ヒトパピローマウイルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/10 07:33 UTC 版)
感染方法
HPVは接触感染で皮膚や粘膜の微小な傷から侵入し、扁平上皮基底部の細胞に感染する。感染HPV は血中に侵入しないのでウイルス血症を起こさない。従って血液感染はない。また感染した細胞を破壊せずウイルス粒子を大量に放出させることもない。このため抗原提示細胞の活性化や抗原認識の過程が回避され、免疫が誘導されにくい[10]。
HPV 感染の70%が1年以内に消失し、約90%が2年以内に消失する。しかし上記のメカニズムによって、一生涯有効な免疫記憶が形成されないため、自然感染後の抗体産生が十分でなく、同じHPV型への感染が何度も起こると考えられている[11]。通常は様々な免疫が応答し体内から排除される[1]。
生殖器へのHPVの感染は、母が感染した乳児の約73%が感染していた[2]。出生時に、HPVの6型、11型、16型、18型はそれぞれ6.4%の乳児が感染しており、生殖器よりも口腔での感染率が2倍であり、感染していた乳児6か月時点で16型は約83%、18型は約20%から検出された[3]。
日本の子供の口腔へのHPVの感染では、3歳の小児では最も多いのは2型、5歳では16型でありこれは35.5%の子供から検出された[4]。別の研究では、成人では16型の口腔からの検出率は1.3%であった[12]。
検査
皮膚上皮に発生する疣贅の組織中にウイルス粒子の局在を免疫組織学的に証明するために、市販の抗パピローマウイルス抗体(DAKO PATTS社 B-580)がHPVの第1次スクリーニングに多用される時期があった[13]。この抗体は、ウシ乳頭腫ウイルス粒子を界面活性剤で処理し、家兎で免疫し作成した抗体で、全てのタイプのHPVのみならずヒト以外の動物のパピローマウイルスとも反応し、容易に入手であった。2016年ガイドラインでは、in situ hybridizationで病変部細胞からのHPV-DNAの証明、PCR法またはLAMP法によるHPV遺伝子型を決定する、としている[5]。
臨床像
一般に上皮に対する親和性が強く、それぞれ種類によって生じてくる疾患は異なっている。
- 尖圭コンジローマ:粘膜型低リスク型であるHPV6または11型が約90%を占め、発癌性と関係する高リスク型のHPV16、18型などが混合感染していることもある[5]。HPV16、52、58、18型などに感染した女性の場合、子宮頸部に感染し、子宮頸癌の発癌要因になることもあると考えられている[5]。外生殖器に鶏冠状の乳頭腫を形成する。
- 子宮頸癌:子宮頸癌の90%以上、前癌病変である異形成の95%以上から、正常婦人の外陰からも5-10%、高リスク型HPVが検出される[5]。
- 疣贅:皮膚に出来るイボ。ウイルスの種類により形状・発生場所が異なる。詳しくは内部リンク参照のこと。
- 咽頭乳頭腫:HPVが尖圭コンジローマを有する母親から乳児へ経産道感染することにより、咽頭に形成される良性腫瘍。声門部が好発であり、気道まで進展し稀に狭窄をきたすおそれがあるため、周産期の管理が必要となる。
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- ^ a b クリニチップHPV pmda
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- ^ 子宮頸がんと検診 子宮頸がん検診における細胞診とHPV検査併用の有用性に関する研究班HP
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- ^ 今野良「Chapter1 HPV感染と子宮頸癌」『知っておきたい子宮頸がん診療ハンドブック』(pdf)中外医学社、2012年、1-5頁。ISBN 978-4-498-06062-3 。
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- ^ 『ウイルスの臨床検査』《臨床検査MOOK No.28》p.243. 金原出版、1988年、ISBN 978-4307643283。
- ^ ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種への公費助成に関する要望書 (PDF) 日本産科婦人科学会、2010年
- ^ Ault, Kevin A. (2007). “Effect of prophylactic human papillomavirus L1 virus-like-particle vaccine on risk of cervical intraepithelial neoplasia grade 2, grade 3, and adenocarcinoma in situ: a combined analysis of four randomised clinical trials”. The Lancet 369 (9576): 1861-1868. doi:10.1016/S0140-6736(07)60852-6. PMID 17544766.
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- ^ a b HanleySharon、今野良「HPVワクチン-40歳代女性を含むCatch-up vaccination」『産科と婦人科』第77巻第9号、2010年9月、1016-1022頁、NAID 40017265898。
- ^ “HPV“治療”ワクチンを米社が開発、第I相臨床試験結果発表”. Medical Tribune (2012年10月16日). 2014年9月2日閲覧。
- ^ “ヒトパピローマウイルス感染症(子宮頸がん予防ワクチン)”. 厚生労働省. 2014年9月2日閲覧。
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