ドラコレックス 分類

ドラコレックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/27 09:53 UTC 版)

分類

ドラコレックス、スティギモロクパキケファロサウルスの成長段階を示すダイアグラム

ドラコレックスは、実際には近縁なスティギモロクあるいはパキケファロサウルスの個体そのものである可能性がある。これらの属ほど頭部のドームが発達していないのは、ドラコレックスとされる個体が幼体ないし雌個体であったためと考えられている。この見解は2007年に古脊椎動物学会の年会で提唱された[8]モンタナ州立大学英語版ジャック・ホーナーは、唯一存在するドラコレックス標本の解析から、この幼体がスティギモロクの幼体の可能性がある証拠を提示した。さらに彼は、スティギモロクとドラコレックスの両方がパキケファロサウルスの幼体であることを示唆するデータも提示した。ホーナーとマーク・B・グッドウィンは2009年に論文を発表し、これら3「種」の頭骨のスパイクあるいはコブとドームが極端な可塑性を示すことを示唆し、さらにドラコレックスとスティギモロクの標本が幼体のものしか知られていない一方でパキケファロサウルスは成体の標本しか知られていないことを指摘した。これらの観察に加え、これら3タイプの恐竜は全て同じ時代の同じ地域に生息していた。彼らはドラコレックスとスティギモロクは単にパキケファロサウルスの幼体であり、彼らは成長と共にスパイクを失ってドームが発達していくと結論付けた[9]。研究者はドラコレックスの頭骨の破壊分析ができず[10]、記載のためには頭骨の型を使用しなくてはならなかった[9]。ニック・ロングリッチらによる2010年の研究でも、ゴヨケファレホマロケファレのような平らな頭骨を持つパキケファロサウルス類はドーム状の頭骨を持つ成体の幼体である、という仮説が支持された[11]

ドラコレックス、スティギモロク、パキケファロサウルスの大きさ比較

2016年にグッドウィンとエヴァンスは、ヘルクリーク累層から収集された、既知の範囲内で最も若いパキケファロサウルスの解析を行った。この標本は唯一知られているドラコレックスの個体よりも若い1個体以上の標本であり、かつ類似した特徴を示しているため、通常であればドラコレックスに分類される。しかしこの標本からは、パキケファロサウルスへの成長過程を考えた場合に、ドラコレックスとスティギモロクに固有の特徴がその過程において一貫した形態学的特徴になることが示唆された。すなわち、この若い個体からは、ドラコレックスの特徴が一過性のものである可能性が高いことが示唆され、スティギモロスクとドラコレックスを同属に組み込んだパキケファロサウルスの成長曲線に容易にプロットすることができる。このように、ドラコレックスは独立した属ではなく、パキケファロサウルスのジュニアシノニムである可能性が高いとされている[12]

2018年現在では、ドラコレックスはパキケファロサウルスの幼体として研究者の間で合意が得られている[2]。2020年に日本語版が出版された『グレゴリー・ポール 恐竜事典』で、グレゴリー・ポールはドラコレックスおよびスティギモロクが属レベルまたは種レベルでパキケファロサウルスと同一の恐竜と認めている。パキケファロサウルスのタイプ種と別種である場合には、ドラコレックスとスティギモロクはパキケファロサウルス・スピニフェルに分類される[4]

なお同様の関係はケラトプス科角竜であるトリケラトプスネドケラトプストロサウルスに対しても提唱されている[3]


注釈

出典

  1. ^ a b c d 特集:奇妙な動物たち 2007年12月号”. 日経ナショナルジオグラフィック社 (2021年). 2021年9月27日閲覧。
  2. ^ a b c d e John Pickrell (2018年10月28日). “実は肉食も!?“草食恐竜”パキケファロサウルス”. 日経ナショナルジオグラフィック社. 201-09-27閲覧。
  3. ^ a b c d e ダレン・ナイシュ、ポール・バレット『恐竜の教科書 最新研究で読み解く進化の謎』小林快次、久保田克博、千葉謙太郎、田中康平訳、創元社、2019年2月20日、174-176頁。ISBN 978-4-422-43028-7
  4. ^ a b c グレゴリー・ポール『グレゴリー・ポール恐竜事典 原著第2版』東洋一、今井拓哉、河部壮一郎、柴田正輝、関谷透、服部創紀訳、共立出版、2020年8月30日、286頁。ISBN 978-4-320-04738-9
  5. ^ a b Bakker, R. T., Sullivan, R. M., Porter, V., Larson, P. and Saulsbury, S.J. (2006). "Dracorex hogwartsia, n. gen., n. sp., a spiked, flat-headed pachycephalosaurid dinosaur from the Upper Cretaceous Hell Creek Formation of South Dakota." in Lucas, S. G. and Sullivan, R. M., eds., Late Cretaceous vertebrates from the Western Interior. New Mexico Museum of Natural History and Science Bulletin 35, pp. 331–345. Archived copy”. 2011年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年6月4日閲覧。
  6. ^ Dinosphere at The Children's Museum of Indianapolis”. The Children's Museum of Indianapolis (2009年10月30日). 2008年2月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月16日閲覧。
  7. ^ Holtz, Thomas R. Jr. (2011) Dinosaurs: The Most Complete, Up-to-Date Encyclopedia for Dinosaur Lovers of All Ages, Winter 2010 Appendix.
  8. ^ Erik Stokstad,"SOCIETY OF VERTEBRATE PALEONTOLOGY MEETING: Did Horny Young Dinosaurs Cause Illusion of Separate Species?", Science Vol. 18, 23 Nov. 2007, p. 1236; http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/318/5854/1236
  9. ^ a b Horner J.R (2009). “Extreme cranial ontogeny in the Upper Cretaceous Dinosaur Pachycephalosaurus. PLoS ONE 4 (10). doi:10.1371/journal.pone.0007626. http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0007626. 
  10. ^ Sanders, Robert (2009年10月30日). “New analyses of dinosaur growth may wipe out one-third of species”. University of California at Berkeley. 2010年3月25日閲覧。
  11. ^ Longrich, N.R; Sankey, J; Tanke, D (2010). Texacephale langstoni, a new genus of pachycephalosaurid (Dinosauria: Ornithischia) from the upper Campanian Aguja Formation, southern Texas, USA. 31. pp. 274-284. doi:10.1016/j.cretres.2009.12.002. 
  12. ^ Goodwin, Mark B.; Evans, David C. (2016-02-06). “The early expression of squamosal horns and parietal ornamentation confirmed by new end-stage juvenilePachycephalosaurusfossils from the Upper Cretaceous Hell Creek Formation, Montana”. Journal of Vertebrate Paleontology 36 (2): e1078343. doi:10.1080/02724634.2016.1078343. ISSN 0272-4634. 


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