バングラデシュの法 バングラデシュの法の概要

バングラデシュの法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/05 22:46 UTC 版)

バングラデシュはコモン・ローの国であり、その法体系はイギリス領インドに対する植民地支配の際にイギリス人支配層が発展させたものである。現在バングラデシュを構成する領域は、イギリス保護下のムガル政権時代にベンガルとして知られ、早くから他の地名でも知られていた。ほぼ先史時代から、人類は宗教的及び政治的な知識と制度とを有していたが、ムガル帝国が初めてこれらを国家機構を通じて認識し確立することを試みた。1726年憲章は、ジョージ1世王に裁可され、東インド会社がマドラス、ボンベイ及びカルカッタに市長裁判所を設立することを許可し、イギリス領インドで最初に法典化された法と考えられている。当時のベンガルはイギリス領インドの一部であったから、同憲章はベンガルにとっても最初に法典化された法であった。1971年の独立以降、バングラデシュ国会が制定する成文法が第一の立法形式となった。判例法は、憲法などの分野で今なお重要である。他のコモン・ローの国とは異なり、バングラデシュ最高裁判所は議会の制定した法律を解釈するのみならず、議会制定法の無効を宣言し、市民の基本権を直接適用する権限も有する。[1] バングラデシュ法典に1836年以来の法律が全て納められている。バングラデシュの法律の大部分は英語で書かれているが、1987年以降に採択された法律のほとんどはベンガル語で書かれている。家族法宗教法と密接に関連している。バングラデシュは主要な国際法上の義務を負担している。

1970年代及び1980年代に戒厳令が布かれていた間、布告及び政令が法律として公布されていた。最高裁判所が2010年に戒厳令が違法であると宣言したことから、国会は一部の法律を再制定した。情報公開法は既に制定されている。バングラデシュの法律の中には、論争を呼んでいるもの、時代遅れのもの、自国の憲法に違反するものがある。例えば、同国の1974年特別権限法(有害行為の予防、重大犯罪に対する迅速な裁判及び効果的な処罰並びにこれらに関連する諸問題に対する特別措置を定める法律)、冒涜法、治安妨害法、インターネット規制法、非政府組織法、報道規制法、軍法及びその財産法的側面に関する法律などである。植民地時代の法律の多くは現代化が必要である。

世界司法計画 World Justice Project によれば、バングラデシュは2019年の法の支配指数で126か国・地域中112位であった。[2]

バングラデシュにおける基本権

バングラデシュ憲法の第III部は、基本権条項を含む。[3]

  1. 基本権と矛盾する法律の無効(第26条)
  2. 法の下の平等 (第27条)
  3. 宗教を理由とする差別等 (第28条)
  4. 公の雇用における機会の平等(第29条)
  5. 外国の称号の禁止等(第30条)
  6. 法による保護を受ける権利(第31条)
  7. 生命及び人身の自由の保護(第32条)
  8. 逮捕及び拘禁に対する防御(第33条)
  9. 強制労働の禁止(第34条)
  10. 裁判及び刑罰に関する保護(第35条)
  11. 居住移転の自由(第36条)
  12. 集会の自由(第37条)
  13. 結社の自由(第38条)
  14. 思想・良心の自由言論の自由(第39条)
  15. 職業選択の自由(第40条)
  16. 信教の自由(第41条)
  17. 財産権(第42条)
  18. 家庭及び通信の保護(第43条)
  19. 基本権の直接適用(第44条)
  20. 懲戒法に関する権利の修正(第45条)
  21. 損失補償を提供する権限(第46条)
  22. 法律の適用除外(第47条)
  23. 条項の適用除外(第47A条)

判例法

バングラデシュ憲法第111条は、判例を尊重している。[4]

バングラデシュの裁判所が憲法の周辺領域で提供した重要な判例として、Bangladeshi Italian Marble Works 株式会社対バングラデシュ政府事件がある。この判例は、 戒厳令を違法と宣言したものである。財務省長官対 Masdar Hossain 事件判決は、権力分立及び司法の独立を力説した。

Aruna Sen 対バングラデシュ政府事件において、最高裁判所は、違法な拘禁及び拷問に対する先例を設定した。裁判所は、Abdul Latif Mirza 対バングラデシュ政府事件の判決において、自然的正義の原理を肯定した。これらの判断は、1974年特別権限法に基づく拘禁のほとんどを無効なものとする先例であった。

バングラデシュの法における正当な期待 legitimate expectation の法理は、判例を通じて発展した。


  1. ^ A Research Guide to the Legal System of the People's Republic of Bangladesh - GlobaLex”. Nyulawglobal.org. 2019年12月11日閲覧。
  2. ^ World Justice Project Rule of Law Index 2019 Insights”. World Justice Project. 2019年12月12日閲覧。
  3. ^ THE CONSTITUTION OF THE PEOPLE’S REPUBLIC OF BANGLADESH”. バングラデシュ中央政府法務・司法・国会事務省立法・国会事務局 Legislative and Parliamentary Affairs Division, Ministry of Law, Justice and Parliamentary Affairs. 2019年12月12日閲覧。
  4. ^ バングラデシュ憲法第111条”. バングラデシュ中央政府法務・司法・国会事務省立法・国会事務局. 2019年12月12日閲覧。
  5. ^ People's right to information”. The Daily Star. 2017年7月11日閲覧。
  6. ^ Penal Laws - Banglapedia”. En.banglapedia.org (2015年2月16日). 2017年7月11日閲覧。
  7. ^ Correspondent, Parliament. “New anti-terror law passed”. bdnews24.com. 2019年12月14日閲覧。
  8. ^ Company Law - Banglapedia”. En.banglapedia.org (2014年9月9日). 2019年12月14日閲覧。
  9. ^ EASE OF DOING BUSINESS IN Bangladesh”. 世界銀行グループ. 2019年12月13日閲覧。
  10. ^ Personal laws in Bangladesh: require enactment and amendment”. Observerbd.com (2015年7月9日). 2019年12月13日閲覧。
  11. ^ Christian Marriage Act, 1872 (Act No. XV of 1872)”. バングラデシュ中央政府法務・司法・国会事務省立法・国会事務局. 2019年12月13日閲覧。
  12. ^ http://nbr.gov.bd/uploads/acts/7.pdf
  13. ^ Income-tax Ordinance, 1984 (Ordinance No. XXXVI of 1984)”. Bdlaws.minlaw.gov.bd. 2019年12月13日閲覧。
  14. ^ http://nbr.gov.bd/uploads/acts/18.pdf
  15. ^ Municipal Taxation Act, 1881 (Act No. XI of 1881)”. バングラデシュ中央政府法務・司法・国会事務省立法・国会事務局. 2019年12月13日閲覧。
  16. ^ Asif Showkat Kallol (2017年4月24日). “Govt to now allow trade unions in EPZ factories”. Dhaka Tribune. 2017年7月11日閲覧。
  17. ^ ECONOMIC POLICY PAPER ON Copyright, Trademark and Patent Protection”. ダッカ商工会議所. 2019年12月14日閲覧。
  18. ^ Bangladesh: IP Laws and Treaties”. Wipo.int. 2017年7月11日閲覧。
  19. ^ Islam, Monirul. (2019), TOPIC ON CASE COMMENT: ANWAR HOSSAIN CHOWDHURY VS. BANGLADESH, 1989 B.L.D. (SPL) 1, 41 D.L.R. (AD) 165 (1989), Journal of Legal Studies and Research, Volume 5 Issue 5, 2019, pp.133-140.


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