ステイルメイト 将棋におけるステイルメイト

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ステイルメイト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/13 08:42 UTC 版)

将棋におけるステイルメイト

本将棋

図1 将棋のステイルメイトの例
△持ち駒 なし
987654321 
      
         
        
         
         
         
         
         
         
▲持ち駒
飛角2金4銀3桂4香4歩18
▲3一龍まで
図2 将棋のステイルメイトの例2

第24回コンピュータ将棋選手権1次予選
libshogi - カツ丼将棋[3]

△カツ丼将棋 持ち駒 なし
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▲libshogi 持ち駒 金銀3桂2香2歩12

163手目▲1三香成まで
後手の反則負け[3]
図3 将棋のステイルメイトの例3
△持ち駒 なし
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▲持ち駒 歩9
△5九玉まで

本将棋でも理論上、ステイルメイトは存在する。しかし本将棋の実戦では、ステイルメイトが発生するケースは皆無に近い[注釈 1]。そのため、ルール上ではステイルメイトについての規定はされていない。ステイルメイトが発生しにくい理由は次の通り。

  1. 本将棋では取った駒を自らの持ち駒として使えるので、「合法手がない」という状態が極めて起こりにくい。
  2. 強引に想定した場合、攻め手と受け手の戦力差が通常では考えられないほど開いてしまう。
  3. つまりステイルメイトになるずっと前の段階で、ほとんど勝負は決着しているのである。
  4. ステイルメイトの状況まで対局を続けるのは、攻め手・受け手ともに好ましくなく、礼を欠いた行為とみなされている。

図1は、将棋におけるステイルメイトの一例である。この例では、竜王は銀将を取ることはできても王将を取ることはできないため、この時点ではまだ詰みではないが、王将は前・右斜め前ともに動かすと王将を玉将に取られるため不可、銀将はルール上真横に動けず、前ないし斜め前に動かすと王将を動かさないことになり、王将を竜王に取られるため不可。注目すべき点は先手の持ち駒で、王将と銀1枚以外の駒が、すなわち全40枚の駒のうち38枚が先手の持ち物となっている(ちなみに敵玉を除く全ての駒(平手の場合39枚)を自分のものにすることを「全駒(ぜんごま)」という)。もし後手の駒台に歩が1枚でもあれば、それはまだステイルメイトの状態ではない。

図1以外の形でも、将棋のステイルメイトは一様に全駒またはそれに近い大差がついた物となっている。将棋の実戦でステイルメイトが発生するのは、圧倒的に優勢な攻め手(図1では先手)が、終盤でわざと詰めに行かない場合などに限られる。また、詰め方をまだ理解していない初心者が、勝勢にもかかわらず詰みを見付けられないために、結果的にステイルメイトを成立させることがある[4]。同様に、コンピュータ将棋世界コンピュータ将棋選手権でも、詰みが見付けられない・適切な投了ができないといった理由で、ステイルメイトになるまで対局が続行した例がある(図2参照)[3]。当然対局も長引き、対局開始からステイルメイトまでの手数は数百手におよぶこともある。

将棋でステイルメイトが発生しうるような、全駒またはそれに近い圧倒的戦力差の場合は、実戦レベルでは逆転の可能性はゼロと断言してよく、仮にそのような大差を逆転できたとしても、受け手(図1や図2では後手)はチェスのような積極的な戦略を立てることができない。受け手にできることといえば、万に一つの偶然を祈りながら投了しないで対局を続けることくらいである。

本将棋でステイルメイトが起きた場合は、パスができないルールから慣習的に詰みと同様に受け手の負け(つまり図1や図2では後手の負け)とされている。明確にルールとして定められていない理由は、そこまで長びいて大差のついた内容の対局を本将棋は想定していないからと言えよう。

本将棋では勝敗の決着は、原則「詰み」または「投了」となっている。一般的な慣習としては、攻め手はこのような大差がつく前に相手を詰めるべきで、受け手はもっと前の適切な段階で投了すべきとされている(前述の理由4.に該当し、ステイルメイトが発生しうるような大差がついていながら対局を続行するのは、実際の駒を使う将棋・ネット将棋の場合ともに、双方ともに礼を欠く行為と取られる)。

なお、図3も実戦ではまずありえない局面であるが、この図では先手が後手玉以外の39枚を持っているにもかかわらずステイルメイト状態となっている。この例で先手は圧倒的に優勢ではあるが、敵陣の自駒を動かそうにも歩が邪魔で、先手の盤上の駒が全て1 - 5段目でがんじがらめになっている。また先手の持ち駒は全て歩であり、どこに打っても二歩になるため使うことができず、先手は39枚あっても指すことができない状態となっている。さらに先手玉は4段目にあって動くことができず、入玉宣言法による勝ちを得るための要件を満たすこともできない。前述の慣習によれば先手の負けとなり、後手が「玉1枚だけで勝ち」となる。

持ち駒制度のない将棋類

中将棋大将棋などの持ち駒制度のない将棋類(主に古将棋の多く)では相手の駒を取っても持ち駒として使う事ができないため、ステイルメイトが成立する事がある。

中将棋では、ステイルメイトになった方が負けと、明確にルールとして定められている。持ち駒制度のない他の将棋でもそれに準ずるものと思われる。

その他の将棋

フェアリー詰将棋では、自玉をステイルメイトの状態にすることを目的とした物も存在している。「ばか自殺ステイルメイト」または「協力自殺ステイルメイト」などと呼ばれている。


注釈

  1. ^ 少なくとも、プロの公式戦の記録では皆無である。

出典

  1. ^ a b History of Chess by H. J. R. Murray (Dec 1985)
  2. ^ 渡井美代子 『最新図解チェス』日東書院、52頁。ISBN 4-528-00853-X 
  3. ^ a b c 第24回世界コンピュータ将棋選手権 libshogi - カツ丼将棋 (CSA標準棋譜ファイル形式の棋譜)” (2014年5月3日). 2022年7月18日閲覧。 109手目の時点で後手のカツ丼将棋は裸玉となっていたが、先手のlibshogiが後手玉を詰ませることができず応手が50手以上続いた。163手目でステイルメイトになり後手の反則負け。
  4. ^ 羽生善治監修、上地隆蔵構成・文 『羽生善治のみるみる強くなる将棋入門 終盤の勝ち方』池田書店、2010年6月25日発行、p.15


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