極越
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/19 16:32 UTC 版)
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現地語社名
|
极越 |
---|---|
業種 | 自動車 |
設立 | 2021年 |
本社 |
中国
|
製品 | 自動車 |
所有者 | 浙江吉利控股集団 (65%) 上海冪航汽車 (百度子会社) (35%) |
ウェブサイト | 公式ウェブサイト |



極越(Ji Yue Auto、极越、ジユエ)は、吉利ホールディングスに所属していた中国の自動車ブランドである。吉利と中国のIT企業である百度のパートナーシップにより設立された。
プロジェクト開始当初のブランド名だった「集度汽車(Jidu Auto、ジードゥ)」という名称でも知られる。
概要
設立からコンセプトカー発表まで
極越はEVと自動運転による次世代ロボットカーを展開するブランドである[1]。
百度は2013年から自動運転技術の開発を開始し、2017年に自動運転プラットフォーム「Apollo(アポロ)」を開発した。これまでに培った技術をもとに、百度は自動運転車の量産化を目指していた[2]。
2021年1月、百度と吉利がEV会社設立のためのパートナーシップ締結を発表し[3]、同年3月に百度55%と吉利45%の出資による合弁会社「集度汽車有限公司」が上海に設立された。 CEOにはモバイクの共同創設者兼CTOである夏一平(Xia Yiping)が就任したほか、百度から3名、吉利から1名の取締役が任命された[4]。百度は集度汽車に対して過半数を出資し、百度の主導による経営を目指していた[5]。
集度というブランド名には「百度のAI技術を集大成する」という意味が込められたという[4]。
2021年11月、事業運営の整理のため、百度と吉利の出資により「上海集度汽車有限公司」を設立[6]。これ以降、上海集度汽車が集度グループの中心となり、当初設立された集度汽車有限公司が実務を担わなくなったことで、同社の登記上の名称が「上海幂航汽車有限公司」に変更された[6]。集度は「今回の商業登記の変更は事業発展に基づく正常な調整である」と説明したが、設立から繰り返される登記変更に対して会社の存続を不安視する声が上がった[7]。
2022年1月、総額4億ドル弱(約455億円)のシリーズA資金調達を完了した[8]。また同月、集度のブランドロゴが発表された[9]。
2022年6月に初のコンセプトカーである「ROBO-01」を発表し、2022年末の予約販売開始を予告した。[10]
体制変更
2022年6月30日、集度汽車の商業登記が再度変更され、百度の出資比率が55%から100%に引き上げられ、夏がCEOを辞任し、吉利が株主から撤退したと報道された[11]。これにより百度と吉利のパートナーシップの解消が噂されたが、百度・吉利両社とも「今回の変更は事業開発のニーズに基づいて実施した通常の調整である」という声明を発表した[11]。なお、母体である上海集度汽車のCEOは引き続き夏が勤め、百度・吉利の合弁体制にも変更は無かった[6]。
2023年8月、吉利65%、百度35%の出資により「杭州極与越汽車科技有限公司」が設立され、集度が新ブランド「極越」として再始動することが発表された[12]。加えて、コンセプトカーだったROBO-01の正式名称が01に決定し、中国工業情報化部から車両販売資格を正式に取得したことも発表された[12]。
この体制変更は、百度主体の体制では中国工業情報化部から新エネルギー車製造資格を取得する難易度が高いため、生産資格獲得のために吉利主体の体制に変更したことが理由とされる[12]。これにより百度主体による自動車生産は断念され、百度はApolloといった自動運転技術などのテクノロジー面で車両開発に参画することとなった[12][13]。
加えて、BYDやテスラなどのシェア拡大により新興EVメーカーの競争が激化しており、百度自体も自動運転から生成AIの開発に焦点を当て始めたことで、自動車市場における主導的な立場を縮小する方針に切り替わったと見られている[12]。
第一号車の発売以降
2023年10月、ROBO-01をベースとしたブランド第1号の量産車「01」を発売した[12][14]。
2024年4月、北京モーターショーにてブランド第2号のモデル「07」が初披露された[15]。
同年末の広州モーターショーにて、極越ブランド初のEVスポーツカー「ROBO X」が発表された[16]。
経営破綻

中国市場でEVの競争が激化する中、極越の販売台数は伸び悩み、2023年12月から2024年11月までの12か月累計販売台数はわずか1万4055台であった[17]。
極越は販売台数を確保するために採算を度外視した割引をした結果、2024年上半期ごろから財政状況が悪化した。百度からの資金援助が打ち切られ、同年9月~10月に満期を迎える信用貸付への返済も滞ったため、銀行からの融資も打ち切られた。これにより極越の財政状況は急速に悪化し、同年12月に経営破綻した[18]。
2024年末、極越の従業員を名乗る人物により、全従業員の40%をリストラする大規模な人員削減を開始したとの情報がSNSに投稿された。これに対して極越の法務部が疑惑を否定する声明を12月2日に発表した[19]。
しかしその直後の12月11日、全社員向けのビデオ会議において夏CEOが会社が危機的状況にあることを認めた。夏は「極越は困難に直面しており、早急な調整が必要だ」とコメントし、11月の社員の社会保険料を会社が支払っていないことも明らかにした[18]。従業員への給与支払いの目途も立たず、翌日12日には従業員が夏を取り囲んで抗議したり、販売店から備品を持ち出したりなど、混乱した状況となった[20][21]。
12月13日、極越の株主である吉利と百度は共同声明を発表し、極越の経営陣と協力して「従業員への社会保険料の支払いと退職補償問題への対応」「ユーザーに対するアフターサービスと修理・メンテナンスの維持」などを適切に解決するよう支援すると表明した[22]。12月15日、吉利傘下のLynk & Coが極越の車両のアフターサービスを担当することが発表された[23]。
沿革
- 2021年
- 2022年
- 2023年
- 8月 – 「杭州極与越汽車科技有限公司」が設立され、ブランド名が「極越」に改名。
- 10月 – ブランド第1号の量産車「01」を発売。また上海・嘉定にブランド初のサービスセンターが設立[28]。
- 2024年
- 2025年
- 1月 – 車両未受領の顧客への返金対応の開始。全従業員との退職補償契約の締結が完了[32]。
車種
脚注
- ^ “JI YUE” (英語). Zhejiang Geely Holding Group. 2024年3月2日閲覧。
- ^ 劉雨錕、葉展旗「中国の検索最大手「百度」、EV製造参入の本気度」『東洋経済オンライン』2021年1月20日。2024年3月3日閲覧。
- ^ "Baidu Announces Plan to Establish an Intelligent EV Company and Forms Strategic Partnership with Geely" (Press release) (英語). 百度. 10 January 2021. 2024年3月2日閲覧。
- ^ a b 刘佳 (2021年3月2日). “百度智能汽车“集度”正式注册,设有5个董事会席位” (中国語). 第一財経 (上海メディアグループ) 2024年3月3日閲覧。
- ^ 何書静「中国検索大手「百度」がEV参入を前倒しする訳」『東洋経済オンライン』2021年5月11日。2024年3月3日閲覧。
- ^ a b c 潘昱辰 (2022年12月7日). “集度汽车改名“幂航汽车”?集度回应” (中国語). 观察者网 2024年3月3日閲覧。
- ^ 龚梦泽 (2022年12月14日). “百度、吉利、集度三方首度回应集度汽车更名 吉利控股:退出集度传言不实仍是股东” (中国語). 证券日报 2025年5月19日閲覧。
- ^ 何書静「ネット検索「百度」傘下の新興EVが455億円調達」『東洋経済オンライン』2022年2月15日。2024年3月3日閲覧。
- ^ “百度发布集度JiDU品牌” (中国語). 界面新闻. (2022年1月18日) 2025年5月19日閲覧。
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: 不明な引数|1=
が空白で指定されています。 (説明)⚠ - ^ 「百度、自動運転EV「ROBO-01」のコンセプト車を公開 」『日本経済新聞』2022年6月8日。2024年3月3日閲覧。
- ^ a b 龚梦泽 (2022年7月2日). “集度回应吉利退出传闻:“正常调整持股不变” 被指正谋求独立上市” (中国語). 中国经济网 2024年3月3日閲覧。
- ^ a b c d e f 程潇熠 (2023年8月15日). “集度更名极越:吉利主控,百度变身技术提供方” (中国語). 腾讯新闻深网 2024年3月3日閲覧。
- ^ Xu Wei (2023年8月15日). “Geely, Baidu Launch Premium Smart Auto Brand Ji Yue” (英語). 第一財経グローバル (上海メディアグループ) 2024年3月3日閲覧。
- ^ "Geely and Baidu Launches AI Powered Electric ROBOCAR JiYue 01" (Press release) (英語). Zhejiang Geely Holding Group. 27 October 2023. 2024年3月2日閲覧。
- ^ 王志远 张真齐 (2024年5月22日). “让智能汽车“更聪明”,跃跃欲试的极越07有多少把握” (中国語). 中国青年报客户端 2025年5月19日閲覧。
- ^ 王志远 (2024年11月16日). “让智能汽车“更聪明”,跃跃欲试的极越07有多少把握” (中国語). 中国青年报客户端 2025年5月19日閲覧。
- ^ 36Kr Japan編集部「中国吉利と百度のEV合弁がまさかの経営破綻。複数部門解散、CEOが従業員に包囲され大揉め」『36Kr Japan』2025年1月31日。2025年5月19日閲覧。
- ^ a b 余聡、蒋飛、劉沛林、屈運栩「中国新興EV「極越」、"設立3年で経営破綻"の真相」『東洋経済オンライン』2024年12月14日。2025年5月19日閲覧。
- ^ 安宇飞 (2024年12月3日). “大规模裁员40%?紧急辟谣!” (中国語). 证券时报网 2025年5月19日閲覧。
- ^ a b “給料払えず 中国の新興EVメーカーが経営悪化 従業員がCEO取り囲む場面も”. テレ朝news. 2024年12月12日閲覧。
- ^ 浦上早苗 (2024年12月17日). “中国新興EVが突然“解散”で阿鼻叫喚。バイドゥと吉利が見殺しにした「極越」とは”. ビジネスインサイダー・ジャパン. 2025年5月19日閲覧。
- ^ 万健祎 (2024年12月13日). “刚刚!百度、吉利联合声明” (中国語). 证券时报网 2025年5月19日閲覧。
- ^ 远洋 (2024年12月15日). “百度和吉利高管发声:将负责极越智驾与售后问题” (中国語). IT之家 2025年5月19日閲覧。
- ^ “百度造车完成注册,又是北京亦庄” (中国語). 界面新闻. (2022年2月16日) 2024年3月3日閲覧。
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: 不明な引数|1=
が空白で指定されています。 (説明)⚠ - ^ 崔珠珠 (2021年12月27日). “百度CEO称集度首款汽车机器人将于2022年发布、2023年量产交付” (中国語). ロイター 2024年3月3日閲覧。
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: 不明な引数|1=
が空白で指定されています。 (説明)⚠ - ^ 李品 (2022年8月9日). “集度上海总部落成启用,2028年可实现年交付80万台汽车机器人” (中国語). 腾讯新闻深网 2024年3月3日閲覧。
- ^ 长河 (2022年11月28日). “集度汽车回应“在武汉成立新公司”:定位研发中心,仅负责“三智”等技术研发” (中国語). IT之家 2024年12月28日閲覧。
- ^ 赵菊玲 (2023年10月26日). “集度|极越(上海嘉定)交付中心正式启用!” (中国語). 新民网 2024年3月3日閲覧。
- ^ “400社以上が倒産や撤退 過当競争続く中国EV市場のし烈な消耗戦 経営破綻の新興メーカーの従業員「予兆はなくてすごく急に」(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース” (日本語). Yahoo!ニュース 2025年1月18日閲覧。
- ^ “400社以上が倒産や撤退 過当競争続く中国EV市場のし烈な消耗戦 経営破綻の新興メーカーの従業員「予兆はなくてすごく急に」 | TBS NEWS DIG (1ページ)”. TBS NEWS DIG (2024年12月20日). 2025年1月18日閲覧。
- ^ TBS NEWS DIG Powered by JNN (2024-12-20), 400社以上が倒産や撤退 過当競争続く中国EV市場のし烈な消耗戦 経営破綻の新興メーカーの従業員「予兆はなくてすごく急に」|TBS NEWS DIG 2025年1月18日閲覧。
- ^ 韩忠楠 (2025年1月17日). “极越汽车,宣布意向金/定金全额退款!” (中国語). 证券时报网 2025年5月19日閲覧。
外部リンク
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