ドム デザイン

ドム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 02:27 UTC 版)

デザイン

大河原邦男がラフデザイン(第1稿)および参考用デザインを描き、安彦良和がクリーンアップしたものが決定稿となった[1]。参考用デザインは決定稿より細身であるが、デザインは肘などを除きほぼ完成している。この参考用デザインを、設定上の計画時におけるデザインとする資料もある(後述)。決定稿には「要するにズングリ・ドッシリスタイルにしてください(目方はガンダムより重たい感じ)」「頭はドッシリ、小さめ…」との書き込みがある[2]。大河原は、のようなものが付いているので、赤胴鈴之助じゃないけど「武士」というイメージはあるとのちに語っている[3]

本機も本編でのシンプルな外観を初期稿から有していたわけではなく、第1稿では角、頭部を覆う動力パイプ、角ばった肩スパイクなどが盛り込まれていた[4]

本機が地表を滑走する設定になったのは絵が1枚で済むからであり、重力下でMSが動いたらこのようになるという動きを表現しようとすると作画枚数が増えてしまい、毎週『ガンダム』がオンエアできるかどうか分からなくなってしまうからだと、総監督の富野由悠季がのちのインタビューで語っている[5]。続編の『機動戦士Ζガンダム』以降は、MSが脚部などのスラスターを用いて地表を滑走する様子が多く描かれた。

設定解説

諸元
ドム
DOM
型式番号 MS-09 / MS-09B[6]
頭頂高 18.6m[7] / 18.2m[8]
本体重量 62.6t[7]
全備重量 81.8t[7] / 90t[8]
装甲材質 超鋼スチール合金[8]
チタン・セラミック複合材[9]
出力 1,269kW[7](70,000馬力[8]
推力 58,200kg[7]
センサー
有効半径
5,400m[10]
最高速度 諸説あり
(「機体構造」を参照)
武装 ジャイアント・バズ
ヒート・サーベル
胸部拡散ビーム砲
ザク・マシンガン
搭乗者 ガイア
オルテガ
マッシュ
他(「劇中での活躍」を参照)

ザクやグフといったMSは、重力下における展開には大きな問題を抱えていた[11][12]。これらの移動は歩行によるか、車両による運搬でおこなわれるが、展開速度が遅すぎたのである[11][注 1]。このため、MSの自力での単独飛行を目指したグフ飛行試験型が開発されるも失敗に終わり、同計画はグフのサブフライトシステムとしてド・ダイYSを連携運用することで昇華されている[14]。この問題を抜本的に解決するため[15]ホバークラフトを応用したMSの開発がツィマット社で開始される[13]

当初は純粋なホバークラフトによるものが考案されるが[16]、兵器搭載量の問題から却下され[17]、最終的にはより推力の高い[16]熱核ジェット・エンジン[13][注 2]にホバークラフトの技術を応用したものに落ち着いている[11][注 3]

計画時のデザインは高機動型ザクII(R-2型)程度のボリュームであったが、試作機を手直ししていく中でプロポーションが修正されている[注 4]。大型のシールドなどのかたよった装備は高速移動の際に余剰なモーメントを発生させることから、機体の装甲そのものを左右対称にバランスさせたうえで強化する方向で設計されている[20]。また、各種スラスターなど高速移動用装備の内装にともなう構造強化などのため、フレーム自体に既存の機体を上回る堅牢さが求められる[20]。これらのことから、自重の増大は設計段階で判明している[20]。ツィマット社によって導入された技術やコンセプトにはユニークなものも多く、加えて整備性の高さなども、のちの空間戦用MSとしての採用を後押ししたといわれる[21]

コンパクトな熱核ジェット・エンジンの開発は困難を極め、開戦から半年以上経過してプロトタイプが完成する[13][注 5]。その後、各部スラスターや[18]動力パイプが内装され[23]、装甲形状も空力的な見直しを受けたあと[18]、数週間後には制式採用されて[12]グラナダキャリフォルニアベースで生産が進められている[24]。本機は限定された作戦域での運用を前提とした「局地戦用MS」として設計されているが、その性能の高さからグフに替わる主力機としても多く扱われているという[25]

標準塗装は黒と薄紫を基調に、胸部がグレー、モノアイ周縁や装甲の内側が赤で塗り分けられている。これは本機を初めて受領した「黒い三連星」のカラーリングを踏襲しているともいわれるが[18]、実際には以前から配色は決定しており、事情を知らない当時のメディアによる憶測がいつのまにか定説となったと語る研究者も少なくないという[25]

機体構造

頭部
グフ試作実験機で初めて取り入れられた2次元軌道をもつモノアイ・レールの採用により、地対空戦闘などでも上方視界を確保することが可能となっている。また、補助センサーの高性能化にともない、側方視界はモノアイを使用しなくても十分に捜索できることもあり、主センサーを側面に振り向ける必要がなくなったともいわれる。頭部と胸部が一体化された構造は、被弾率を軽減し、敵の銃弾などを可能な限り跳弾させるためにも有効な手段であったらしいとされる[20]
胴体部
ブロック構造が導入されており[21]、腹部のジェネレーター・ブロックと胸部、腰部が別ブロックに分割され、機体可動やメンテナンス、機能向上に配慮した設計となっている[26]。この構造はのちに開発されるMSにも採用されており、特に構造的にスラスターなどを取り囲むように設計された腰部の「スカート・アーマー」は、MSの泣き所であった部位の被弾率を圧倒的に低減している[26]
コックピット・システムは、ホバー走行に対応するためにグフまで共用であったものから変更されており、操作系にも改良がほどこされている[9]。搭乗方式はダイレクト・インとなっているが、搭乗ハッチは飛躍的に強化されている[26]。ただし、砂漠や湿地帯などに展開している部隊からは、昇降の際にコンソールが汚損しやすいとの苦情も少なくなかったらしいとされる[26]
腕部
当初から地球上での運用が想定されており、徹底的な防塵処理がほどこされている。また、ジャイアント・バズを支え、十分に取り回し可能なトルクをもつ。これらにより、既存の機体より腕部が大型化している[20]
脚部
熱核ジェットで送り込んだ高温高圧の圧搾空気を[20]密閉された足底に溜め[23]、地表との間に表面効果を発生させることで対地摩擦を相殺し、機体を地表から微妙に浮上させる[20]。そして、背部および腰部と脚部の後方の推進用スラスターによって機動をおこなう[20]。移動速度を上げると表面効果も大きくなることから、巡航時には熱核ジェットのみでの走行も可能であるという[20]。つま先には高低差や障害物を感知するための[23]センサーが設置されているため、不整地でも走破が可能である[20]。ホバー走行の使用時間を延長するため、MSの脚部推進剤タンクとしては大きいサイズのものが採用されていることから、脚部が大型化している[23]。100トン以上の液体水素を積載し、5時間程度のホバー走行が可能である[13]。巡航速度は時速90キロメートル[21][7]、最高速度は時速110キロメートル[8]、180キロメートル[27]、240キロメートル[21][7]、380キロメートル[9][13]と諸説ある。

武装

ジャイアント・バズ
型式番号:GB03K/360mm[26]
ハニーウォール&ライセオン (H&L) 社製[28][26]。360ミリロケット砲で、砲弾は後部の並列弾倉に10発装填されている[13]。本体の手の部分からパイプを通して送られる液体燃料を炸薬として射出され、直後にロケット・モーターに点火して増速する[13]
キャリフォルニアベースの軍港施設から、連邦軍の戦艦用の360ミリ規格の弾頭が多数発見され、生産ラインも簡単に復旧できたことから、これを射出可能な装備として本兵装が開発される[18]。基本設計はそれまでに試作されていた320ミリなどのラージサイズ・バズーカをスケール・アップしただけのものであるが[18]、結果的に一年戦争で使用されたMS用携行装備としては最大級の威力をもつものとなっている[18][29]。キャリフォルニアベース北部の試射場における試射では、威力はのちのゲルググ用ビーム・ライフルにはおよばないものの、一撃で巡洋艦クラスの宇宙艦艇を大破させている[18]。のちにリック・ドムの武装として宇宙でも多用され、ジオン本国やグラナダでも生産されている[29]。ドムおよびリック・ドムの代名詞的な兵装であるが[21]、公国軍の基本MS規格にしたがって作られているため[29]、大戦末期には他のMSでも多用されており[26]、ザクIIのパイロットが愛用した例もある[29]
なお本武装と同形状の、人間が携行できるサイズのものも映像作品で確認できる。『機動戦士ガンダム』最終話では、シャア・アズナブルア・バオア・クー内部に残されていたものを拾い、キシリア・ザビが座乗して脱出しようとするザンジバルのブリッジを狙撃しているが、ビームらしき光条を発している。また、『機動戦士ガンダムΖΖ』第41話でもエル・ビアンノが携行して発砲しているが、こちらは実体弾を撃ち出している。
ヒート・サーベル
型式番号:Type 2[26]
白兵戦用の装備で、サーベル部分が白熱し、敵機を溶断する[26]。エネルギーを高効率で熱へと変換するデバイスを使用しているものの、消耗が激しく基本的には使い捨てである[26]。放電機能も有する[13]
拡散ビーム砲
胸部左側に装備。当初はビーム兵器用のエネルギー・サプライ・ターミナルとして設置されたらしいとされるが[26]、十分な出力が得られず[21]、またビーム兵器自体の開発遅延もあり[26]、善後策として幻惑用の欺瞞装備が増設されたといわれる[26]。威嚇用の短距離ビーム砲としても使用可能[21]
漫画『機動戦士ガンダム アグレッサー』では、照射することで相手のビーム・サーベルのビームを固定しているIフィールドを破壊し、一瞬ではあるが使用不能にしている。
その他
OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』第10話冒頭では、ザク・マシンガンを携行する機体が登場する。
漫画『機動戦士ガンダム0079』第5巻では、マッシュ戦死後の黒い三連星がジャイアント・バズの他にMMP-80やシュツルムファウストを装備し、2度目の対ガンダム戦に臨んでいる。
漫画『ザ・ブルー・ディスティニー』では、トリスタン少尉の機体が両手にザク・マシンガンを携行するほか、ザクI・スナイパータイプのビーム・スナイパー・ライフルも使用している。

劇中での活躍

テレビ版第24話で初登場。オデッサ作戦開始直前に黒い三連星が3機を受領し、ホワイトベース (WB) 隊に夜襲をかける。照明弾を発射するミデア輸送機を撃墜し、Gアーマーガンキャノンガンタンクを翻弄し、WBに肉迫する。Gアーマーからボルトアウトして立ちはだかるアムロのガンダムに対し、三位一体の戦法である「ジェット・ストリーム・アタック」を2度仕掛けるも、あと一歩およばずマッシュ機が撃破され撤退する(詳細はジェット・ストリーム・アタックを参照)。第25話ではマッシュの仇を討つべく、オデッサ作戦の際に戦闘機ドップの編隊を従えて2機で出撃、ふたたびWB隊を襲撃する。オルテガ機はガンタンクの左履帯を、ガイア機はガンキャノンの左つま先を破壊するが、Gスカイ・イージーに乗ったガンダムとの白兵戦で2機とも撃破される。劇場版『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』では第24話と25話の戦闘が編集され、マッシュ機撃破直後にガイア機もガンダムに、ほぼ同時にオルテガ機もセイラ・マスコア・ブースターに撃破される展開に変更されている[注 6]

本来はドズル・ザビの命によってランバ・ラル隊へ供与されるはずの機体であるが、マ・クベの策略によって握りつぶされる様子が第20話で描かれており、「ドム」の名称も同話が初出となっている。マ・クベの副官のウラガンは、ラルに対し補給線とともに本機も撃破されたと虚偽の報告をおこなっている。

第29話では、ジャブロー攻略戦で数機がガウ攻撃空母から降下するが、1機が対空砲火で撃墜される。劇場版では、ジャブロー地下に新たに1機が登場し、ガンダムに撃破されている。

機動戦士ガンダム 第08MS小隊』では第10話に登場。肩や脚部アーマーのデザインがやや異なっている。対空戦闘ではザク・マシンガンを、対MS戦ではジャイアント・バズを使用する。陸戦型ガンダムを追い詰めるも、量産型ガンタンクに背中を撃たれて撃破される。

MS IGLOO 2 重力戦線』では第3話に登場。オデッサ作戦において、ダブデ級陸戦艇の護衛として2機が陸戦強襲型ガンタンクを迎撃する。1機はガンタンクからの主砲の砲撃が足元の地面に着弾して転倒、もう1機はヒートサーベルで主砲身を切断するも、反撃を胴体に受けてバランスを崩したところに燃料タンクをぶつけられて炎上し、敵の突破を許ししてしまう。

漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、黒い三連星の機体にオリジナルの部隊マークが追加された。「ジャブロー編」では、アニメ版同様三連星による3機で構成され、ガンキャノンとガンタンクを大破させた後ガンダムに挑むが、マッシュ機を撃破され撤退する。後の「オデッサ編」ではガイア、オルテガを隊長に各小隊あたり4機ずつ計8機のドム中隊を編成。「ダブルジェットストリームアタック」なる新戦法でふたたび挑むも、ニュータイプ能力に目覚めたアムロの敵ではなく、ガンダム1機に全滅させられている。なお、拡散ビーム砲を使用することは一度も無かった。

漫画『MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝』では、物語終盤で主人公のフレデリック・ブラウン軍曹と所属部隊がドムに搭乗し、ジャブロー攻略戦に参加する。

個人用カスタム機

ランバ・ラル専用機
ギレンの野望 ジオンの系譜』に登場する、ゲームオリジナルの機体。ランバ・ラル隊にドムを配備する「ifルート」で使用可能となる。標準塗装の紫および赤の部分がパーソナルカラーの青で塗られている。
if設定によれば、ペズン計画のテストベッドとして、特定の環境に合わせた各種オプションパーツや、限定的なステルス能力、新型の熱核ホバーなど、さまざまな技術的試みがほどこされている。これらすべてが必ずしも成功したとは言えず、操縦性は劣悪でパイロットを選ぶ機体となるが、ラル自身の能力もありかなりの性能を発揮したという。装甲まで含めた各種武装のオプション化が進められており、各戦場によって外観も変化している。標準兵装のほかに、ハンドガン式のヒート・ロッドや機関砲、ミサイル・ランチャーなども用意されている。ラルとともに地球圏の各地を転戦し、ペズン計画にとって重要なデータを残している[30]
ナランソロンゴ・ボルドバヤル専用機
漫画『機動戦士ガンダムMS BOYS -ボクたちのジオン独立戦争-』に登場。「モンゴルの銀狼」ことナランソロンゴ・ボルドバヤル大尉に供与される。『第08MS小隊』のデザインがベースとなっており、黒(単行本第2巻表紙では濃淡グレー)を基調に両肩が銀色のパーソナル・カラーに塗装されている。ジャイアント・バズのほか、ヒート金剛棒とスパイク・シールドを装備する。

試作機・実験機

グフ試作実験機

グフをベースに製作された、ドムとの中間的な機体。

ドム試作実験機

機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のメカニックデザイン企画「Mobile Suit Discovery」における、上記グフ試作実験機に当たる機体。

目次へ移動する


プロトタイプドム

諸元
プロトタイプドム
PROTOTYPE DOM
型式番号 YMS-09
頭頂高 18.6m[31]
本体重量 60.8t[31]
全備重量 79.8t[32]
装甲材質 超硬スチール合金[25]
武装 ジャイアント・バズ
ヒート・サーベル
搭乗者 フレデリック・クランベリー

初出は1981年6月発行の書籍『TV版 機動戦士ガンダム ストーリーブック2』の巻頭折り込みに掲載された大河原によるカラーイラストのひとつで、キャプションでは「ドムの試作完成機」とされた[33]。その後、メカニックデザイン企画『モビルスーツバリエーション (MSV)』で詳細な設定が追加された。また、1981年9月発行のムックガンダムセンチュリー』の文中でも「ドムのプロトタイプ」について触れられている[13]

2機がジオン本国で完成し、ただちに地球へ降ろされ[12]、キャリフォルニアベースで各種テストがおこなわれている[15]。ジオン本国では本機の開発に全力を挙げており[34]、最新鋭機として大きく期待されていたため[12]、広報部による写真公表やニュース放送も数多くおこなわれている[34]。連邦軍も本機には注目するが、当時同軍のMSは誕生したばかりで実戦配備まではおよんでいない[34]

1号機によるジャイアント・バズの試射実験は、キャリフォルニアベースの北側に8つある実験フィールドのうち最大の第5試射場で、記録フィルムの撮影も兼ねておこなわれており[17]、本機の完成記念式典でもあったとされる[34]。本国の広報部写真班によって撮影されたひとコマには[34]、宣伝のために召喚された多くの将軍たちや[12]報道関係者が写っている[17]。後方で作業している第23メンテナンス・スコードロンの[17]陸戦型ザクII[34]には、式典用のマーキングがほどこされている[17]。1号機にはフレデリック・クランベリー大佐が搭乗し、花を添えている[12]

カラーリングは黒とグレーを基調に一部が赤で塗り分けられており、塗り分けは異なるものの量産型に近い。なお記録によれば[35]、肘部や腰部に部隊マーク風に描かれている紋様は、式典に際してザビ家の命令によってほどこされたとされ[12]、腹部の翼のような紋様は「ジオンマーク」とされる[17]。また、キャリフォルニアベース所属のガウ攻撃空母や作業用ザクにも使用されている、第4戦術MS部隊のエンブレム[36]が本機にほどこされたとする資料もある[37]。本機と量産型との差異ははほとんどなく、外装の整理がおこなわれたに過ぎないが[12]、量産型はランドセルが機体と一体化されている[16]。記録では本機は2機の生産に留まり、その後キャリフォルニアベースに引き渡されている[12]

ドム・トロピカルテストタイプ

諸元
ドム・トロピカルテストタイプ
DOM TROPICAL TEST TYPE
型式番号 YMS-09D[38] / YMS-09[37] / MS-09D[16]
頭頂高 18.5m[31]
重量 65.1t[31]
装甲材質 超硬スチール合金[25]
武装 ジャイアント・バズ
ヒート・サーベル
搭乗者 クラウデン・マリン
ミア・ブリンクマン
ロイ・グリンウッド[39]

『MSV』で設定された。「局地戦闘型ドム」[37]または「トロピカルドム」とも呼ばれる[40]

アフリカ戦線におけるドムの活躍は目覚ましいものであったが、局地戦での使用に問題がなかったわけではなく[12]、高温下での戦闘でメカトラブルが発生し[37]、現地からは改善要求の提出が少なからずあったといわれている[12]。そこで熱帯戦用の研究母体として[12]、キャリフォルニアベースに送られて1か月後の[37]プロトタイプドムの2号機に若干の改修をほどこしたのが本機である[12]。改修は制式承認以前のものとしてキャリフォルニアベースが工作を代行しているが[12]、戦後の資料では "YMS-09D" と紹介されることが多い[37]

量産型ではコンパクト化された[41]頭部の放熱パイプと背部推進器の形式は差し戻しでプロトタイプドムの方式が採用され[12]、ランドセルには補助タンクや大容量冷却システムが搭載されている[38][16]。頭頂部には近距離用の通信アンテナが追加されており[12]、これも要望が多かったものであるが、通信機の性能は大したものではない[42]。本体には防塵処理がほどこされている[43]。カラーリングは全身をサンド・イエローとするもののほか、胸部やソール部などをブラウンで塗り分けたパターンも確認されている[44]

試作機は「スカラベ」部隊によってテスト支援と完成時の性能チェックがおこなわれている[45]。ホバリング時におけるジャイアント・バズの試射を撮影した写真が戦時中に士気高揚のために公開されており、撮影場所はアリゾナの実用試験フィールドであるとされるが、真偽は不明である[45]。実験はオーバーヒートもなく、満足いく結果であったとされる[42]。その後[45]、2機が[46]北アフリカ戦線の[45]「カラカル」部隊に配備され、オデッサ作戦の直前に実戦テストがおこなわれている[46]。実戦データはドム・トローペンの開発に活かされたとされる[47]。また、カーミック・ロム大尉のパーソナル・エンブレムで、のちに隊長となる遊撃隊「スコルピオ」の部隊章となる「アラビアン」が本機にも使用されたとする資料もある[37][注 7]

作中での活躍
漫画『機動戦士ガンダム バンディエラ』ではクラウデン・マリン少尉が搭乗。作中では単に「ドム」と呼ばれているが、単行本第3巻の表紙では "YMS-09D" の型式番号が確認できる。レプス部隊地球配属部隊に加入し、アレキサンドリアでかつてのサッカーの教え子であるユーリー・コーベルザクIIと模擬戦を行う。砂塵を発生させて相手の視界をさえぎる得意の戦法でユーリーに勝利する。アデン宇宙港へ向かうザンジバルが敵に包囲された際にはユーリーとともに出撃し、敵を引き付けてユーリーによるビッグ・トレー撃沈をアシストする。その後ホバー推進器が故障し、コックピットに61式戦車の直撃を受けるももちこたえ、デプ・ロッグの上に乗りヒート・サーベルで脅すことにより撤退に成功する。クラウデンは重傷を負うが一命を取り留める。
ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション Code Fairy』ではオデッサ作戦と同時期に、アリゾナで試験運用されていたうちの1機に、秘匿部隊「ノイジー・フェアリー」のミア・ブリンクマン技術少尉が大破したザク・ハーフキャノンに替わって搭乗する。武装はMMP-80マシンガンとクラッカーも装備。なお、ドム・キャノンのオプションは届かなかったため装備していない[47]。アンダーグラウンド・ソナー (UGS) を装備し、索敵能力に優れる。
ドム・ノーミーデス
DOM GNOMIDES

ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション Code Fairy』に登場。ミア・ブリンクマン技術少尉がみずからのプランをもとにドム・トロピカルテストタイプを支援用に改修した機体。後部にギャロップのホバーユニットが接続されており、そこに回収したヒルドルブの30サンチ砲を搭載している他、片手で運用可能なガトリング・キャノンと、自衛用のヒート・ハルバートを携行する。部隊カラーの薄紫と白を基調に、一部ダーク・グレーで塗り分けられている。

目次へ移動する


ドム高速実験型

諸元
ドム高速実験型[49] / ドム高機動試作機[50]
DOM HIGH MOBILITY PROTOTYPE[32][50]
型式番号 YMS-09J
頭頂高 18.6m[51]
重量 68.2t[51]
装甲材質 超硬スチール合金[32]
武装 ジャイアント・バズ
ヒート・ランサー
胸部拡散ビーム砲
搭乗者 マサ・オーカー

メカニックデザイン企画『MSV-R』で設定された。メカニックデザインは大河原邦男。

ドムの実戦配備と同時に開発が着手されたホバー走行の性能向上型[51]。公国軍上層部の要求項目は、稼働時間を現在の90パーセント以内のまま、最大速度50パーセントのアップと、最大速度到達まで80秒以内という、無理難題といえるものであった[51]。開発チームは、先行していたグフ飛行試験型の開発データをもとに、可動式スタビライザーを装備するジェット推進パックを開発、腰部側面にも推進器を追加している[51]。1号機は第1回のテストで最高速度127パーセントを記録するが、第2回ではバランスを崩し横転、機体は失われる[52]

続いて製作された2号機ではスタビライザーを0.8メートル延長し、脚部にエアブレーキが追加される[52]。10月から11月頃に北ヨーロッパの山岳地帯で[49]第3回高速ホバー実験がおこなわれ[53]、その様子が連邦軍の偵察部隊によって撮影されている[49]。当時の連邦軍では型式が不明であり、「ドムタイプ0079NEU-SW03」、もしくは「ドム改装タイプ北ヨーロッパ03」と分類仮称されている[49]。最高速度は140パーセントを記録するが、到達時間は115秒と要求項目にはおよんでいない[52]。ヨーロッパ戦線の悪化にともない、同地でのテストは中止されている[49]

要求項目では火力については触れられていないが[51]、次世代の重MS用に開発されたヒート・ランサーのテストも[49]2号機によっておこなわれている[53]。これは折り畳み機構をもつ大型ヒート・ホークで、対MS戦など白兵戦時の戦闘データをもとに製造される[52]。戦況に応じて長さを変え、対地上戦艦やトーチカにも使用可能である[49]。運用試験ではおおむね良好な結果を残すが、制式採用には至らなかったようだとされる[49]

開発は中止となり[52]、制式採用されることなく計9機の生産に留まっている[53]。なお、戦後のアフリカ解放戦線で目撃されたデザート迷彩のドムの1機が本機であることが確認されており、本機の存在が広く知られていないことからドム・トロピカルテストタイプと誤認されていたようだとされる[49]

小説『機動戦士ガンダム MSV-R ザ・トラブルメーカーズ』では、一年戦争終結直後に傭兵のマサ・オーカーが入手し、愛機としている。

目次へ移動する


注釈

  1. ^ 『ガンダムセンチュリー』では、ザクIIの走行スピードは時速160キロメートルでしかなく、これは当時の戦車の5割近く速いが、十分とは言えなかったとしている[13]
  2. ^ 厳密には熱核ジェットと熱核ロケットのハイブリッド・タイプである。詳細は熱核反応炉を利用した推進器を参照。
  3. ^ 当初は湿地帯や沼沢地帯への投入も可能な、純粋なホバークラフト・ユニットを装備した局地戦用MSを開発する予定であったが、ツィマット社が高効率の熱核ジェット・エンジンを開発したことにより状況が一変したとする資料もある[18]
  4. ^ 細身のドムの画稿を「ドム試作1号機」とする資料もある[19]
  5. ^ 『センチュリー』では完成時期を0080年4月中旬としているが、同書では開戦が0079年11月1日とされており[22]、現在の設定と異なる。
  6. ^ そのため、ジャイアント・バズの直撃で受けたガンダムのシールドの損傷が、ガイア機撃破時にはなくなっている。
  7. ^ "YMS-09" とする資料もあるが[48]、当初はトロピカルテストタイプの型式番号の末尾に "D" は付いていなかった。
  8. ^ 10機に満たなかったとする資料と[12]、十数機程度とする資料がある[16]
  9. ^ なお、トロピカルテストタイプは通常型のドムをプロトタイプに近い仕様に戻しつつ追加生産され、30機ほどが戦線へ投入されたとする資料もある[47]
  10. ^ ただし、スペック表に記載されている資料も複数ある[56][58]
  11. ^ 『電撃ホビーマガジン』に掲載された作例では、右肩に描かれた[57]
  12. ^ HGUCの『ドム・トローペン』と『ドム・トローペン サンドブラウン』の付属説明書の設定解説はほぼ同じ文章が記載されているが、後者はグラデン搭載に関する部分が書かれていない[65]
  13. ^ ただし、ドム・トローペンの型式番号をMS-09Fとしているものもある[64]
  14. ^ 括弧ありが当初の資料の数値、括弧なしが後発の資料(公式ウェブサイト含む[74])の数値である。後発のほうはザクII F2型と同じ数値であり、さらにザクII F2型は20,500kg×2、3,100kg×4と基数が多く総推力は53,400kgとなり、本機はザクII F2型より総推力が劣ることになってしまっている。
  15. ^ ドイツ空軍Bf109G戦闘機の熱帯仕様の過給器用空気取入口に装備されているものとまったく同じ意匠である。
  16. ^ 劇中ではゲイリー機のみしか確認できないが、小説版でも2機が突入したとされる[82]
  17. ^ 撃破される描写はないが、ユーコン級潜水艦 "U801" が受けた1機撃破の報告や、第3話に登場する残骸などより確認できる。

出典

  1. ^ ガンダムアーカイブ 1999, p. 95.
  2. ^ ガンダムアーカイブ 1999, p. 137.
  3. ^ アイアンワークス 1989, p. 84.
  4. ^ 記録全集2 1980, p. 210.
  5. ^ OUT09 1982, p. 56.
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 144ドワッジ 1986.
  7. ^ a b c d e f g EB一年戦争編 1989, p. 54-55.
  8. ^ a b c d e ロボット大全集 1981, p. 120-123.
  9. ^ a b c FCMリックドム 1988.
  10. ^ ガンダムRPG 1997, p. 57.
  11. ^ a b c MSVジオン軍編 1984, p. 71.
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r MSVハンドブック1 1983, p. 14.
  13. ^ a b c d e f g h i j センチュリー 1981, p. 38-39.
  14. ^ MSVハンドブック1 1983, p. 13.
  15. ^ a b MSVジオン軍編 1984, p. 90-91.
  16. ^ a b c d e f ポケットカードMSV 1984.
  17. ^ a b c d e f ボンボン06 1983, p. 424-429.
  18. ^ a b c d e f g h MGドム 1999, p. 3.
  19. ^ ボンボン06 1982, p. 209.
  20. ^ a b c d e f g h i j MGドム 1999, p. 9.
  21. ^ a b c d e f g HGUCドム 2006.
  22. ^ センチュリー 1981, p. 37.
  23. ^ a b c d ガンダム解体新書 2007, p. 70-73.
  24. ^ MSVジオン軍編 1984, p. 16.
  25. ^ a b c d MSVコレクション地球編 2000.
  26. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p MGドム 1999, p. 13.
  27. ^ ガンダム大事典一年戦争編 1991, p. 105.
  28. ^ a b データガンダムI 2010, p. 21.
  29. ^ a b c d MSVジオン軍編 1984, p. 94-96.
  30. ^ 電撃ホビー10 1999, p. 80.
  31. ^ a b c d MS大全集98 1998, p. 23.
  32. ^ a b c MSVスタンダード 2018, p. 102.
  33. ^ ストーリーブック2 1981, p. 4-5.
  34. ^ a b c d e f MSVジオン軍編 1984, p. 162-163.
  35. ^ 144プロトタイプドム 1983.
  36. ^ MSVジオン軍編 1984, p. 60.
  37. ^ a b c d e f g h i j 144ドムトロピカル 1983.
  38. ^ a b c MSVジオン軍編 1984, p. 15.
  39. ^ MS大全集2003 2003, p. 102.
  40. ^ SDカラー完全大図鑑 1988, p. 57.
  41. ^ 100ドムトロピカル 1983.
  42. ^ a b c MSVジオン軍編 1984, p. 92-93.
  43. ^ MS大全集2013 2012, p. 13.
  44. ^ MS大全集 1988, p. 15.
  45. ^ a b c d MSVジオン軍編 1984, p. 166-167.
  46. ^ a b c d e f MSVジオン軍編 1984, p. 164-165.
  47. ^ a b c CodeFairy1 2021.
  48. ^ 模型情報11 1983, 裏表紙。
  49. ^ a b c d e f g h i j ガンダムエース09 2010, p. 100-103.
  50. ^ a b MSV-Rグラフィックドキュメント 2012, p. 32-33.
  51. ^ a b c d e f MSV-Rジオン編 2014, p. 6-7.
  52. ^ a b c d e MSV-Rジオン編 2014, p. 86-87.
  53. ^ a b c MSV-Rアクショングラフィック2 2015, p. 59-70.
  54. ^ a b SDクラブ2 1988, p. 7.
  55. ^ HOWTO21982, p. 10-11.
  56. ^ a b HJ付録MS大図鑑1 2019, p. 36.
  57. ^ a b c MSV-Rグラフィックドキュメント 2012, p. 28-31.
  58. ^ a b c d e f g MSV-Rジオン編 2014, p. 4-5.
  59. ^ MS大全集2013 2012, p. 19.
  60. ^ a b c d e MSV-Rアクショングラフィック1 2013, p. 27-36.
  61. ^ a b ガンダムエース09 200, p. 22-25.
  62. ^ a b c MSV-Rジオン編 2014, p. 84-85.
  63. ^ a b c d e f EBデラーズ紛争編上 1992, p. 36.
  64. ^ a b c d e f g h i j k l m n HGUCドムトローペン 2000.
  65. ^ HGUCトローペンサンドブラウン 2002.
  66. ^ 小説0083上 1992, p. 21.
  67. ^ OFFICIALS 2001, p. 520.
  68. ^ AOZ Vol2 2004, p. 87.
  69. ^ a b c d e f g h 0083略奪編 1991, p. 56.
  70. ^ MSVコレクションファイル地球編 2000.
  71. ^ DC一年戦争外伝 1997, p. 37.
  72. ^ a b c d e NT100%0083 1993.
  73. ^ エピソードガイド2 1999, p. 126.
  74. ^ a b 0083公式ウェブ 2006.
  75. ^ MS大全集2013 2012, p. 33.
  76. ^ a b c d e ラポートDX0083 1993, p. 132.
  77. ^ EBデラーズ紛争編上 1992, p. 88-89.
  78. ^ a b c d MS WARS 1992, p. 118-121.
  79. ^ a b c UCメカ&ワールド4-6 2013, p. 84-85.
  80. ^ a b c MS WARS 1992, p. 118-120.
  81. ^ a b ファクトファイル14 2004, p. 5-6.
  82. ^ 小説0083上 1992, p. 93.
  83. ^ 小説0083上 1992, p. 117.
  84. ^ 小説0083上 1992, p. 139.
  85. ^ UCメカ&ワールド4-6 2013, p. 19.
  86. ^ 小説UC7 2008, p. 120-122.
  87. ^ 小説UC7 2008, p. 175.
  88. ^ a b c d e f g h i j k l m n o DCΖΖ 1997, p. 36-39.
  89. ^ a b c d e f g 総解説 2009, pp. 170–171。
  90. ^ 総解説 2009, p. 172
  91. ^ グレートメカニック13 2004, p. 20-21.
  92. ^ ミッションΖΖ 1987, p. 83-84.
  93. ^ MS大全集2003 2003, p. 26.
  94. ^ a b c d e f g h 総解説 2009, p. 313
  95. ^ a b c d 総解説 2009, p. 314


「ドム」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ドム」の関連用語

ドムのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ドムのページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのドム (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2021 GRAS Group, Inc.RSS