スカトロジー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/27 23:50 UTC 版)
スカトロジーと文化芸術
文学や美術では「スカトロジー的表現」がしばしば見られる。フランソワ・ラブレーやマルキ・ド・サドなどの作品には糞や尿がきわめてよく現れ、それらが重要なモチーフになっているし[2]、漫画や絵本にはとりいかずよしの「トイレット博士」や五味太郎の「みんなうんち」など糞尿そのものやスカトロジー的表現を中心にした作品が少なくない。
また既存の価値観や形式の破壊を極度に目的化するために過激化しやすい前衛美術には、糞を模したり糞そのものを加工した作品、糞を用いたパフォーマンスがよく登場する。人糞そのものを用いたもっとも有名な作品はピエロ・マンゾーニの「芸術家の糞」である。これはマンゾーニ自身の糞を「30グラム、自然保存」とラベルが貼られた金属製の缶詰に封印し、その日の30グラムの金の相場で価格をつけたもの。また日本でも、森山安英が糞をマッチ箱につめて道行く人に配るというパフォーマンスをしたことで知られている。
文化人類学・民俗学とスカトロジー
糞尿の処理に関しては、様々な文化圏において、多種多様な方法が存在する。例えば、現代の日本においては、糞尿は水洗便所をもって社会から隔離され、人目に触れないように処分される地域も多いが、一部地域では汚水升に溜めた物を専用の車両を使って回収し、処分場に運搬している。また各家庭で浄化槽を配置し、それらの設備を使って各戸で細菌により処理させているところも多い。しかし歴史的には、屎尿は貴重な農耕肥料としての資源として扱われ、江戸時代においては金銭で売買(金肥)されることもあった。屎尿にも等級があり、最上等は武家屋敷のもの、最下等は牢屋のものであったという。
このような糞尿処理のあり方は、経済発展のバロメーターとしても捉えることが出来るが、地域の気候風土によっては、他地域で取られている処分方法が用いられないこともあり、それらの扱いにおける差異も含めて、便所等の設備を、地域性に絡めて研究する者も多い。特に便所には地域性が色濃く出ることもある。
考古学の分野ではトイレ遺構から、そこに住んでいた者の生活様態や健康状態などを推測することが可能な情報が得られている。
著名なスカトロジスト
- ジークムント・フロイト
- 近代心理学の父とされるフロイトは、人間精神の発達や人格形成の段階において、排泄行為が欠くことの出来ない要素であるとした。肛門期と呼ばれるこの期間には、排泄行為のセルフコントロールにより、欲求の抑制とさらなる快感の増大を通して自己抑制の学習、さらには性欲の萌芽が見られるとしている。
- ^ "scatology, n.". OED Online. March 2015. Oxford University Press. (accessed April 13, 2015).
- ^ 例えばミハイル・バフチンが、ラブレー作品におけるうんちのイメージを分析している(「フランソワ・ラブレーの作品と中世ルネッサンスの民衆文化」川端香男里訳、せりか書房、1980年)
- 1 スカトロジーとは
- 2 スカトロジーの概要
- 3 生物学とスカトロジー
- 4 スカトロジーと文化芸術
- 5 参考書籍
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