アメリカ国立暗号博物館
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/05 03:19 UTC 版)
展示
NCMには、第二次世界大戦中のドイツの暗号機「エニグマ」(見学者が実際に操作できるものもある)や、エニグマ暗号の解読に使われた「ボンブ」、日本軍のパープル・レッド暗号機など、多数の収蔵品がある。当初はNSAの職員が独立戦争以前のものを含めた過去の資料を閲覧するための施設だったが、アメリカの暗号の歴史を集めた博物館に発展し、一般公開されるようになった。
暗号化・復号、情報セキュリティのための機器の展示だけでなく、また、アメリカの暗号技術の歴史や、それに関わった人々に関する展示もある。独立戦争中に暗号通信などの軍事情報戦術を大陸軍に採用したジョージ・ワシントン、両世界大戦中に自分たちの言葉を使って秘密通信を行ったネイティブアメリカンのコードトーカー、第二次大戦中にドイツの暗号を解読する装置を操作した女性軍人(WAVES)たちなどである。
展示スペースは、大きく以下の4つのグループに分かれている。
- 初期の暗号
- 16世紀からNSAが設立される1950年代前半までの暗号の歴史を扱う。ルネサンス期の書籍『ポリグラフィア』のほか、アメリカ建国期、独立戦争、南北戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争における資料を中心に展示している。
- 冷戦期・情報化時代
- 冷戦期の両陣営の暗号と解析の技術、初期のNSA、スーパーコンピュータの開発などのコンピュータの近代化に関する展示
- 情報保証
- 衛星技術の発展、安全な音声通信、不正開封防止技術、情報保護のための生体認証の利用などに関する展示
- 記念ホール
- 1999年に創設した、アメリカの暗号技術に貢献した個人を称える「NSA殿堂」[4]と、偵察飛行など暗号に関わって命を落とした人を称える展示[5]
この他、暗号の歴史における女性やアフリカ系アメリカ人の役割、世界の様々な言語に関する展示(ロゼッタストーンのレプリカなど)19世紀後半から20世紀初頭にかけてホーボーの間で使われていた符丁などのミニコーナーが、NCMの各所に設置されている[6]。
NCMには、暗号の歴史や暗号学に関連する書籍、論文などを集めた図書館がある[7]。書籍や資料の貸し出しはしていないが、コピーや写真撮影は可能である[6]。この図書館には、暗号学者ハーバート・オズボーン・ヤードリーから寄贈された書類が十数箱分、機密解除されたエニグマ暗号の暗号文や技術報告書、EFF DESクラッカー(ディープクラッカー)によるDES暗号の解読法などの書籍が収蔵されている。2010年10月26日、暗号史家・作家のデビッド・カーンが蔵書を寄贈したことで、図書館の収蔵数はほぼ倍になった[2][8]。
- ^ “The Story of a Cryptologic Hero: SPC Ryan C. King, USA”. National Security Agency Public Affairs Office. 2010年10月6日閲覧。
- ^ a b c “National Cryptologic Museum – NSA/CSS”. 2010年10月6日閲覧。
- ^ Barrett, Steve (May 1994). “Secret Intelligence Agency Goes on Display”. INSCOM Journal 17 (5): 14 2020年12月23日閲覧。.
- ^ “Hall of Honor – NSA/CSS”. 2010年10月26日閲覧。
- ^ “National Cryptologic Memorial – NSA/CSS” (2010年5月28日). 2010年10月26日閲覧。
- ^ a b “National Cryptological Museum – Virtual Tour”. 2010年10月5日閲覧。
- ^ “NCM Library Catalog”. National Security Agency. 2019年6月9日閲覧。
- ^ “Dr. David Kahn to be honored by NSA” (2010年10月19日). 2010年10月23日閲覧。
- アメリカ国立暗号博物館のページへのリンク