ゴールキーパー (サッカー)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/27 22:37 UTC 版)
概要
ゴールキーパーはペナルティエリア内において手でボールに触れ、ゴールにボールを入れさせない役割を担っている。シュートストップなど、ゴール前での守備に最重要な主眼がおかれているのは現在でも変わらないが、1980年代末から中盤でのプレスにより守備ラインが上がったことなどで、近年ではスウィーパー的要素も求められる。また1993年のバックパス禁止ルール制定(意図的に足でバックパスされたボールを手で扱うことが禁止されるようになった)に端を発し、足元でのボールコントロールおよびパスの技術、攻撃の起点としての戦術眼・判断力といった部分に優れることも立派な長所として評価される傾向にある。
11人のプレーヤーの中で最も運動量が少なく、かつ常に全体を見渡せるポジションであるため、DFラインのみに限らず、フィールドプレーヤー全体に指示を行う重要な役割も担っている。
チームにとっては文字通り「最後の砦」であり、GKが抜かれる事は失点する事を意味する。無論、失点をしなければ負ける事は絶対にない。それ故、「サッカーにおいてはGKこそエースだ」と考える者もいる。
試合終了間際でリードされている場面など、是が非でも得点を取る必要がある場合には、ゴールキーパーも攻撃参加に転じることがあるが、これは相手ゴール前での攻撃人数を増やす目的で、特にセットプレーの場合に実行される事が多い。プロリーグでも稀に見られ、実際にゴールを挙げたゴールキーパーも少なからず存在する[注 1]。滅多な事ではないが、自身のペナルティエリアからシュートをして相手のゴールに入る事もある。
ルール上の規定
ゴールキーパーに関する規定は幾つかの条項、及び通達等に分散している。
- 第3条「競技者の数」
- チームを構成する者の内、一人だけゴールキーパーを置かなければならないと規定されている。
- 第4条「競技者の用具」
- ゴールキーパーは他のフィールドプレーヤー、審判と見分けが付くように異なる色のユニフォームを着用することが義務付けられている。
- 以前はホセ・ルイス・チラベルトやホルヘ・カンポスのようにオリジナルのユニフォームを着ても問題はなかったが、現在では規定で出来なくなっている。
- 袖の長さに関する規定はないが、ゴールキーパーのユニフォームの袖は腕を保護するため丈夫な繊維を用いた長袖であることが多い。しかし、近年は天然芝グラウンドの普及や、相手に掴まれたり、汗で腕に袖が張り付く事を避けるため、半袖を着用する選手も増えている。
- 日中の試合では日よけのため帽子を着用することが許可されている。
- 膝の保護の点から裾の長いパンツを着用する事が出来る。
- 第12条「反則と不正行為」
- GKによる反則で、相手に間接フリーキックが与えられる行為として以下の4つが規定されている。これらの行為はたとえペナルティーエリア内であっても許されていない。
- ボールを6秒以上手で保持する(以前は保持可能時間は4秒で、それに加えボールを手で保持した状態で4歩以上歩いてはいけない「4ステップ」と言うルールもあったが、これを厳密に守ると動きが制限され過ぎるため、ほとんどの場合、審判の判断も含め暗黙の了解でこの規定は見逃されていた。2000年代に入り「4ステップ」の廃止と、保持時間の6秒への変更が正式に実現した。)
- 保持していたボールを離してから、他の競技者が触れる以前に、再び手で触る。
- 「保持する」とは手でコントロールするという意味であり、いったん手を離れてバウンドさせたボールをつかんだ場合はボールを離したことにはならず反則とはならない。
- 味方のプレーヤーからキックで返されたボール(バックパス)を手で触れる。
- 味方のプレーヤーからスローインで返されたボールを手で触れる。
- フリーな状況でない味方からのバックパスについては、「キック」の定義により、足首より上の部位を用いてパスされたボールについてはゴールキーパーは手で触れることが出来る。
- GKによる反則で、相手に間接フリーキックが与えられる行為として以下の4つが規定されている。これらの行為はたとえペナルティーエリア内であっても許されていない。
- キーパーチャージ
- かつてはゴールエリア内での身体的接触からキーパーを保護することを目的とした反則規定(キーパーチャージ)が存在したが、1997年の規則改正により廃止され、現在はフィールドプレーヤーと同等の扱いとなっている。
その他のルールに関する規定
- キーパーに対するファウル
- ゴールキーパーは手でボールに触れボールをゴールに入れさせない役割を担っている。そのため、ゴールを狙いにくる選手とのボディーコンタクトに対して、無防備になってしまう事がしばしばある。このため、キーパーチャージが廃止された現在でも、キーパーに対するファウルは厳しく取られる傾向がある。
- キーパーがいなくなった場合
- ゴールキーパーは非常に専門性が強いポジションであるため、一人以上のゴールキーパーが控えとしてベンチに配置されることが一般的である。ゴールキーパーの交代の際には、ほとんどの場合この控えのゴールキーパーが代わりに出場することとなる。
- ゴールキーパーがレッドカードにより退場処分となった際、ルール上、必ず一人はゴールキーパーを置かなければならないため、フィールドプレーヤーと控えゴールキーパーを交代させなければならない。そのため、交代枠を1つ使ってしまうなどの点で、ゴールキーパーの退場はフィールドプレーヤーのそれ以上に厳しいものとなる。
- ただし、突発的にゴールキーパーを務められるプレーヤーが存在しない、あるいはできない場合も想定される。控えのゴールキーパーも怪我をしてしまったとき、控えにゴールキーパーを置かなかったとき、交代枠を使い切ってしまった時は、ゴールキーパーを置かなくてはいけないとするルール上、ゴールキーパーとして登録されていないフィールドプレーヤーがゴールキーパーを務めなければならないこととなる。さらに、ゴールキーパーのユニフォームは他のプレーヤーや審判と違う色のものでなくてはならないとする規定も存在するため、この場合フィールドプレーヤー用のユニフォームからゴールキーパー用のユニフォームに着替えてプレーしなければならない(ただし上半身のみで良い。背番号は関係なく退場するGK、または控えのGKからGK用のユニフォームとグローブを借りることになっている)。
- 背番号
- ゴールキーパーの背番号は1番が一般的で、現在ではプロアマ問わずゴールキーパー以外のプレーヤーが1番を着用していることは滅多に無い(かつてアルゼンチン代表がアルファベット順に背番号を定めたため、ミッドフィルダーのオズワルド・アルディレスが1番を着用した時代がある)。また一般的にゴールキーパー以外のプレーヤーが着用する傾向にある2番から11番までの背番号をゴールキーパーが着用することも滅多に無い(かつてオランダ代表が前述のアルゼンチン代表同様アルファベット順に背番号を定めたためワールドカップ西ドイツ大会でヤン・ヨングブルートが背番号8を付けた事例がある。また同じく西ドイツ大会でポーランド代表のヤン・トマシェフスキが背番号2を付けた事例がある)。現在では多くの大会やリーグにおいて、「1番はゴールキーパー用、2 - 11はフィールドプレイヤー用、12以降は自由」と定められている。Jリーグにおいても同様に規約により禁止されている[1]。
- 怪我の治療
- キーパーが怪我をした際は、フィールド上で治療が行われ、その間プレーは停止する。この間に要した時間はアディショナルタイムに加算される。
注釈
出典
- ^ Jリーグ公式サイト Jリーグ規約・規程集 ユニフォーム要項第3条4項 2011年4月20日閲覧
- ^ Twitter, Trends (2015年6月16日). “[www.trendsmania.com/trends/キーパー キーパー Latest News Updates]”. Trendsmania. 2015年6月16日閲覧。
- ^ プレミアが生んだ悲劇 イングランドの弱点は… スポーツニッポン2010年1月26日
- ^ a b “なぜJリーグのGKは外国人が多い?「日本人GKの課題」を指摘する名指導者の危機感”. REAL SPORTS (2020年2月12日). 2023年3月30日閲覧。
- ^ “韓国人GKがJ1リーグで猛威 世界的に珍しい「50%」の高い割合が示す日本への警鐘”. フットボールゾーン (2019年4月7日). 2023年3月30日閲覧。
- ^ The World's best Goalkeeper of the 20th Century
- ^ IFFHS' World's Best Goalkeeper of the Year - RSSSFによる記録
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