出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/28 15:02 UTC 版)
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現代宇宙論において有効自由度 (ゆうこうじゆうど, effective degrees of freedom) とは、輻射優勢期の宇宙のエネルギー密度を担う相対論的な粒子が持つ自由度の総数のことをいう。 
 
 
定義
 
エネルギーに関する有効自由度
 
粒子種 
   
 
 輻射優勢期における有効自由度の変化を温度の関数としてプロットしたもの。
 
   
 の初期宇宙では素粒子標準模型に含まれるすべての素粒子が相対論的であり、それ以外の未知の素粒子の寄与がないならば、有効自由度は 
   
 となる[5]。その後宇宙が膨張し温度が下がるにつれて、非相対論的となった素粒子から順に有効自由度への寄与が脱落し、
   
, 
   
 は減少する。特に、
   
 付近でクォーク・ハドロン相転移が生じ、クォークとグルーオンの寄与が一斉に消滅する[6]。温度 
   
 付近では有効自由度は 
   
 まで減少する[6]。 
 
電子・陽電子対消滅と有効自由度
 
電子・陽電子の質量は 
   
 であり、この温度を境にして電子および陽電子が非相対論的となる。この現象は電子・陽電子対消滅として知られている。この際に、既にニュートリノは光子・バリオンと脱結合しているため、電子が担っていたエントロピーは光子へと流入するが、ニュートリノには流入しない[7]。その結果、ニュートリノの(運動学的な)温度 
   
 は光子の温度 
   
 に比べて低くなる。より正確な計算によると、ニュートリノ温度 
   
 は 
 
 - 
  
    
  
 
を満足する(関数 
   
 は上節で定義されるもの)[8]。従って、電子・陽電子対消滅以前は 
   
 により 
   
 であったのが、対消滅以後は 
   
 により 
   
 となる。 
この結果、電子・陽電子対消滅後の宇宙ではエネルギー有効自由度とエントロピー有効自由度に差異が生じ、
   
, 
   
 となる[9]。 
 
脚注
 
 
  
  - ^ a b c 松原, pp. 82-83. 
  
  - ^ a b c 松原, pp. 84-85. 
  
  - ^ a b c d 松原, pp. 85-86. 
  
  - ^ 松原隆彦. “上巻:第1刷から第2刷への訂正表”. 2020年7月28日閲覧。 
  
  - ^ 松原, p. 91. 
  
  - ^ a b 松原, p. 91-92. 
  
  - ^ 松原, p. 93. 
  
  - ^ 松原, pp. 93-95. 
  
  - ^ 松原, pp. 86-87. 
  
 
  
参考文献
 
 
関連項目