納屋を焼く (ウィリアム・フォークナーの小説)とは? わかりやすく解説

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納屋を焼く (ウィリアム・フォークナーの小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/08 02:05 UTC 版)

納屋を焼く」(なやをやく、英語: Barn Burning)は、アメリカ合衆国の作家ウィリアム・フォークナーの短編小説で、最初は1939年6月号の『ハーパーズ・マガジン (Harper's Magazine)』に発表され[1]、その後はいろいろな短編集などに収録された。1939年にはオー・ヘンリー賞を受賞している[1]。物語は階級闘争、父親の影響力、復讐などを扱い、感受性の強い子どもの第三者としての視点から語られる。この作品は、『村』、『町』、『館』から成るスノープス三部作の前編に相当する内容になっている。

日本語での題名は、「納屋は燃える」(なやはもえる)とされることもある。

登場人物

  • カーネル・サートリス・スノープス (Colonel Sartoris Snopes) - 通称、サーティ(Sarty)、主人公
  • アブナー・スノープス (Abner Snopes) – その父、スノープス家の家長、敵役
  • レニー・スノープス (Lennie Snopes) – アブナーの妻、サーティの母
  • リジー (Lizzie) – レニー・スノープスの未婚の妹
  • ド・スペイン少佐 (Major de Spain) - スノープスの雇い主
  • ミスター・ハリス (Mr. Harris) - 最初に言及されるアブナーの地主

あらすじ

舞台は、19世紀末の米国南部[2]。 幼い少年[3]サーティ・スノープスの父であるアブナーは、地主の納屋に火を放って焼き払ったとして、町から去ることを強いられる。話の冒頭の裁判の場面で、サーティは尋問に呼ばれるが、アブナーが犯人だとする明白な証拠が出てこないまま、スノープス一家は郡外へ退去することを命じられる。一家は、ド・スペイン少佐の分益小作人としてアブナーが働くことになる新しい場所へと移動するが、アブナーは、自分の目に自分の名誉を守るために必要だと映ることには、権威に反抗せずにはいられない。新しい場所にたどり着いた直後、アブナーはド・スペイン少佐の屋敷を訪れるが、金色の絨毯に馬糞まみれの足跡を付ける。ド・スペイン少佐は絨毯を洗うようアブナーに命じるが、アブナーは、きついアルカリ性の石けんを使って、絨毯を修復できないほど傷めた上で、ド・スペイン少佐の家の正面ポーチに放り出す。ド・スペイン少佐は絨毯の価値に見合う罰として、アブナーに20ブッシェルのトウモロコシの供出を課す。裁判では、治安判事が罰金の額を減じて10ブッシェルにした。再び機嫌を悪くしたアブナーは、今度はド・スペイン少佐の納屋に火を放つ準備をする。サーティはド・スペイン少佐に、父親が納屋を燃やそうとしていることを告げた上で、父親の元へ逃げ帰る。少年は馬で追いかけてきたド・スペイン少佐にすぐに追いつかれるが、溝に飛び込んで身を潜め、やり過ごす。サーティは2発の銃声を聞き、父親が撃たれたものと思い込むが[4]、誰が撃たれたかは作中では語られない。なお、この父親と、サーティーの兄は、「納屋を焼く」以降の作品にも登場する。父親から深い影響を受けた少年は、家族の許には帰らず、自分の人生をひとりで生きて行く。文中には、事の20年後になって、長じたサーティが当時を振り返る言葉が盛り込まれているが[5]、それまでにサーティがどのように生きたかは語られない。

映画化

1980年に、この作品に基づいた同名の短編映画が、ピーター・ワーナー (Peter Werner) 監督によって制作された。そこでは、トミー・リー・ジョーンズがアブナー・スノープス役を、ショーン・ウィッティングトン (Shawn Whittington) がサートリス・スノープス役を演じ、原作者フォークナーの甥であるジミー・フォークナー (Jimmy Faulkner) がド・スペイン役を務めた。1994年にはマレーシアでも映画化されている(邦題:放火犯マレー語版[6]

村上春樹の同名小説

日本の作家である村上春樹は、1983年1月号の『新潮』に、この小説の日本語訳と同名の「納屋を焼く」という作品を発表した。当初この作品中には、「僕はコーヒー・ルームでフォークナーの短編を読んでいた」と、直接フォークナーに言及する文があったが、1990年に出版された村上の全集には改稿されたものが収録され、当該箇所は「僕はコーヒー・ルームで週刊誌を三冊読んだ」と改められた[7]

後にこの村上作品は、フィリップ・ガブリエルによって英語に翻訳され、フォークナー作品と同名の「Barn Burning」という表題で『The New Yorker1992年11月2日号に掲載された[8]

日本語訳

脚注

  1. ^ a b 阿部卓也 2003, p. 122
  2. ^ 阿部卓也 2003, p. 124
  3. ^ 10歳前後と思われる。阿部卓也 2003, p. 122
  4. ^ 阿部卓也 2003, p. 132
  5. ^ 阿部卓也 2003, p. 126
  6. ^ アジア映画―“豊穣と多様” 東京国立近代美術館フィルムセンター 2018年8月6日閲覧。
  7. ^ 小島基洋 2003, pp. 50–51
  8. ^ Fiction: Barn Burning”. Condé Nast. 2014年3月9日閲覧。

参考文献

  • Faulkner, William. “Barn Burning.” Selected Short Stories of William Faulkner. New York: The Modern Library, 1993. 1-25. 1962.

外部リンク


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