ゴート語 他のゲルマン言語との比較

ゴート語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/14 02:12 UTC 版)

他のゲルマン言語との比較

ゴート語と古スカンジナビア語

ゴート語はスカンジナビア起源の要素を持ち、特にその方言 Old Gutnish (en)は古スカンジナビア語と言語的に類似点がある。Old Gutnish とゴート語の類似したいくつかの語は、言語学者エリアス・ヴェッセン (Elias Wessén) がゴート語方言として分類している。ここに、14世紀の写本から取られた南ヨーロッパの Gutasaga (en) をテクストのサンプルとして例示する。

siþan af þissum þrim aucaþis fulc j gutlandi som mikit um langan tima at land elptj þaim ai alla fyþa þa lutaþu þair bort af landi huert þriþia þiauþ so at alt sculdu þair aiga oc miþ sir bort hafa som þair vfan iorþar attu... so fierri foru þair at þair quamu til griclanz... oc enn byggia oc enn hafa þair sumt af waru mali
over a long time, the people descended from these three multiplied so much that the land couldn't support them all. Then they draw lots, and every third person was picked to leave, and they could keep everything they owned and take it with them, except for their land. ... They went so far that they came to the land of the Greeks. ... they settled there, and live there still, and still have something of our language.
(訳)長期間に渡り、これら3つ(の民族)から派生した民族の人口が倍加したため、土地は彼ら全てを支えることが出来なかった。そこで彼らは「くじ」を引き、3人の内1人がその土地を去ることに決められた。その土地を去ることになった人々は、その土地を除き、彼ら全ての所有物を保持しておくことが出来た。…彼らは非常に遠方に移動したため、ギリシア人の土地に到達するに至った。…彼らはそこに定住し、未だにそこで生活しているが、我々の言語と未だにつながりを有している。

北および東ゲルマン諸語との類似点の要点は次の通り:

  1. 初期ゲルマン語の*-jj-と*-gg-から、ゴート語へのddjへの進化(古ゴート語ではggj?)およびggwと古スカンジナビア語ggjとggv(ホルツマン法 Holtzmann's law)。たとえば、古高地ドイツ語のzwei(「2」)の属格zweioは、ゴート語方言ではtwaddjeとなり、古スカンジナビア語ではtveggjaとなる。
  2. 多数の-naで終わる起動相動詞は、ゴート語ではwaknan、現代スウェーデン語ではvankaとなる。
  3. ゴート語は古ノルウェー語を通じて、古スカンジナビア語などの初期ゲルマン諸語を理解するのに非常に重要である。古ゲルマン諸語の語尾-n、例えばnavnやnamn(英:name)は、ゴート語ではnamo、及びその複数属格namneと解釈できる。時折、ゴート語の解釈は古いルーン文字碑文から行われるが、ゴート語の単語gudja(英:Gothi (en)、聖職者)はNordhugloのルーン文字碑文で見つかるノルウェー語gudijaと同起源であると解釈できる。

しかしながら、通常ゲルマン語族は東ゲルマン語群と西ゲルマン語群に理論的に分類されていた。今日では「初期ゲルマン語群」が独立して、三つのグループとして扱われている。

その他のゴート語の特徴

最初に証明されたゲルマン語派言語として、ゴート語は他の全ての既知のゲルマン語派言語に共通するいくつかの特徴を示すことができない。最も目立つことは、ゴート語は形態的にウムラウトを持たないということである。ゴート語のgudja「聖職者」は、古スカンジナビア語gydja「(女性の)聖職者」と対比させることができる。古スカンジナビア語は、この例のようにI-ウムラウトの影響を受けた/u/から/y/への変化を持つが、ゴート語にはそのような変化はない。

ゴート語はインド・ヨーロッパ語族から受動態を引き継いでいるが、他の全てのゲルマン語族では証明されていない。ゴート語は、過去形の形成において重複 reduplication を示すいくつかの動詞を持っている。例)haitan(英:to be called)→haihait、諾:heita、独:heißen、古英語:hight)。しかし、他のインド・ヨーロッパ語族には、古英語、古スカンジナビア語、古高地ドイツ語に少し痕跡が残る程度である。


  1. ^ Fausto Cercignani, The Elaboration of the Gothic Alphabet and Orthography, in Indogermanische Forschungen, 93, 1988, 168-185.






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