アルセロール・ミッタル・オービット
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建設
『オービット』はオリンピック・パークの南側エリア、オリンピック・スタジアムとアクアティクス・センターの間にある[10] 。2010年3月に『オービット』はコンペで勝ち残り[5][15]、2010年11月に建設が開始され、2011年11月に現在の高さになった[29]。
主たる建材は鋼鉄である。バルモンドによると、それ以外に適した素材はなかった。というのも、『オービット』の螺旋構造では鋼鉄が細さと強度を最も両立できる素材だったからだ[14]。この建物は約1400トンの鋼鉄で建てられている。それらの鋼鉄は、可能な限り世界中のアルセロール・ミッタルの工場で生産されたものが使われ、その原料は要求される鉄の等級および計画の技術的仕様に従って厳密に選ばれた[5]。使われた鋼鉄の 60% はルクセンブルクのエシュ・ベルヴァルにある製鉄所のリサイクル鋼材が使われている[30]。
2011年3月14日、メインの塔はまだ建設中だったが、テレビ番組『ザ・ワン・ショウ』は工事現場の様子を放送し、2人の鉄骨組立工、1人のクレーン操作員、1人の親方からなる4人組が『オービット』を組み立てる様子を紹介した。
利用
展望塔として、『オービット』は2フロアにそれぞれ定員150名の屋内展望室を備えている[15][25]。高さ115メートルの『オービット』に比較すると、近くのオリンピック・スタジアムは59メートルある[27]。大ロンドン庁によると、この展望室で「250km²のオリンピック・パークとロンドンの町並について、他では見られない眺めを目にすることができる」とのことである[10]。『インデペンデント』紙は、最上階までエレベーターで昇った後、455段の階段を歩いて降りることを勧めている。それによって、カプーアが立体芸術を施した建物の様子が分かるに違いないからだ[25]。
この塔は、1時間あたり700名の入場者を受け入れることができると考えられている[15]。オリンピック期間中、入場料は大人15ポンド、子供7ポンドだが、その後は値下げされるかもしれない[25]。塔にはレストランも設けられている[25]。
この立体芸術は、オリンピック期間中にオリンピック・パークの中心地となるだけでなく、より広範囲のストラトフォード再開発計画の一部となり、大会終了後も会場跡を恒久的な観光名所とすることを目指している[4]。テッサ・ジョウェルは、「ロンドンを毎年訪れる何百万人という旅行者を蜂に喩えるならば、『オービット』は彼らを誘う蜂蜜のようなものだ」と述べた[10]。ボリス・ジョンソンは、塔は「完璧な象徴的文化遺産」になるだろうと述べた[10]。2012年ロンドンオリンピック組織委員会会長のセバスチャン・コーは、末永く遺産を残すという大会の役割において、この塔は中心的存在となり、東ロンドンの景観に変化をもたらすものだと述べた[10]。
建設資金
建設計画が公に開始された時点で、その総予算は1910万ポンドと発表された[10]。うちアルセロール・ミッタルが1600万ポンド、残り310万ポンドをロンドン開発庁が出資した[10]。前者のうち1000万ポンドはキャッシュによる寄付、600万ポンドは資本コストの引き受けであり、そちらは大会後に生まれる利益によって回収できる可能性がある[10]。ジョンソンによると、計画のコストは塔の上のレストラン・エリアのテナント料で大会後に埋め合わされる見込みであり、「利益追求型ベンチャー企業」が入るであろうとのことである[15]。
ミッタルは、ロンドンがオリンピック開催地に選ばれたという発表が熱狂をもって迎えられたのを思い出し、この計画に即座に興味を持ったと述べている。すなわち、ロンドンに永続的な遺産を残し、「鋼鉄の独特な特質」の見本を示し、ストラトフォードの再開発に一役買う機会と見たのである[5]。ミッタルは計画への自らの関与を次のように述べている。「私はロンドンに1997年から住み、ここを素晴らしい街だと思っている。この計画はオリンピック大会のためロンドンに一大名物を建設する、また大会の遺産において永続的な役割を果たす代物を建設する、計り知れないチャンスである[5]。」
テート・ギャラリーの顧問兼理事のニコラス・セロタは、『オービット』は「スポーツと芸術をいかに融合するかという問いに対する完璧な答え」と述べ、「偉大な作品」の製作の支援におけるミッタルの「実に素晴らしい後援」を賞賛した[18]。
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