トリュフ 人工栽培

トリュフ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/21 04:40 UTC 版)

人工栽培

種により人工栽培が行えるものと行えないものがあり、高値で取引されている種の菌床栽培には成功していない[19]

発生環境の整備を行う手法

古くから人工栽培の方法が模索されており、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランが栽培への懐疑とともに次のように記している。

「教養ある人々がその秘密を探り当てようとし、その種を発見したと思いこんだ。しかし彼らの約束は実現せず、植えても何の収穫もなかった。たぶんこれは結構なことで、トリュフの大きな価値の一つは高価であることであって、もっと安ければこうまで高くは評価されないだろう。
『喜べ友よ』私は言った。『とびきりのレースがとても安く作られるようになるぞ』
『なんてこと』彼女は答えた。『考えても見て、もしも安くなったら、誰がそんなものを身につけるというの?』」(ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン、1825年)

しかしながら、1808年、南フランスのヴォクリューズ県アプトのジョゼフ・タロン(Joseph Talon)は、トリュフの宿主となることが分かっているオークの木の下から集めたドングリをその根の間に播くことを思いついた。実験は成功し、数年後、新しく育てたオークの木の周囲の土の中にトリュフが発生した。これ以降トリュフ栽培は急激に拡大し、フランスではtrufficulture(トリュフィキュルテュール「トリュフ栽培」)として知られるようになる。1847年、ヴォクリューズ県カルパントラのオーギュスト・ルソー(Auguste Rousseau)が7ヘクタールにわたってオーク(これもトリュフが発生する木の周りから得たドングリ)を植え、その後大量のトリュフの収穫を得た。彼は1855年のパリ万国博覧会で賞を得た。

これらの試みの成功は、トリュフの生育に必要な暑く乾燥した気候の石灰岩地帯である南フランスに熱狂をもたらした。19世紀の末に、南フランスのぶどう園が侵入害虫のブドウネアブラムシによって壊滅した。微胞子虫による微粒子病のため南フランスのカイコが壊滅したため、園も無用になってしまった。こうして、広大な土地がトリュフ栽培のための空き地となった。トリュフを生産する樹木が何千本も植えられ、1892年のフランス全体での収穫量は2000トンに上がり1890年には750平方キロメートルのトリュフ園があった。

しかし20世紀に入ると、フランスの工業化とそれに伴う郊外への人口の移動により、これらのトリュフ園は放棄されてしまった。第1次世界大戦では従軍した男性の20%以上を失い、これもまたフランスの田園地帯に深刻な打撃を与えた。そのため、トリュフ栽培のノウハウは失われた。さらに、二つの世界大戦の間には、19世紀に植えられたトリュフ園の寿命が尽きてしまった(トリュフを生産する樹木の生活環は平均30年である)。その結果、1945年以降トリュフの生産が急減した。1892年には2000トンあった生産量は、現在では通常20トン前後でしかない。1900年にはトリュフは多くの人々に日常的に食べられていたが今ではトリュフは金持ち専用の珍味か、特別な場合にのみ食べられるものに成り下がった(昔は安価だったが今では高級品と化している物として、日本では鯨肉マツタケ雑穀と立場が似ている)。この30年間に、トリュフの大量生産のための新しい試みが始められた。現在フランスで生産されるトリュフの80%は特別に育てられたトリュフ園で作られる。にもかかわらず、生産は1900年代の頂点にまでは回復してはいない。地方の農家はトリュフの価格を下げる大量生産への回帰に反対している。しかしながら、大量生産の前途は洋々である。世界市場は現在フランスで生産される量の50倍のトリュフを吸収すると見積もられている。現在トリュフを生産する地域はスペインスウェーデンニュージーランドオーストラリア、アメリカ(ノースカロライナ州)にある。

トリュフの採集

野外でトリュフを探すときは、ほとんど常に特別に訓練されたブタかイヌを用いる。ブタはかつて最もよく使われたが、現代の農家はトリュフを食べてしまわないイヌの方を好む。ブタとイヌのどちらも鋭敏な嗅覚を持っているが、イヌがトリュフの香りについて訓練しなければならないのに対し、メスのブタには全く何の訓練も要らない。これはトリュフに含まれる化合物が原因で、メスブタを強く引きつけるオスのブタの性フェロモンと類似しているためである。

林地栽培(菌接種苗木定植による手法)

19世紀から行われている手法で、セイヨウショウロの発生している林に宿主樹木の幼木を植え、苗木の根への菌の感染を待ち、感染後に苗を発生していない場所へ移植する方法[19]。ほかに、宿主樹木の実生苗に子嚢胞子の懸濁液を投与する胞子接種も行われるが、発生開始まで5年程度を必要とする[19]

菌床栽培

1996年、国際きのこアカデミーと近畿大学農学部の共同研究により世界で初めて菌床方式による人工栽培に成功したと報道された[20]が、ヨーロッパに産出する種とは別種[19]で日本産品種は香りが薄いため評価は低かったとされている[20]


  1. ^ Læssøe, Thomas; Hansen, Karen (September 2007). “Truffle trouble: what happened to the Tuberales?”. Mycological Research 111 (9): 1075–1099. doi:10.1016/j.mycres.2007.08.004. ISSN 0953-7562. PMID 18022534. 
  2. ^ Lepp. “Spore release and dispersal”. Australian National Botanic Gardens. 2016年12月5日閲覧。
  3. ^ Brillat-Savarin, Jean Anthelme (1838) [1825]. Physiologie du goût. Paris: Charpentier. https://archive.org/details/physiologiedugo02savgoog  English translation Archived 2008-07-06 at the Wayback Machine.
  4. ^ “Truffles”. Traditional French Food Regional Recipes From Around France. (2017年). http://www.traditionalfrenchfood.com/truffles.html 2017年1月6日閲覧。 
  5. ^ Fabre, J. H. (Translated by de Mattos, A. T.), 2009. The life of fly. Echo Library, ISBN 9781406863222
  6. ^ Pacioni, G., Bologna, M. A., and M. Laurenzi. 1991. Insect attraction by Tuber: a chemical explanation. Mycological Research 95(12): 1359–1363.
  7. ^ Dubarry, F., and S. Bucquet-Grenet, 2001. The Little Book of Truffles. Flammarion.ISBN 9782080106278.
  8. ^ Chevalier, G., Mousain, D., and Y. Couteaudier, 1975. Association ectomycorhiziennes entre Tubéracées et Cistacées. Annales de Phytopathologie 7: 355-356.
  9. ^ Giovannetti, G., and A. Fontana, 1982. Mycorrhizal synthesis between Cistaceae and Tuberaceae. New Phytologist 92: 533-537.
  10. ^ Wenkart, S., Mills, D., and V. Kagan-Zur, 2001. Mycorrhizal associations between Tuber melanosporum mycelia and transformed roots of Cistus incanus. Plant Cell Reports 20: 369-373.
  11. ^ Ammarellow, A., and H. Saremi, 2008. Mycorrhiza between Kobresia bellardii (All.) Degel and Terfezia boudieri Chatin. Turkish Journal of Botany 32: 17-23.
  12. ^ Morte, A., C. Lovisolo, C., and A. Schubert, 2000. Effect of drought stress on growth and water relations of the mycorrhizal association Helianthemum almeriense-Terfezia claveryi. Mycorrhiza 10: 115-119.
  13. ^ Turgeman, T., Jiftach Ben Asher, J. B., Roth-Bejerano, N., Varda Kagan-Zur, V., Kapulnik, Y., and Y. Sitrit. 2011. Mycorrhizal association between the desert truffle Terfezia boudieri and Helianthemum sessiliflorum alters plant physiology and fitness to arid conditions. Mycorrhiza 21: 623-630.
  14. ^ The Lightning and the Truffle
  15. ^ a b c d e f トリュフの輸入 東京税関、2020年4月19日閲覧。
  16. ^ 美味しいヨーロッパ アウトバウンド促進協議会、2021年12月10日閲覧。
  17. ^ 日本で初めて新種と記載されたトリュフ ―国産トリュフの人工栽培に向けて― 森林総合研究所
  18. ^ 宇田川悟 『食はフランスに在り』小学館ライブラリー、1994年、62-67頁。ISBN 978-4062025898 
  19. ^ a b c d キノコの栽培方法 -トリュフ類(Tuber spp.) (PDF)”. 特許庁. 2016年10月9日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年10月12日閲覧。
  20. ^ a b 大和弥寿、国内トピックス」『日本食品保蔵科学会誌』 2001年 27巻 3号 p.165-167, doi:10.5891/jafps.27.165
  21. ^ Giant truffle sets record price BBC News. Sunday, 2 December 2007
  22. ^ 世界一高価な2300万円の白トリュフ、香港の晩さん会に AFP通信 2007年11月15日


「トリュフ」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

トリュフのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



トリュフのページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのトリュフ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2022 GRAS Group, Inc.RSS