ウィラメット川 ダムと橋梁

ウィラメット川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/20 00:49 UTC 版)

ダムと橋梁

ダム

ウィラメット滝の取水堰

ウィラメット川の支流には大型ダムが20か所を超えて存在し、治水のために堤防や水路が複雑に張り巡らされている。

ウィラメット川本流に唯一存在するダムがウィラメット・フォールズ・ダムで、河水を隣接する工場群や水力発電所へ導水するために設けられた、堤高の低い日本においては堰に分類されるダムである[88]ウィラメット滝に閘門英語版が設けられたのは1873年である。他の場所には小型の流量調整施設が数多く設けられ、水運と治水を容易にするために河水を比較的幅の狭く水深の深い水路に導流している[47]

ウィラメット川の主要な支流に存在する大型ダムの用途は、治水と貯水、そして水力発電である。このうち13か所のダムが1940年代から1960年代にかけて建設され、陸軍工兵隊が管理しており[89][90]、うち11か所が発電用ダムである[89]。工兵隊が管理する治水目的ダムは、ウィラメット川の流量のうち27パーセントを貯留可能である。増水を軽減し、夏の後半から秋にかけての流量低下を補い、洪水を抑止するために調整用水路へ分流することにより、川の流れを一定の範囲に調整している[47][73][88][91][92]。貯水池の水のうち、灌漑に回されるのは比較的少量に過ぎない[93]

流域で堤高が二番目に高いデトロイト・ダム英語版

サウス・フォーク・マッケンジー川英語版クーガー・ダム英語版ノース・サンティアム川英語版デトロイト・ダム英語版は、ウィラメット川流域における堤高の高いダムの双璧である。デトロイトダムは堤高が141メートル (463 ft)で貯水量が561,234,200立方メートル (455,000 acre⋅ft)ある[94]ミドル・フォーク・ウィラメット川英語版ルックアウト・ポイント・ダム英語版は、貯水容量が589,234,300立方メートル (477,700 acre⋅ft)と流域において最大でルックアウト・ポイント湖英語版を形成する。残る10のダムは、ノース・サンティアム川のビッグ・クリフ・ダム英語版サンティアム川英語版グリーン・ピーター・ダム英語版フォスター・ダム英語版ブルー川英語版ブルー・レイク・ダム英語版ロング・トム川英語版ファーン・リッジ・ダム英語版、ミドル・フォーク・ウィラメット川のヒルズ・クリーク・ダム英語版およびデクスター・ダム英語版フォール川英語版フォール・クリーク・ダム英語版コースト・フォーク・ウィラメット川英語版コッテージ・グローヴ・ダム英語版ロウ川英語版ドリーナ・ダム英語版である[91]

このダム群が原因で、キングサーモンニジマスが本来の棲息地や産卵場のうち半分から締め出されている。従来通りの繁殖行動がとれないため、これらの種は「絶滅に瀕した状態」となっている[95]。絶滅危惧種の調査とその後のウィラメット・リバーキーパーが起こした訴訟を経て、2008年に在来魚の個体数回復を目指し、魚道の改修などの措置を講じる計画が立てられた[96]。 計画は遅々として進まず、工兵隊は技術的困難と経費を理由として、当初合意された期限の2023年までに効果的な救済システムの構築が間に合わない可能性を表明した[95]

ウィラメット川流域には工兵隊以外が所有するダムもあり、例えばクラカマス川英語版にある複数の水力発電用ダムはポートランド・ゼネラル・エレクトリック英語版が有している。 同社が管理するダムにはリバー・ミル・ダム英語版ハリエット・ダム英語版ティモシー・レイク・ダム英語版などがある[97]

橋梁

ウィラメット川にかかる自動車用橋梁としては現存する最古のホーソーン橋英語版

ウィラメット川には50か所を超える橋梁がかけられており、その中にはヴァン・ビューレン・ストリート橋英語版のような歴史的価値のある旋回橋も存在する。この橋は合流点から211km上流のコロンバスで1913年に架橋され、オレゴン州道34号線英語版(コーバリス=レバノン・ハイウェイ)が通っている。橋の旋回機構は1950年代に撤去された[98][99]。 1922年竣工のオレゴン・シティー橋英語版は1888年に完成した吊橋から架け直されたもので、合流点から42km上流に位置しオレゴン・シティーと対岸のウェスト・リンを結ぶオレゴン州道43号線英語版が通っている[100][101]

合流点から23kmにあるロス・アイランド橋英語版には、国道26号線マウント・フッド・ハイウェイ英語版)が通っている。これはポートランド市内に架かる10の橋梁の一つで延長が1,130メートル (3,700 ft)あり、オレゴン州で唯一のゲルバートラス橋である[102][103]

スティール橋の下段は、上段と独立して昇降可能である。

ティリクム・クロッシング橋英語版は全長520メートル (1,720 ft)の斜張橋で、ライトレールと自転車・歩行者専用である[104]。この橋の供用は2015年9月12日で、ポートランド都市圏におけるウィラメット川を横断する橋の開通は1973年以来である[105][106]

その下流には、ウィラメット川に架けられた現存する道路橋としては最古となる1910年竣工のホーソーン橋英語版があり[107]、合衆国内で最古となる現役の昇開橋英語版であり[108]、ポートランドで最古の道路橋でもある。この橋は自転車と公共交通の通行量が多く、一日当たり自転車は8,000台を超え[109]TriMet英語版のバスは延べ800台(乗客数としては17,400名)が通行している[108]

ポートランド北西のセント・ジョーンズ橋

ホーソーン橋の下流側にスティール橋英語版というもう一つの歴史的橋梁があり、1912年の竣工当時は世界最長の伸縮機構のある昇開橋英語版であった[110]。この橋は2段構造となっており、上段にMAX英語版(都市間急行)ライトレールと自動車道が、下段に鉄道と歩行者・自転車道が通っている[111]。小型の船舶が橋下を通行する必要がある場合、2段あるうち下段のみを上昇させ、上段の通行を留めることなく運用することが可能である。上下段の双方を稼働させる場合は、水面から50メートル (163 ft)まで上げることができる。このスティール橋は上段と独立して下段のみを昇降可能な、世界で唯一の二重昇開橋と考えられている[110]

スティール橋のすぐ下流にあるブロードウェイ橋英語版は、1913年の完成当時において世界最長であった二葉の跳開橋英語版である[112]。さらに下流にあるセント・ジョーンズ橋英語版は、ポートランドで最後に残されたウィラメット川の渡船の代替として1931年に完成した鋼鉄製のつり橋である[113]。合流点から6キロメートルに位置し、国道30号線バイパス英語版が通る[114]。この橋梁の主塔はゴシック様式で築かれている[115]。橋に隣接する公園とポートランドの街区であるカテドラル・パーク英語版の名称は、主塔のゴシック様式の聖堂英語版に似た外観から名づけられている。またこの橋はポートランドにおいて最も高い橋で、主塔の高さが122メートル (400 ft)、水面から橋桁までの高さが62メートル (205 ft)である[113]

ポートランド市街を流れるウィラメット川。画面の左から右に、フリーモント橋、スティール橋、バーンサイド橋、モリソン橋、ホーソーン橋、マルクアム橋、ロス・アイランド橋、セルウッド橋が写っている。2007年の撮影時点で、ティリカム・クロッシング橋は架橋されていない。

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