パルボウイルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/26 06:25 UTC 版)
パルボウイルスB19
パルボウイルスB19はヒトパルボウイルスのことである。人間にのみ感染するパルボウイルスである。骨髄中の赤血球先駆細胞に侵入する能力がある。1974年にシドニー大学のイヴォン・コサート教授によって発見された(発表は翌1975年の1月)[1]。B19番というラベルのついた血清の培養皿から発見されたのでこのように命名された[2]。
1983年にはじめて、いわゆる第5病(伝染性紅斑、りんご病)と呼ばれる疾患の原因ウイルスとして知られるようになり、現在では慢性骨髄不全や胎児死産、胎児水腫など様々な疾患の原因として知られている。
遺伝性球状赤血球症はパルボウイルスB19に感染すると貧血が急速に悪化する[3]。
感染(パルボウイルスB19)
飛沫感染と母子感染の2つの経路がある。また、最近では血漿分画製剤中に検出されたという報告もあり、血漿分画製剤の妊婦や免疫不全患者への使用にあたっては感染のリスクに対して充分な注意を払う必要がある。年間を通じて感染するが特に春季に流行する。日本においてはおよそ5年周期で症例数が増加するという傾向がある。年齢にかかわらず感染するが、特に6歳から10歳くらいの子供において発症しやすく、集団感染は主に幼稚園や小学校で発生する。
感染後約1週間で発症し、多くの場合は自然に回復する。B19 IgG抗体を持つ人は基本的に免疫を持ち、感染しても発症しないと考えられているが、まれに発症する例もある。なお、成人の約50%が抗体を持つと言われている。
症状(パルボウイルスB19)
子供と成人では症状の様態がやや異なる。
通常は7 - 10日の潜伏期間の後、軽度のウイルス血症を発症し、それにともない発熱や悪寒、頭痛、倦怠感などの症状が現れる。発症後1週間くらいすると、子供では両頬に平手打ち状または蝶翼状の赤い発疹が現れる。また四肢外側にも発疹が現れ、成人においては発疹の形状はやや非定型的である。この発疹は1週間程度で消失するが、長引いたり再発したりすることもある。発疹が現れる頃にはウイルス感染はほぼ終息しており、ウイルスの排泄もなくなる。
成人の場合、関節炎を発症することもある。ほとんどの場合、この関節炎は合併症を起こすことなく自然回復する。軽い症状の成人においては自覚症状なしに過ぎる。
ごくまれに重度の貧血発作 aplastic crisis を起こすことがある。また免疫抑制状態の患者においてはウイルス血症が長引き、貧血症になる危険もある。
妊婦、特に妊娠初期の感染は胎児水腫を引き起こして胎児を死亡させたり、流産したりする危険がある。ただしB19ウイルスに感染した母体から正常に生まれた新生児にB19の感染が確認された例でも、その後新生児が正常に発育している例もあり、必ずしも感染により先天異常が起こるとは限らない。また母子感染の時期もはっきりしていない。
原因不明の脳炎の鑑別にヒトパルボウイルスB19を含めるべきであるという意見もあるが[4]健常者でも脳脊髄液からヒトパルボウイルスB19のDNAは検出されるため診断は難しい[5]。
予防(パルボウイルスB19)
humanパルボウイルスB19に対するワクチンは現時点では存在しない。
- ^ Cossart, Y. E., A. M. Field, B. Cant, and I). Widdows.1975. Parvovirus-like particles in human sera. Lancet 1:72-73.
- ^ Heegaard ED, Brown KE (2002). “Human parvovirus B19”. Clin. Microbiol. Rev. 15 (3): 485–505. doi:10.1128/CMR.15.3.485-505.2002. PMC 118081. PMID 12097253 .
- ^ イヤーノート 2015: 内科・外科編 メディック・メディア G32 ISBN 978-4896325102
- ^ Rev Med Virol. 2014 May;24(3):154-68. PMID 24459081
- ^ Clin Microbiol Rev. 2002 Jul;15(3):485-505. PMID 12097253
- 1 パルボウイルスとは
- 2 パルボウイルスの概要
- 3 パルボウイルスB19
- 4 関連項目
固有名詞の分類
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