termite ballとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > termite ballの意味・解説 

ターマイトボール

(termite ball から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 14:13 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

ターマイトボール: termite ball)は、シロアリ物理的・化学的に擬態している菌核。Athelia属の糸状菌が形成する。

内容

シロアリは、典型的な真社会性社会性昆虫である。女王が産卵すると、働き蟻はそれを運んで一カ所に積み上げて置き、それを口で清める(グルーミング)などの保護を行う。ところが、ヤマトシロアリに於いて、このような卵塊の中に、肉眼でも違うと判別できるような小粒が混在しているのが発見された。シロアリ卵は白っぽい半透明で、楕円形なのに対して、その小粒は褐色を帯び、球形で、大きさはシロアリ卵程度である。松浦健二らは、これにターマイトボールと名付け、その正体を調べた。その結果、ミトコンドリアRNAの情報より、それが菌類であり、Athelia属の新種であることが判明した(この菌は、担子菌に属し、同属のものとしては大豆の白絹病を引き起こすA. rolfsiiが有名)。

松浦らは、様々な大きさのガラスビーズを用いて実験したところ、シロアリ卵の短径と同じ直径のガラスビーズに卵の抽出液を塗りつけた場合、シロアリはそれを積極的に拾い上げて、卵としての世話をすることを発見した。つまり、菌核は、シロアリが自分たちの卵と判断する大きさと、卵認識物質を生産することで、物理・化学的に卵に擬態しているものと判断された。

菌の同定

ターマイトボールの断面の観察から、それが偽柔組織からなり、さらに、若干の色素を含む細胞から構成されていることがわかった。これをジャガイモブドウ糖寒天培地(PDA)上で培養すると、数日で発芽し、白い菌糸からなるコロニーを形成した。最初の菌糸は径1.5-3μmで、かすがい連結を持つ。さらに伸び出す菌糸はやや細くなり、かすがい連結を持たない。コロニーの外周近くに、ターマイトボールと同じものと判断できる菌核を形成した。テレオモルフ(有性生殖器官)はこの培地の上では形成されなかった。このようなことから、ターマイトボールが担子菌類の菌核であると判断された。

シロアリと菌との関係

シロアリの糞や唾液には抗菌作用があり、それを巣の内部に塗ることで、有害な微生物の繁殖は抑制されている。これに対して、ターマイトボールは、シロアリに運ばれることで、容易にシロアリの巣内に入ることができる。また、シロアリの巣が分裂する際には、卵と同様に運ばれることで、分布を広げることが可能になる。また、菌核は休眠体であるが、その一部が巣内で成長している例も発見され、それが作った菌核も、同様にシロアリに運ばれる。また、働き蟻による卵のグルーミングの頻度が低くなると、菌核が発芽して、卵を吸収する例も知られている。

キノコシロアリ類では、巣内の菌が小粒を作り、これがシロアリの食物となることが知られているが、この菌核の場合、シロアリがそれを食うことはない。したがって、シロアリの側には、この菌核を保護することによるメリットはないと思われる。これに対して、上記のような問題の他に、シロアリ卵に対する保護手当が相対的に少なくなることも考えられ、多くの点で、シロアリは不利益を受けている。

つまり、この菌とシロアリの関係は、シロアリには不利、菌には有利なものであるから、シロアリに菌が寄生していると見なすことができる。ただし、菌が得るものが、シロアリそのものでなく、本来はシロアリの卵が受けるべき社会的な行動の成果である点が珍しい。その意味で、社会寄生と言うことができる。

応用

シロアリは建築物や家屋の重大な害虫であるから、その防除は大きな問題である。しかしながら、その巣が材木の中や地中にあって発見しづらいこと、見つけても、その内部まで薬剤を送り込むのが困難なことが、その防除の上での大きな問題となっている。しかしこの菌の発見から、同様の方法で、人工物を卵に擬態させて、それをシロアリ自身に巣内に持ち込ませる、という方法が考えられるようになった。

参考文献

  • 松浦健二、「シロアリの社会生態に関する総合的研究」[www.nougaku.jp/award/2005pdf/matsuura.pdf]
  • 「シロアリの卵に化けるカビの化学擬態メカニズムを解明-卵認識フェロモンで巧みにシロアリを操る-」農研気候、2009。[brain.naro.affrc.go.jp/tokyo/marumoto/up/press201224/press201224.pdf]
  • Matsuura K.,C. Tanaka & T. Nishida (2000)Synbiosis of a termite and a sclerotious-forming fungus:Sclerotia mimic termite eggs.Ecological Research 15,405-414

関連項目

外部リンク



「termite ball」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「termite ball」の関連用語

termite ballのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



termite ballのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのターマイトボール (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS