トゥーランドット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/09 13:42 UTC 版)
配役について
トゥーランドット
題名役のトゥーランドットには、分厚い管弦楽の響きや合唱をも圧するような超人的な高音域を長時間にわたって歌い続けることが要求され、『ノルマ』の題名役と並んで、ソプラノ・ドランマーティコ最大の難役の一つと考えられている。しばしばワグネリアン・ソプラノが担い、イタリアオペラのヒロインとしては珍しくドイツ人歌手の活躍が目立つキャラクターでもある。同役を歌って著名であった歌手には、1920年代のマリア・イェリッツァ、30年代のエヴァ・ターナー、ジーナ・チーニャ、60年代のビルギット・ニルソン、80年代のエヴァ・マルトンがいる。また、デビュー直後、1940年代後半の短い時期にはマリア・カラスも同役で知られていた。異色の例としては同役を歌った3年後にリューを録音したカーティア・リッチャレッリで、これはカラヤンが本来リュー向きの彼女を戦略的に同役に起用したためであった。逆にモンセラート・カバリエはリューの5年後に同役を録音している。
カラフ
カラフ役にも、「ハイC」といわれる高音域を含めて、トゥーランドットと声量・声質の両面で渡り合うだけの力強さが求められる。リリコ・スピント・テノールが担う。同役の代表的なテノール歌手としては、1930年代のジャコモ・ラウリ=ヴォルピ(彼もカラフ役初演の有力候補だった)、40年代後半ではマリオ・デル=モナコ、50年代後半から60年代後半にかけてのフランコ・コレッリなどが挙げられる。
リュー
これも劇的な表現力、演技力がソプラノ・リリコに要求され、著名なアリア2曲を含む難役である。
なお、王子カラフに献身的に尽くすも、自殺することでしかその愛を表現できなかった召使リューに、プッチーニとの不貞の嫌疑から服毒自殺(1909年)した実在の女中、ドーリア・マンフレーディの存在を重ね合わせる分析がしばしば行われる(『西部の娘』参照)。しかし、恋愛も報われず若くして死に至る、というソプラノ役はドーリア事件以前も『ラ・ボエーム』でのミミ、『蝶々夫人』でプッチーニが得意とした描き方であり、このリューだけがとりたてて特別なキャラクターとは言えない、との考えもある。
アルトゥーム
テノールによって歌われる皇帝アルトゥーム役は、通常演出では舞台中央の玉座に座っているだけで、音楽的には大した歌詞もなく、ドラマ展開上も重要性には乏しい。しかしこの役はしばしば「往年の名テノール」が舞台生活の最後に演じる役として用いられる。皇帝役によってテノールの花道を飾った名歌手としては、初演時にカラフ役候補の一人だったジョヴァンニ・マルティネッリ(1967年、於シアトル、当時82歳)、ジュゼッペ・ディ・ステファーノ(1992年、於ローマ、当時71歳)などがいるが、最高齢はユグ・キュエノー(1987年、於メトロポリタン歌劇場)で当時84歳の記録がある。
ピン、パン、ポン
宮廷の三大臣、ピン、パン、ポンは、イタリアの伝統的なコンメディア・デッラルテのスタイルに基づいている。コンメディア・デッラルテでは、アルレッキーノ、コロンビーナ、パンタローネといった仮面を付けた固定的キャラクターが簡単な筋書きに基づいて即興的に演じるが、これを受けてピン、パン、ポンはしばしば顔を仮面や白塗りで隠して登場する。
また、ピン、パン、ポンによる第2幕の三重唱では、バリトンが二人のテノールの上声部を歌うという変則的な扱いが見られ、第1幕でも奇妙な声を張り上げる場面がある。これらは、宦官を意識したものとも考えられている。
- ^ The Classic Collection 第103巻(DeAGOSTINI、1998)
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
- ^ 中央歌剧院歌剧音乐会《图兰朵》明晚上演 - 中央歌剧院。2019年2月5日閲覧。
- ^ Maguire, Janet (1990), “Puccini's Version of the Duet and Final Scene of "Turandot"”, Musical Quarterly 74 (3): 319-359
- ^ 国家大剧院版本《图兰朵》下周将第九次上演 国际著名歌唱家加盟 - 国家大剧院。2019年2月5日閲覧。
- ^ Chinese Composer Gives 'Turandot' a Fresh Finale - npr.org。2019年2月5日閲覧。
- ^ 祝祭音楽劇「トゥーランドット」のプログラム
- ^ 金メダル効果!荒川静香の使用曲が着うたダウンロード急上昇
- ^ “上野駅山手線ホームの発車ベルを期間限定で発車メロディに変更します”. 東日本旅客鉄道東京支社. 2019年8月23日閲覧。
- ^ “上野駅発車メロディを制作”. スイッチオフィシャルサイト. スイッチ. 2019年8月23日閲覧。
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