誠心誠意判決とは? わかりやすく解説

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誠心誠意判決

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/16 13:05 UTC 版)

誠心誠意判決(せいしんせいいはんけつ)は、1931年昭和6年)2月20日大審院において出された、婚約(婚姻予約)の成立に関する判決[1][2][3]

事案の概要

大正7年1918年)、いとこ同士であったX(20歳女)とY(15歳男)は、将来の結婚を約して性的交渉を持ったが、結納や、親戚知人へのお披露目などの儀式はなされなかった[4][5]。XとYの関係は続き、Xは子を出産[5]。後、Yは上京し、XはYと文通をしながらYとの婚姻のため独身を貫いていたが、Yが別の女性と結婚してしまったため、婚約不履行を原因とする損害賠償請求の訴えを提起した[5]。一審、二審ともにXの請求を一部認容[5]。Yが、結納などにより世間一般が認めたものが婚姻予約であり、いわゆる私通野合とは区別すべきであり、本件で婚姻予約は肯定されないと上告した[4]

判決

大審院は、婚姻予約は結納の取交しなど慣習上の儀式を挙げて将来の婚姻を約する場合に限定されるものではない。男女が誠心誠意を以て将来に夫婦たるべき予期の下にこの契約をなし、このような契約のない自由な男女と一種の身分上の差異を生ずるに至ったときは、婚約予約ありとするに妨げはない、として上告を棄却した。

判決文中の「誠心誠意を以て将来に夫婦たるべき予期の下に…」[6]との文言から、「誠心誠意判決」という事件名で呼ばれる。

婚約の成立に儀式が不要であることを明示した大審院大正8年6月11日判決(民録25輯1010頁)と並び、婚約の成立要件を示した2大判決の1つとして知られる[7]

脚注

  1. ^ 家族法判例百選[新版・増補]8、『新判例マニュアル 民法Ⅴ』24頁、『民法7 ―親族・相続』99頁
  2. ^ 昭和5年(オ)第2143号 損害賠償請求事件 法律新聞3240号4頁、法律学説判例評論全集20巻民法208頁
  3. ^ 裁判官は、菰淵清雄、神谷健夫、古川源太郎、水口吉蔵、中島弘道 。
  4. ^ a b 上告理由による
  5. ^ a b c d 『新判例マニュアル 民法』25頁。詳しい事実関係については、東京都立大学家族法研究会「判例における婚姻予約-未発表資料を求めて-14-」東京都立大学法学会雑誌8巻1号233頁(東京都立大学法学部,1967)に掲載された一審、二審判決文に記載がある。
  6. ^ 原文は旧字、漢字カナ混じり文
  7. ^ 家族法判例百選[新版・増補]8-9頁

参考文献

  • 唄孝一「婚姻予約の成否―いわゆる誠心誠意判決」家族法判例百選[新版・増補]8-10頁(有斐閣、1975)
  • 川井健ほか編著『新判例マニュアル 民法Ⅴ 親族相続』24-25頁(三省堂、2000)
  • 高橋朋子ほか『民法7 ―親族・相続』99頁(有斐閣<有斐閣アルマ>、2004)



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