ウェブスターのホルン方程式 ウェブスターのホルン方程式の概要

ウェブスターのホルン方程式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/27 02:06 UTC 版)

1919年のアーサー・ゴードン・ウェブスター英語版による研究[2]にちなんでウェブスターの方程式と呼ばれるが、この方程式はダニエル・ベルヌーイジョゼフ=ルイ・ラグランジュレオンハルト・オイラーらの時代から調べられてきた[3][4]

概要

細長い管の内部を伝播する音波について考える。管に沿って 軸を取る(すなわち -平面が気柱の断面となる)。管の断面積 軸に沿って変化するとき、 は座標 の関数 とみなせる[5]。ウェブスターのホルン方程式においては、考えている音波の波長 に対して次の条件を満足することが仮定される[5][6]

  • 管の半径 が波長 に比べて十分小さいこと。
  • 管の断面積 は、管の半径程度の距離スケールでのみゆるやかに変化すること。

これらの条件は、波長が長い低周波の音波に対してのみウェブスターのホルン方程式は成立することを意味している[1][5]

気柱内を 軸方向に伝播する音波は、時刻 および座標 の関数としての音圧 によって表される[7]。上記の状況では音圧 波動方程式を修正した偏微分方程式

を満足する[5][8]。ここに 音速である。これがウェブスターのホルン方程式である[1][9][5]。あるいは角振動数 の音波を考えるとき(すなわち時間依存性についてフーリエ変換するとき)、ウェブスターのホルン方程式はヘルムホルツ方程式を修正した

へと帰着される(波数[10][8]。この形の方程式もウェブスターのホルン方程式と呼ばれる[11]。なお速度ポテンシャルも同じ形の方程式を満足する[5]

管内における音波の波面は管壁および中心軸に垂直であり厳密には湾曲しているものの、ウェブスターのホルン方程式は波面の曲率を無視する近似を施すことに対応する[12]。これは開口部があまり急激に広がらないホルンまたは角笛形の管について妥当な近似である[12]

物理学的背景

ウェブスターのホルン方程式は以下の流体力学的な考察によって導出される。断面 および によって囲まれる体積 の領域について、時間 におけるこの領域の質量の変化分は、断面 からの流入量と断面 からの流出量の差し引き

により与えられる[5][8]。これを問題の領域の密度の増分による質量変化

と等置することにより、非一様な断面を持つ気柱における連続の方程式

が導かれる[5][8]。これとオイラー方程式を連立し音圧 に関して整理することによりウェブスターのホルン方程式が得られる[5][8]


  1. ^ a b c 加古孝、加納知聡「定常波動問題にたいする領域分割法とその応用 (計算力学の新解法と領域分割法)」『数理解析研究所講究録』第1129巻、京都大学数理解析研究所、2000年2月、56頁、CRID 1050001201691326208hdl:2433/63657ISSN 1880-28182023年12月27日閲覧 
  2. ^ Webster, A. G. (1919). “Acoustical Impedance and the Theory of Horns and of the Phonograph”. Proceedings of the National Academy of Sciences 5 (7): 275–282. doi:10.1073/pnas.5.7.275. ISSN 0027-8424. 
  3. ^ Rossing & Fletcher, pp. 191-192.
  4. ^ Eisner, Edward (1967). “Complete Solutions of the “Webster” Horn Equation”. The Journal of the Acoustical Society of America 41 (4B): 1126–1146. doi:10.1121/1.1910444. ISSN 0001-4966. 
  5. ^ a b c d e f g h i Howe, p. 432.
  6. ^ Landau & Lifshitz, p. 294.
  7. ^ Howe, pp. 390-393.
  8. ^ a b c d e Landau & Lifshitz, p. 295.
  9. ^ Rossing & Fletcher, p. 191.
  10. ^ a b Howe, p. 433.
  11. ^ Martin, P. A. (2004). “On Webster’s horn equation and some generalizations”. The Journal of the Acoustical Society of America 116 (3): 1381–1388. doi:10.1121/1.1775272. ISSN 0001-4966. 
  12. ^ a b c d e f Rossing & Fletcher, p. 192.
  13. ^ Rossing & Fletcher, p. 193.
  14. ^ Howe, p. 434.
  15. ^ a b Landau & Lifshitz, p. 296.
  16. ^ a b Rossing & Fletcher, p. 195.
  17. ^ Landau & Lifshitz, p. 297.
  18. ^ a b c Rossing & Fletcher, p. 197.
  19. ^ Rossing & Fletcher, p. 198.


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