ハンガーフォード橋とゴールデン・ジュビリー橋 新しい歩道橋

ハンガーフォード橋とゴールデン・ジュビリー橋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/26 17:19 UTC 版)

新しい歩道橋

新しい歩道橋の設計には、建築家事務所リフシャツ・デイヴィッドソン・サンディランズ英語版と建築会社WSPグループ英語版の案が採用された[8][11]。2本の橋の詳細な設計は、コンサルタント建築会社のギフォード英語版(現:ランボルUK[注釈 3])が担当した。

橋の建設は、鉄道運行を止める事無く行う必要があり、困難を極めた。ベーカールー線のトンネルは川底からわずか数フィートの場所を通っており、テムズ川に残る第二次世界大戦時の不発弾が爆発するリスクもあったのである[8][11]。これに対し川底の大規模調査が行われたが、ロンドン地下鉄はこのリスクを受け入れようとせず、予備作業は2000年に中断した[8]。また設計の見直しが行われ、北側で地下鉄線路の内側15mに入っていた支持構造は、川底からヴィクトリア堤防英語版の上へと移されることになった。地下鉄付近の掘削は営業時間外に行われ、基礎工事は増担保として手掘りで行われた。

ロンドン・アイから見たハンガーフォード橋とゴールデン・ジュビリー橋。後ろに見えるのはウォータールー橋

2本の新しい4m幅の歩道橋は2002年に完成した。橋は当初「ハンガーフォード歩道橋」(英: "Hungerford Footbridges")と名付けられる予定だったが、エリザベス2世の即位50周年に因んで「ゴールデン・ジュビリー橋」(英: Golden Jubilee Bridges)と命名された。

300mの長いデッキは、「押出し架設工法英語版」と呼ばれる当時としては革新的な方法で架けられ、300トンある250mの長いスチール製トラスを用い、50m1区画を川に向かって押し出す方法が取られた。この作業は各デッキが川に架かるまで5回繰り返され、スチール・コンクリート製の仮設橋脚6本がこれを支えた。また次の2週間には、25トンのパイロン英語版7基が据え付けられた。この導入後、デッキはパイロンから吊されるケーブルに繋げるためにジャッキアップされた。コンクリート製のデッキは、作業後に最終位置まで高さを下げて調整され、仮設の橋脚・支えは全て外された[11]

ハンガーフォード橋を渡る列車

橋は複雑な構造をしている。デッキは外側に傾いたパイロンによって2本ごと支えられている。デッキは「デッキ・ステイズ」(英: deck stays)と呼ばれる細いスチール軸のファンから吊され、「バック・ステイズ」(英: back stays)と呼ばれる別の軸で固定されている。デッキ・ステイズはデッキ毎に180あり、4km以上のケーブルが用いられている。パイロンの傾きがバック・ステイズを張力から守っている。デッキは鉄道橋の支柱を巻くように取り付けられたスチール製の当て板で守られている。当て板自体は鉄道橋の支柱で支えられているのではなく、橋の基礎にロープで固定された軸に固定されている。このため全体の構造としては、パイロンと多数の軸・支柱にかかる張力を用いて現在の位置に建っていることになる[11]

新しい橋は、ロイヤル・ファイン・アート・コミッション (enが主催するビルディング・オブ・ザ・イヤーで、2003年の専門家部門(英: the Specialist category)に輝いた。[13]。2004年にはインスティテューション・オブ・ストラクチュアル・エンジニアズ英語版賞の "Structural Achievement Award" にノミネートされ、ライティング・デザインにはシヴィック・トラスト賞英語版が与えられた[5]

2014年には、ガーデン橋英語版の建設計画が明らかにされた。この橋はウォータールー橋ブラックフライアーズ橋英語版間に架けられ、年間850万人が利用すると予測されており、ロンドンで最も通行量が多い歩道橋になる予定である[14]


注釈

  1. ^ 英: The Hungerford Suspension bridge
  2. ^ 収蔵:カルメン・ティッセン=ボルネミッサ英語版・コレクション、ティッセン=ボルネミッサ美術館マドリード[12]
  3. ^ 英: Ramboll UK

出典

  1. ^ a b c Sir Howard Roberts and Walter H. Godfrey (1951年). “Hungerford or Charing Cross Bridge”. University of London & History of Parliament Trust. British History Online. 2013年2月26日閲覧。
  2. ^ London SE1 Community website (2003年7月2日). “Princess opens gleaming Golden Jubilee Bridge”. Bankside Press. 2013年2月26日閲覧。
  3. ^ Waldman, Melanie (2010年12月8日). “Golden Jubilee Bridges”. BootsnAll Travel Network. 2013年2月26日閲覧。
  4. ^ 1845 Hungerford”. Bridgemeister. 2017年8月1日閲覧。
  5. ^ a b Hungerford Footbridges”. リフシャツ・デイヴィッドソン・サンディランズ英語版. 2017年8月2日閲覧。
  6. ^ a b Bevan, Frances (2012年6月7日). “Hungerford Bridge”. Status, Scandal and Subterfuge. Swindon Heritage. 2013年2月26日閲覧。
  7. ^ a b c Keeling, Gary. “Hungerford Bridge (1845)”. MyBrunel.co.uk. 2013年2月26日閲覧。
  8. ^ a b c d e f Gilbert, David (15 December 2010). “Banister Fletcher Lecture 2010: David Gilbert "A short history of London in wrought iron"”. London Society Journal (461). http://www.londonsocietyjournal.org.uk/461/davidgilbert.php 2013年2月26日閲覧。. 
  9. ^ Hungerford (Charing Cross) Railway Bridge & Golden Jubilee Footbridges”. Where Thames Smooth Waters Glide. 2017年8月2日閲覧。
  10. ^ “Bridge murder gang get life”. BBCニュース (BBC). (2000年5月19日). http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/755081.stm 2010年5月4日閲覧。 
  11. ^ a b c d e WSP英語版 Cantor Seinuk Gifford英語版 (2003年8月5日). “Golden Jubilee (Hungerford) footbridge”. Engineering Timelines. 2015年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月26日閲覧。
  12. ^ Charing Cross Bridge”. ティッセン=ボルネミッサ美術館. 2017年8月2日閲覧。
  13. ^ Golden Jubilee Footbridges”. Ramboll Environ. 2017年8月2日閲覧。
  14. ^ Garden Bridge Planning Application: Transport Assessment (Report). Garden Bridge Trust. (23 May 2014). pp. 62,63. ""High level annual pedestrian demand data was obtained for other local bridges across the River Thames. The data consisted of a mixture of existing TfL surveys and surveys commissioned specifically for the Garden Bridge."" 


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