マスバランス方式
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/18 01:24 UTC 版)
マスバランス方式(マスバランスほうしき、英:Mass Balance Approach)は、製品の製造・追加プロセスにおいて、特定の特性を持つ原料(バイオマス原料やリサイクル原料など)と、それを持たない原料(石油由来の原料など)が混合される場合に、その投入量に応じて、生産された製品の一部にその特性を割り当てる管理手法[1]。物質収支方式(ぶっしつしゅうしほうしき)とも呼ばれる。
この方式を適用することで、大規模な既存設備を大幅に改修することなく、化学産業や食品業界などにおいて持続可能な原料への転換を段階的に進めることが可能となる。
概要
通常、バイオマス製品やリサイクル製品として販売するためには、原料の調達から製造までを物理的に隔離するセグリゲーション方式が用いられる。しかし、化学プラントこような連続生産設備では、複数の原料が混合されるため、物理的に特定の原料のみを取り出すことは困難である。
マスバランス方式では、投入された環境配慮型原料の量を帳簿上で管理し、その投入量に相当する分を、特定の最終製品に「100%バイオマス由来」などと割り当てて販売することを認めている[2]。これにより、物理的には石油由来の分子が含まれていても、環境価値として特定の製品に集約させることができる。
適用分野
現在、多様な業界でサプライチェーンの持続可能性を証明する手段として導入されている。例えば、バイオナフサや廃プラスチック由来の原料を既存のプラントに導入する際や[2]、カカオ豆のフェアトレード認証[3]、バイオマス包装材を用いた食品パッケージ(エコマーク取得など)で利用が広がっている[4][5][6]。
また、紙やパルプに対し、森林管理協議会(SFC)認証の「FSCミックス」などで活用されたり[7]、持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)認証などでも採用されている[8]。
メリットと課題
メリットとして、設備投資を抑えつつ、バイオマス化やリサイクル原料の導入が可能になる。また、少量からでも持続可能な原料を混ぜることができ、社会全体での再生可能原料の使用割合を高めやすいという利点もある。
しかし課題として、物理的には石油由来の成分が混ざっているため、ラベル表示による誤解を招かないよう、透明性の高いコミュニケーションと適切な認証が必要である。また、サプライチェーン全体での物質収支の整合性を保つため、第三者機関による認証(ISCC PLUSなど)が不可欠である[2]。
国際規格
マスバランス方式を含む加工・流通過程の管理については、国際標準化が進められている。
- ISO 22095:2020(Chain of custody Terminology and models)[9]
- ISO13662[10]
脚注
- ^ “マスバランス方式”. 環境省. 2026年1月27日閲覧。
- ^ a b c “マスバランス方式とは? | 三井化学のバイオマス&リサイクルソリューション | 三井化学株式会社”. 三井化学のバイオマス&リサイクルソリューション. 2026年1月27日閲覧。
- ^ 持続可能なカカオ豆調達の試み 農林水産省
- ^ “生協の身近な食品パッケージが生活者の気づきに。マスバランス方式のバイオマスプラ「Prasus®」”. jp.mitsuichemicals.com. 2026年1月27日閲覧。
- ^ マスバランス方式による PP「Prasus®」を採用した日本生協連の食品パッケージがマスバランス方式初のエコマーク取得 株式会社プライムポリマー
- ^ “オリジナル商品で使用する容器の、環境負荷を低減 "環境配慮型素材"の使用をさらに強化|サステナビリティレポート/セブン - イレブンのサステナビリティ”. サステナビリティレポート/セブン - イレブンのサステナビリティ. 2026年1月27日閲覧。
- ^ GX実現に向けたカーボンフットプリント活⽤に関する研究会 経済産業省
- ^ WWFジャパン (2026年1月23日). “RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証について”. WWFジャパン. 2026年1月27日閲覧。
- ^ “規格詳細 | 日本規格協会”. 日本規格協会 JSA GROUP Webdesk. 2026年1月27日閲覧。
- ^ “マスバランスとブックアンドクレーム、国際標準化が間近に迫る! | 日本規格協会”. 日本規格協会 JSA GROUP Webdesk. 2026年1月27日閲覧。
関連項目
- マスバランス方式のページへのリンク