サボイ・トラッフル 背景・曲の構成

サボイ・トラッフル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/24 07:30 UTC 版)

背景・曲の構成

ジョージ・ハリスンは、1968年9月に「サボイ・トラッフル」を書いた[4]。同月21日に発行された『NME』誌に掲載された記事で、ハリスンは「『おい、あれは何なんだ?あれはどういう意味なんだ?』と聞いてくる連中には、少しばかりウンザリしていて、何の意味もない曲を書こうと思っている」と語っている[5]。ハリスンは、1965年に発表された「ノルウェーの森」でシタールを演奏したのをきっかけに、1966年よりラヴィ・シャンカルのもとでシタールについて学んでいたが、1968年に入ってからは再びギターを主体とした楽曲を書くようになっていた[6][7][注釈 1]。これについて、『NME』誌の記事でハリスンは「僕は再びロッカーになった」と宣言し、「もう『神秘的なビートル・ジョージ』のイメージに拘泥するつもりはない。未だに万事が『ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー』だけど、もうそっち方面に向かうつもりはない。なぜなら今の僕はロックンロール・スターになろうとしてるんだ!」と語っている[12][13][5]

様々な中身の入ったチョコレート菓子。ロントリー・マッキントッシュ社のこのような菓子のセットが歌詞の元になった。

「サボイ・トラッフル」のキーは、基本的にEマイナーに設定されているが[14]同主調Eメジャー)に何度も転調を繰り返し[15]Gメジャーで一時的に終止する。全体的に4分の4拍子で[15]、主にソウルの要素を持っている[1]

ヴァースの歌詞では、「Creme tangerine(クリーム・タンジェリン)」、「Montelimart(モンテリマ)」、「Ginger sling(ジンジャー・スリング)」など、チョコレートの名前が含まれており[16]、歌詞に登場する「Good news(グッド・ニューズ)」もイギリスの菓子メーカー、ロントリー・マッキントッシュ社のチョコレートの詰め合わせの名前で 、歌詞の大部分はグッド・ニューズの箱の蓋に記載されている名前を流用している[17][18][5]。歌詞について、ハリスンは「エリックとつるんでいた時期に書いた笑える曲。当時の彼は虫歯がたくさんあって、本当なら歯医者に行かなきゃならなかった。いつも歯が痛いと言っているのに、たらふくチョコレートを食べていた。とにかく我慢できなくて、チョコレートを見ると食べずにはいられなかったんだ」と語っている[19][5]

ビートルズの広報担当であったデレク・テイラー英語版も作詞を手伝っており[19]、2回目のブリッジの「You know that what you eat you are(知ってのとおり、食は人なり)」というフレーズは、テイラーによるアイデアによるもので[20]、テイラーの友人が制作した映画の題名(You are what you eat)に由来している。[21]。なお、同じセクションでは、「We all know Obla-dibla da / But can you show me, where you are?...(みんなオブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダを知っているけど、教えてくれないか、君はどこにいる?)」というマッカートニー作の「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」への言及が見られる[22][21]。音楽ジャーナリストのロバート・フォンテノットは、ジョン・レノンと同様にハリスンも同作を嫌っていることから、「マッカートニーの歌に対する、ハリスンなりの意見」と見ている[23]


注釈

  1. ^ 1968年6月にラヴィ・シャンカルはハリスンに「自分のルーツを探せ」と伝え[8]、その後ハリスンはニューヨークでクラプトンとジミ・ヘンドリックスと出会い[9]、これをきっかけに再びギターを主体としたロック路線に戻ることを決めたとのこと[10][11]
  2. ^ バリトン・サクソフォーン3本とテナー・サクソフォーン3本の計6本[17]

出典

  1. ^ a b Ingham 2006, pp. 52–53.
  2. ^ Thompson, Dave (25 January 2002). “The Music of George Harrison: An album-by-album guide”. Goldmine: 15. 
  3. ^ Quantick 2002, p. 148.
  4. ^ Winn 2009, p. 229.
  5. ^ a b c d e f g h i j k White Album 2018, p. 30.
  6. ^ Leng 2006, pp. 34, 37–38.
  7. ^ Lavezzoli 2006, p. 185.
  8. ^ Lavezzoli 2006, pp. 184–185.
  9. ^ Miles 2001, pp. 300–301.
  10. ^ Leng 2006, p. 36.
  11. ^ Scorsese 2011, DVD2: between 0:00:59 and 0:01:55.
  12. ^ Smith, Alan (28 September 1968). “George Harrison Is a Rocker Again! (Part 2)”. NME: 3, 16. 
  13. ^ Clayson 2003, pp. 260–261, 473.
  14. ^ MacDonald 1998, p. 453.
  15. ^ a b Pollack, Alan W. (1998年). “Notes on 'Savoy Truffle'”. Soundscapes. 2020年9月26日閲覧。
  16. ^ Everett 1999, p. 204.
  17. ^ a b c MacDonald 1998, p. 281.
  18. ^ a b Guesdon & Margotin 2013, p. 508.
  19. ^ a b Harrison 2002, p. 128.
  20. ^ Williamson, Nigel (February 2002). “Only a Northern song”. Uncut: 61. 
  21. ^ a b c d 真実のビートルズ・サウンド[完全版]『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』全曲解説”. ギター・マガジン. リットーミュージック. 2020年11月28日閲覧。
  22. ^ Womack 2014, p. 684.
  23. ^ Fontenot, Robert. “The Beatles Songs: 'Ob-La-Di, Ob-La-Da' - The history of this classic Beatles song”. oldies.about.com. 2013年1月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月26日閲覧。
  24. ^ a b Lewisohn 2005, p. 158.
  25. ^ a b Lewisohn 2005, p. 161.
  26. ^ White Album 2018, pp. 30–31.
  27. ^ Scorsese 2011, DVD1: between 1:19:58 and 1:20:20.
  28. ^ Guesdon & Margotin 2013, pp. 508–509.
  29. ^ Lewisohn 2005, p. 162.
  30. ^ Unterberger 2006, p. 169.
  31. ^ a b Winn 2009, p. 220.
  32. ^ Miles 2001, p. 314.
  33. ^ Castleman & Podrazik 1976, pp. 70–71.
  34. ^ Riley 2002, pp. 283–284.
  35. ^ Schaffner 1978, p. 115.
  36. ^ Erlewine, Stephen Thomas. George Harrison | History & Biography - オールミュージック. 2020年9月26日閲覧。
  37. ^ Winn 2008, p. 363.
  38. ^ Erlewine, Stephen Thomas. Love - The Beatles | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月26日閲覧。
  39. ^ The Beatles: Love – PopMatters Music Review”. PopMatters (2006年12月15日). 2020年9月26日閲覧。
  40. ^ White Album 2018, p. 31.
  41. ^ Walsh, Alan (9 November 1968). “The Beatles The Beatles (Apple)”. Melody Maker: 5. 
  42. ^ Sutherland, Steve, ed (2003). NME Originals: Lennon. London: IPC Ignite!. p. 53 
  43. ^ MacDonald 1998, pp. 281–282.
  44. ^ Miles, Barry (1968年11月29日). “Multi-Purpose Beatles Music”. International Times: p. 10 
  45. ^ Norman 1996, p. 341.
  46. ^ Riegel, Richard (December 1996). “We Can Work It Out: The Ten Most Over- & Underrated Beatles Songs”. Real Groove. http://www.rocksbackpages.com/Library/Article/we-can-work-it-out-the-ten-most-over---underrated-beatles-songs. 
  47. ^ Stolworthy, Jacob (2018年11月22日). “The Beatles' White Album tracks, ranked - from Blackbird to While My Guitar Gently Weeps”. The Independent (Independent News & Media). https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/music/features/the-beatles-white-album-tracks-ranked-paul-mccartney-john-lennon-george-harrison-50-anniversary-a8643431.html 2020年9月26日閲覧。 
  48. ^ Womack 2014, p. 802.
  49. ^ Bush, John. Ella - Ella Fitzgerald | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月26日閲覧。
  50. ^ Staff writer (31 December 2006). “Terry Manning - Home Sweet Home”. No Depression. http://nodepression.com/album-review/terry-manning-home-sweet-home. 
  51. ^ Jarnow, Jesse. Live Phish, Vol. 13: 10/31/94, Glens Falls Civic Center, Glens Falls, NY - Phish | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月26日閲覧。
  52. ^ Loftus, Johnny. Songs From The Material World: A Tribute To George Harrison - Various Artists | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月26日閲覧。
  53. ^ Erlewine, Stephen Thomas. George Fest: A Night to Celebrate the Music of George Harrison - Various Artists | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月26日閲覧。






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