式会社まぐまぐ 2007年5月19日配信
  6. ^ TALKへ行きたい 第70回(1/3) 作家・音楽プロデューサー・NPO法人ミュージックソムリエ協会 会長佐藤 剛さん、CDV-NET、2016.10。
  7. ^ 阪神、ビルボードと提携 ライブハウスを来夏開業”. 共同通信 (2006年9月14日). 2013年11月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月15日閲覧。
  8. ^ 日本版ビルボードチャート始まる オンエア数も加味”. 朝日新聞社. 2008年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月15日閲覧。
  9. ^ “大好きなアーティストを1位に ストリーミング回数を操作する熱狂的ファンたち”. BuzzFeed. (2018年10月28日). https://www.buzzfeed.com/jp/blakemontgomery/spotify-billboard-charts-1 2018年11月11日閲覧。 
  10. ^ “防弾少年団(BTS)全米1位獲得は“チャート不正操作”だった? 空前の快挙があぶり出した「K-POPの闇」”. excite.ニュース. (2018年9月30日). https://www.excite.co.jp/news/article/Cyzo_201809_post_177167/ 2018年11月11日閲覧。 
  11. ^ “Fans Are Spoofing Spotify With "Fake Plays," And That's A Problem For Music Charts” (英語). BuzzFeed News. (2018年9月13日). https://www.buzzfeednews.com/article/blakemontgomery/spotify-billboard-charts 2018年11月11日閲覧。 
  12. ^ “クリス・ウー、ソロ・デビューAL収録曲が米iTunesチャート上位を独占するもニールセンが調査中”. billboard JAPAN. (2018年11月9日). https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/69671/2 2018年11月11日閲覧。 
  13. ^ Kris Wu’s Album ‘Antares’ Debuts at No. 100 on Billboard Chart Amid Sales Controversy” (英語). Variety (2018年11月14日). 2018年11月14日閲覧。
  14. ^ “KRIS(元EXO)に米iTunesチャートの順位操作疑惑…不正行為と見なされビルボード順位から除外”. WoW!Korea. (2018年11月8日). http://www.wowkorea.jp/news/enter/2018/1108/10223693.html 2018年11月11日閲覧。 
  15. ^ “アリアナ&ジャスティン、全米No.1デビュー獲得を感謝/チャート不正をきっぱり否定”. billboard JAPAN. (2020年5月19日). https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/88148/2 2020年9月2日閲覧。 
  16. ^ “Ariana Grande, Justin Bieber respond to Tekashi 6ix9ine's claim they stole top chart spot” (英語). NBCNews. (2020年5月19日). https://www.nbcnews.com/pop-culture/celebrity/ariana-grande-justin-bieber-respond-tekashi-6ix9ine-saying-they-stole-n1209866 2020年9月2日閲覧。 
  17. ^ “韓国大手配信サービス Melon、リアルタイムチャート廃止 ファンによる過剰な“スミン”行為の影響を解説”. Real Sound. (2020年7月14日). https://realsound.jp/2020/07/post-584770.html 2020年9月2日閲覧。 
  18. ^ 「音源総攻撃」Kポップの危険な影”. 東亜日報 (2020年8月31日). 2020年9月2日閲覧。






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