ダルムシュタット 文化と見所

ダルムシュタット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/27 16:25 UTC 版)

文化と見所

ダルムシュタット・ヘッセン州立劇場

演劇

ダルムシュタットには多くの劇場がある。最も有名なものは近年改装された州立劇場で、大ホール、小ホール、カンマーシュピールを有している。他には「ダルムシュタットのブールバール劇場、子供劇場」と呼ばれるTAPのような小さな劇場がある。ハルプノイン劇場ではキャバレー劇『カバラッツ』から音楽グループの演奏会まで様々なステージが開催されている。ベスンゲン区には子供劇場「キケリキ」があり、旧ベスンゲン体育館では人形劇団「コメディ・ホール」が様々なプログラムを上演している。

エルンスト・エリアス・ニーベルガルによってダルムシュタット方言で書かれた『ダッテリヒ』は、大酒飲みの元財務官吏という「ユニークな物乞い」ダッテリヒの生涯を描いた作品で、疑いなく、ダルムシュタット地方文化の重要な作品である。

博物館

ダルムシュタット・ヘッセン州立博物館

ヘッセン州立博物館はメッセル採掘場の出土品やヨーゼフ・ボイスの作品群をはじめ膨大な常設展示品を所蔵している。現在は包括的な改装工事を行っているため閉鎖中である(2011年までの予定)。

エルンスト・ルートヴィヒ邸

ユーゲントシュティールの重要な博物館がマチルダの丘のエルンスト・ルートヴィヒ邸内にある芸術家コロニー博物館である。この博物館は1899年から1914年までのダルムシュタット芸術家コロニーの歴史やその作品を展示している。作品は日々の暮らしの中でのスケッチや、ユーゲントシュティールの芸術作品である。ここ以外にもヘッセン州立博物館の1階にヨーゼフ・マリア・オルブリヒペーター・ベーレンスアンリ・ヴァン・デ・ヴェルデといった作家によるユーゲントシュティール様式の装飾品、家財道具、家具調度品などが展示されている。

しかしマチルダの丘にあるのは過去の様式だけではない。デザイン・ハウス・ダルムシュタットでは、ここに拠点を構えるデザインセンター・ヘッセン研究所e.V.とINTEF(ノイエ・テクニーシェ・フォルム研究所)が交互に展示を行っている。上階には、ブラウンのデザイナーであるディーター・ラムスの常設展示が行われている。

ダルムシュタットの聖母

ダルムシュタットは、かつて首都として繁栄した。城の鐘楼にある城館博物館では250年以上の宮廷の暮らしを展望できる。最も名高い展示品は、かつてフランクフルトの納屋に飾られていたハンス・ホルバインの『ダルムシュタットの聖母』である。領主庭園の端にヘッセン大公の時期コレクションを収蔵しているプリンツ・ゲオルク宮殿が周囲の環境と調和して建っている。このコレクションには、世界最大のケルスターバッハ磁器コレクションなど比類のないものが含まれている。ドイツでも数少ない現存するルネサンス様式の狩りの城であるクラニヒシュタイン城には、現在狩猟博物館があり、狩猟用の武器や道具、調度品、および狩りの情景を描いた絵画が展示されている。

マチルダの丘催事場と結婚記念塔(ホッホツァイト塔)

ダルムシュタット芸術ホールでは年に4 - 5回全国レベルあるいは国際レベルの展示会が開催されている。重点は現代美術である。結婚記念塔(ホッホツァイト塔)の近くにあるマチルダの丘催事場でも様々な催しが開催されている。サイベルナリウム (Cybernarium) は、600m2の敷地で仮想現実拡張現実に関する展示を行っている。

技術史もダルムシュタットでは様々な形で活きている。ダルムシュタット=クラニヒシュタイン鉄道博物館は、機関車、車両、その他の歴史的な鉄道関連の品を現実に即した環境で展示している。工業文化館では、印刷業や活字鋳造の機器展示や昔の書籍製作技術の紹介がなされている。マチルダの丘にある「ノイエ・テクニーシェ・フォルム研究所 — ブラウン・デザイン・コレクション」では、1955年からの工業デザインが展示されている。

ダルムシュタットの歴史は様々な小さな博物館で活発に展示されている。この街の最後に遺った防衛塔であるヒンケルス塔に入っている旧市街博物館は、1930年代の旧市街を描き出す印象的な模型展示で第二次世界大戦によって破壊されたダルムシュタット旧市街を偲ばせる。ヴィックスハウゼ区の地区博物館は、18世紀から19世紀の古い調度や家具を展示するフランケン風の木組み建築による郷土博物館である。

この他にもセンテナリウムやダルムシュタット芸術資料館などがある。

音楽

1957年のダルムシュタット夏季現代音楽講習会で講義を行うカールハインツ・シュトックハウゼン

ダルムシュタットには、音響芸術アカデミー、ダルムシュタット国際音楽研究所 (IMD) やダルムシュタット・ジャズ研究所がある。ダルムシュタット夏季現代音楽講習会やダルムシュタット・ジャズフォーラムといった催しが長年開催されており、この街は音楽家や音楽研究者らにとって重要な国際的な出会いの場となっている。

ダルムシュタットには、ダルムシュタット・バッハ合唱団、ダルムシュタット・カントライ、コンツェルト・コーラス・ダルムシュタットをはじめいくつもの有名な合唱団がある。

文学

文化都市ダルムシュタットは、地元の文学研究所や文学協会に多くの賞が与えられていることからも明らかなように、文学領域でも並はずれて強い発信力を持っている。

マチルダの丘に本部を構える「言語と文学のドイツ・アカデミー」はドイツ文学とドイツ語の保護や振興に努めている。この団体は、毎年、最も重要なドイツ文学賞であるゲオルク・ビュヒナー賞を授与している。これに加えて、ダルムシュタット市は「文学の3月」という催しで、若い作家を対象にした詩のコンテストを行い、レオンス=ウント=レーナ賞を授与している。さらに市は3年ごとに、ドイツの文筆家リカルダ・フーフを記念したリカルダ・フーフ賞を授与している。文学館は多くのダルムシュタットの文学団体や文芸運動の中心地と見なされており、ここでは定期的に朗読会が開催されている。ドイツ文学基金は、クラニヒシュタイナー賞をはじめとする文学賞や奨学金を授与することでドイツ現代文学を奨励している。

作家連盟の P.E.N.-ツェントルム・ドイチュラントもダルムシュタットに本部を置いている。さらにはドイツの書籍を他国に普及させることを目的としたマルティン・ベハイム協会もダルムシュタットにある。

ダルムシュタット大学・州立図書館は、現在、ダルムシュタット工科大学の中央図書館として位置づけられている。これに加えて、南ヘッセン地域における文学・情報提供の機能も併せ持っている。この他にはダルムシュタット市立図書館が、住民の教育・文化施設の役割を担っている。

建築

建築物は第二次世界大戦中の戦闘行為によって甚大な被害を受け、中心部は完全に破壊された。これらは戦後にわずかな例外を除いて芸術史上価値の高い歴史的建造物に至るまで撤去された。取り壊された歴史的建造物には、貴族や市民の館、カジノ、小劇場、身分制議会の議事堂、兵舎、新旧の宮殿などが含まれていた。遺された建築の再建は、簡素化された形で内部を近代的に改変して行われた[10]

中心街

中心街には、旧市庁舎、ルートヴィヒ記念碑のあるルイーゼ広場、マルクト広場に面した城館、ルートヴィヒ教会(カトリックの中心的教会)、パウルス教会、市教会(プロテスタントの中心的教会)、ヴァイサー塔(白い塔)、旧ラテン語学校、会議センター「ダルムシュタッティウム」がある。

マチルダの丘

ダルムシュタットの
マチルダの丘
ドイツ
ダルムシュタットの象徴的建造物である、マチルダの丘の結婚記念塔(ホッホツァイト塔)
英名 Mathildenhöhe Darmstadt
仏名 La Mathildenhöhe à Darmstadt
面積 5.37 ha
(緩衝地域 76.54 ha)
登録区分 文化遺産
登録基準 (2), (4)
登録年 2021年
公式サイト 世界遺産センター(英語)
使用方法表示
マチルダの丘のロシア正教会聖堂
  • ダルムシュタットの象徴的建造物である結婚記念塔(ホッホツァイト塔)
  • ロシア正教会聖堂
  • 芸術家コロニー

ベスンゲン区

オランジュリ
  • オランジュリ
  • ルートヴィヒスヘーエ: ダルムシュタット南部の山(海抜246m)高さ28mの展望台が建っており、その隣にダルムシュタット市民天文台がある。

クラニヒシュタイン区およびアルハイルゲン区

クラニヒシュタインの狩りの城
  • クラニヒシュタインの狩りの城

その他

  • ヴァルトシュピラーレ: フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーによって建設された複合住宅
  • ヴァルトフリートホーフ: 市の西部にある霊園
  • オーバーフェルト御料地
  • ユーゲントシュティールバート: プール。1909年に「フォルクスバート」として開業し、後に「ツェントラルバート」と改名された。2005年から2008年に徹底した改修と文化財保護のための補修が行われ、2008年から「ユゲントシュティールバート」として再開された[11]
  • ドンマースベルク(海抜263m)のビスマルク塔

公園

  • 領主庭園
  • ローゼンヘーエ
  • プリンツ・エミール庭園
  • 北部市民公園
  • オランジュリー庭園
  • ヴォルフスケールシャー公園

スポーツ

ダルムシュタットの最も有名なスポーツクラブは SVダルムシュタット98である。このクラブのチームは、サッカー・ブンデスリーガ1部で2年間プレイした。このチームは、シュタディオン・アム・ベレンファルトーアやHEAGシュタディオン(人工芝)でホームゲームを開催している。この他のダルムシュタットの有名なスポーツクラブには、水泳トライアスロンで多くのドイツ・チャンピオンを輩出しているDSW 1912 ダルムシュタットや、ヘッセン州で最初のアメリカン・フットボール・チームの一つであるダルムシュタット・ダイアモンズなどがある。また、RSCダルムシュタットは、南ドイツで唯一のトップクラスのローラーホッケー・チームを有している。

ドイツ・スポーツ連盟に加盟する2つの競技連盟、すなわちドイツ陸上競技連盟とドイツ近代五種競技連盟がダルムシュタットに本部を置いている。

年中行事

  • 4月: メス広場での春のメッセ
  • 5月: シュロスグラーベンフェスト — ダルムシュタット城周辺で40万人を超える来訪者を迎えて行われるヘッセン最大の市街地での野外コンサート
  • 6月: ジャスト・フォー・ファン — 国際的なパフォーマーやビルボーダーが参加してダルムシュタットの路上や広場で開催される大道芸の祭典
  • 7月: 「ハイナーフェスト」約70万人が訪れる、南部ヘッセン最大の市民祭でドイツでも2番目に大きな市街祭
  • 7月 - 8月: ダルムシュタット夏季現代音楽講習会として世界的に知られるクライニヒシュタインの現代音楽講習会
  • 7月 - 8月: ダルムシュタットの宮廷祝祭演劇祭
  • 8月: ヘッセンショー
  • 9月: ベスンゲン区でのラッピング・キルメス[訳注 1]とリーガー広場でのマルティン・キルメス
  • 9月: メス広場での秋のメッセ
  • 9月: ダルムシュタット市内の「ミューズの長い夜」
  • 11月/12月: マルクト広場でのクリスマス市

生粋のダルムシュタット住民を「ハイナー」という。ハイナーフェストはこれに由来する。またベスンゲンのキルメスの名称「ラッピング」(Lapping) は、ベスンゲン住民のことで、これはフランス語の lapin(ウサギ)の訛ったものである。エーバーシュタット区の住民は「ガーゼヘンカー」(ヤギ殺し)、アルハイルゲンの住民を「反抗屋」(Mucker、動詞のvermucken(反抗する)から転じたものである)という[12]


  1. ^ キルメス (ドイツ語: Kirmes) は教会開基祭を起源とする民俗祭である。
  1. ^ Hessisches Statistisches Landesamt: Bevölkerung in Hessen am 31.12.2021 nach Gemeinden
  2. ^ Max Mangold, ed (2005). Duden, Aussprachewörterbuch (6 ed.). Dudenverl. p. 261. ISBN 978-3-411-04066-7 
  3. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説”. コトバンク. 2018年7月8日閲覧。
  4. ^ Wissenschaftsstadt、この称号は1997年にヘッセン州内務省によって授与された
  5. ^ http://www.dwd.de/bvbw/appmanager/bvbw/dwdwwwDesktop?_nfpb=true&_pageLabel=dwdwww_start&_nfls=false
  6. ^ Mathildenhöhe Darmstadt” (英語). UNESCO World Heritage Centre. 2023年5月18日閲覧。
  7. ^ Dieter Berger: Duden, geographische Namen in Deutschland: Herkunft und Bedeutung der Namen von Ländern, Städten, Bergen und Gewässern. Mannheim/Leipzig/Wien/Zürich: Dudenverlag, 1993 (ISBN 3-411-06251-7), S.75.
  8. ^ 文化財保護と文化史 2002年2月
  9. ^ Endgültiges Ergebnis Der Gemeindewahl am 14. März 2021 - Darmstadt, Wissenschaftsstadt”. 2021年7月31日閲覧。
  10. ^ Georg Dehio (Hrsg.): Handbuch der deutschen Kunstdenkmäler, Band Hessen. 2. Aufl. München 1982, S. 141.
  11. ^ ユーゲントシュティールバートの歴史 (2008年3月19日に閲覧)
  12. ^ Heiner & Co: Kultbegriffe rund um Darmstadt bei vorhang-auf.com
  13. ^ ADFC: Fahrradklimatest 2005
  14. ^ Ergebnisse_Fahrradklimatest_2005.pdf Seite 4
  15. ^ http://www.tu-darmstadt.de/universitaet/profil_1/zahlenundfakten/index.de.jsp
  16. ^ シュタルケンブルク兵舎 2005年9月1日付けエコー・オンライン
  17. ^ アメリカ軍兵力 – 削減, FAZ, 2008年8月5日






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