三角不等式

数学における三角不等式(さんかくふとうしき、英: triangle inequality)は、任意の三角形に対してその任意の二辺の和が残りの一辺よりも大きくなければならないことを述べるものである[1][2]。なお、三角比を含む不等式のことを三角不等式(英: trigonometric inequalities)と呼ぶ場合もあるので、どちらを指しているかは注意が必要である。
概要
(退化した場合も含めた)三角形の三辺が x, y, z で最大辺が z とすれば、三角不等式は
ユークリッドの平面幾何における三角不等式の証明の構成 ユークリッドは平面幾何における三角不等式を図のような構成を用いて証明した[5]: 三角形 ABC に対して、一辺 BC を共有する二等辺三角形をもう一つの等辺 BD の足が辺 AB の延長上にあるように作る。すると角について β > α が言えるから、さらに辺について AD > AC も言える。しかし AD = AB + BD = AB + BC なのだから、辺の和について AB + BC > AC となる、ということがユークリッドの『原論』 I 巻の命題 20 に書かれている[6]。
折線不等式
三角不等式は数学的帰納法により、任意の折線に関する命題に拡張することができる。すなわち、そのような折線の全ての辺の長さの和は、その折線の二端点を直線で結んだ長さよりも小さくなることはない。特にその帰結として、多角形のどんな長さの辺も残り全ての辺の長さの和より必ず小さいことが言える。
曲線の弧長は折線近似の長さの上限として定義される。 このように折線に対して一般化すれば、ユークリッド幾何において二点間を結ぶ最短曲線が直線であることが示せる。
二点間を結ぶ折線がその二点間を結ぶ線分よりも短くならないことから、曲線の弧長がその曲線の両端点の間の距離より短くなることはないことが従う。実際、定義により曲線の弧長はそれを近似する折線の長さの上限で、折線に対する結果は端点間を結ぶ線分が全ての折線近似の中で最短ということであった。曲線の弧長は任意の折線近似の長さ以上であるから、曲線それ自身が直線経路より短くなることはない[7]。
高次元単体不等式
三角不等式をより高次元に一般化してものとして、ユークリッド空間内の n-次元単体の n − 1 次元ファセットの超体積は、それ以外の n 個のファセットの超体積の和以下である。特に、四面体の一つの三角形面の面積は、ほかの三面の面積の和以下になる。
ノルム線型空間の場合
ベクトルのノルムに対する三角不等式 ノルム空間 V に対して、ノルムを定義する性質の一つが三角不等式
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