クリーンルーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/15 01:20 UTC 版)
運用
原則
清浄空間を作り、維持するための条件として以下の原則が挙げられる。
- 微粒子を持ち込まない。
- 微粒子を発生させない。
- 発生した微粒子を速やかに排除する。
- 微粒子を堆積させない。
入退出
人間は衣服や人体そのものから大量の塵埃を発生させるので、全身を覆う専用のクリーンウェア(防塵服・無塵服)やマスクを着装し、二重扉の出入口で清浄空気のエアシャワーを浴びて塵埃を落としてから入室する。出入口の床には粘着マットが敷かれ、靴底や装置下面の塵埃を除去する。物品の搬入もドアの開閉時の外気からの塵埃流入を防ぐため、パスボックスを用いて二重扉の間でやり取りする。
用具
CR内では塵埃の発生は禁忌であるため、使用できる用具には特殊なものがある。
紙はわずかな繊維も塵埃となるため、発塵を抑えたクリーンペーパー(無塵紙)を使用する。
また、鉛筆やシャープペンシルも芯から発塵するために使用不可であり、持ち込みが禁止される場合が多い。ボールペンもノック式ではなくキャップ式を用いることがある。
清掃も、水道水や洗剤を用いると水分蒸発後の残留成分が塵埃となるため、テフロンワイプを超純水やエタノールで湿らせて拭き取ることが多い。防塵服の洗濯は専用の洗剤を用い、ほかのものと分けた防塵服専用の洗濯機でおこなう。
空気清浄度
どの程度の塵埃を許容するかの指標として、1立方フィートあたりの空気に、粒径0.5 µm(マイクロメートル)以上の塵埃(粒子個数)がいくつあるかの数字で表すことが多い。
米国連邦空気清浄度基準 209E(2001年11月廃止)
クラス | 最大空中塵埃数/立方フィート | ISOレベル 基準値相当 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
≥0.1 µm | ≥0.2 µm | ≥0.3 µm | ≥0.5 µm | ≥5 µm | ||
1 | 35 | 7.5 | 3 | 1 | 0.007 | ISO 3 |
10 | 350 | 75 | 30 | 10 | 0.07 | ISO 4 |
100 | 3,500 | 750 | 300 | 100 | 0.7 | ISO 5 |
1,000 | 35,000 | 7,500 | 3000 | 1,000 | 7 | ISO 6 |
10,000 | 350,000 | 75,000 | 30,000 | 10,000 | 70 | ISO 7 |
100,000 | 3.5×106 | 750,000 | 300,000 | 100,000 | 700 | ISO 8 |
ISO基準 14644-1(JIS 準拠)
医療、食品関連のCRであれば0.5 µm以上の粒子を対象とし、産業用は0.5 - 0.1 µm以上の粒子を対象にすることが多い。
通常の(CR内でない)晴天時の外気はクラス1,000,000程度に相当する(雨天時などは極端に粒子個数は低下し、600,000 - 200,000個/cf程度まで低下する。また、市街地であるか山間部であるかによっても大きく個数濃度は異なる。)。
クラス100といえば、100個/cfしかないので、病院のクリーンルームであればバイオクリーンルーム (BCR) と呼ばれ、産業用CRの場合はクラス1、スーパークリーンルームなどと呼ばれる。もちろん、それ以上の大きな塵埃はゼロに近くなくてはならない。
最近は塵埃量に加え、ガス成分、静電気、電磁波なども管理の対象となることがあり、医療、食品産業用の場合は浮遊微生物(一般細菌、大腸菌、カビ)も対象となる。
資格
クリーンルーム内での作業や取扱・管理業務には、規模・用途に応じた資格とされることがある。
特に半導体プロセスでは、材料ガスとして常温常圧で自然発火するシラン、ホスフィンのほか、水素や高純度酸素などが用いられるため、火災・爆発には注意が必要である。
また、これらのほかにも不活性ガスの窒素やアルゴンなども用いられ、すべてのガス類がすべて低温の液体として保存されるため、高圧ガスの取り扱いに関する注意が必要である。そのほか、洗浄工程や加工工程では強酸や強アルカリを使用することから、これらも注意が必要である。
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