スピーカー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 03:54 UTC 版)
音質の指標
オーディオ用のスピーカーは「周波数特性」「歪率」「過渡特性」「指向特性」などを改善するために様々な工夫がなされており、音質の良し悪しの指標として使われる。
- 周波数特性 - 人間が可聴域の音程を全域再生でき、かつどの周波数でも均一な音圧が得られることが求められる。
- 歪率 - スピーカーに入力された音声信号の波形に相似する音声波が出力され、余分な音が加わらないことが求められる。
- 過渡特性 - スピーカーに複数の周波数の音が混じって入力された際、位相が正確であること(それらの音に時間的ズレが生じないこと)が求められる。
- 指向性 - スピーカーから、全方向に均等な音圧が放射されることが求められる。
- 音の好み - 人間の好みに基づく音を追求したもの。フラットでない周波数特性にする、エンクロージャーを共鳴させる、歪を増やすなど、様々な方法で音の色づけを行う。
歪率
スピーカーは、グラム単位の質量を有する振動板を動かすという構造上、歪みはどうしても大きくなる。適切に設計されたスピーカーの中には、可聴域(100Hz以上)の歪率が0.5%を切るものも存在するが、それでも他の機器(CDプレーヤー、アンプなど)の歪率が0.01%を切っていることを考えると2桁以上大きな歪率である。
歪みを発生させる非線形部品としてはダンパーやエッジ、そして設計が悪い磁気回路などが挙げられる。これらの非線形の影響が顕著になるのは振幅が大きい低音域のときである。等ラウドネス曲線が示しているがごとく、ヒトの聴覚は低音域の感度が鈍い。そのためたとえ低音・中音・高音がバランスよく鳴っているように聞こえる楽曲であっても、音響エネルギー分布は低音域に偏りがちであり、そのエネルギー分布を再現(再生)しようとするスピーカーは低音域で大きくストロークする。大きいストロークは振動系支持部材の非線形領域に踏み込み易い。また、低音用の振動板は重いため慣性による逆起電力(制動力)を発生させ、これも歪みの原因となる。このためスピーカーの歪みは低音域で発生しやすい。
指向性
オーディオ用スピーカーが広い指向性を理想としているのに対し、指向性を絞って特定の方向に大きな音を伝えたい場面も存在する。たとえば学校教育現場のアナウンス、交通機関の案内放送、街宣車などである。
理論上は指向性を絞るには振動板を大きくすればよいが、直径数m以上ものが必要となり非現実的である。そこで、ホーンと呼ばれる円錐形に広がる管を取り付けたスピーカーが、上記用途の拡声器として使われている。
周波数が高ければ指向性が増すため、超音波を小さな振動部から指向性の強いビーム状で送り出し、音の歪みを利用して可聴音として人間が聞き取れるようにしたパラメトリック・スピーカーというものもある。[4]
注釈
- ^ 英語ではloudspeakerのほうが正式の呼称である。「speaker」では基本的には「話す人」とか「演説者」という意味になってしまい、誤解を受けやすいので、装置を指す場合は英語ではloudspeakerと呼ぶことを好む。装置を「speaker」と呼ぶのは、あくまで話す側にとっても聞く側にとっても、装置を指しているとはっきり分かっている時に限って使う、省略的な呼称である。
- ^ (大橋力 2008)は、対象者に高音を聴かせ、その時の脳波を測定する事によって、当人が音を聴いたと自覚が無くとも、間違い無く音を聴いている事を実証した。
出典
- ^ 大辞泉
- ^ Colin Barras (2008年10月31日). “Hot nanotube sheets produce music on demand”. New Scientist. 2011年2月1日閲覧。
- ^ a b 石井大策「スピーカ振動板材料 : 主要材料と技術動向」『日本音響学会誌』第66巻第12号、日本音響学会、2010年、616-621頁、doi:10.20697/jasj.66.12_616、ISSN 0369-4232、NAID 110007989165。
- ^ 日本音響学会 1996.
- ^ http://www.manabi.pref.gunma.jp/bunrui/gakupro/08000392/
- ^ “DIATONE70周年 スペシャルサイト 特別コラム Vol.02「オーディオ再生の現在 ハイレゾデータが変えたものと変わらないもの」(貝山知弘)”. 三菱電機 (2016年11月). 2016年11月12日閲覧。
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