光延反応
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/11 06:43 UTC 版)
光延反応(みつのぶはんのう、英: Mitsunobu reaction)は、有機合成で用いられる化学反応のひとつで、アルコールのヒドロキシル基をアゾカルボン酸エステルとトリフェニルホスフィンで活性化して行なうSN2反応のことである。1967年に光延旺洋らによって報告された[1][2]。
アゾジカルボン酸ジエチル (DiEthyl AzoDicarboxylate, DEAD) とトリフェニルホスフィン、アルコールと求核剤(カルボン酸など)を混合するとアルコールのヒドロキシ基が求核剤によって置換された生成物が得られる。
なお、この反応で使用できる求核剤は pKa が14以下のブレンステッド酸に限られる。 用いた求核剤がブレンステッド酸でない場合、副生するヒドラジンジカルボン酸ジエチルのアニオンが中和されないため、こちらが優先的に求核剤として働いて活性化されたヒドロキシル基を置換してしまうためである。 この点を改良したアゾジカルボン酸ジエチルとトリフェニルホスフィン以外の試薬を組み合わせて活性化する反応系も角田、伊東らにより報告されている[3][4]。
(シアノメチレン)ホスホラン試薬
角田、伊東らはさらに、トリフェニルホスフィンと DEAD の機能を合わせ持つリンイリドを開発した。彼らは、(シアノメチレン)トリメチルホスホラン (R = –CH3, (cyanomethylene)trimethylphosphorane (CMMP))、(シアノメチレン)トリブチルホスホラン (R = –C4H9–n, (cyanomethylene)tributylphosphorane (CMBP))、の2種の試薬が、ともに単独で光延反応を効果的に起こすことを示した[5]。
試薬のリンイリド 1 は、カルボン酸 3 に対する塩基としての役割と、アルコール 2 といったん結合してその酸素を受け取る還元剤の役割の両方を果たす。この反応では生成物のエステル 7 とともに、アセトニトリル (6) とトリアルキルホスフィンオキシド 8 が副生する。
参考文献
- ^ Mitsunobu, O.; Yamada, M. Mukaiyama, T. (1967). “Preparation of esters of phosphoric acid by the reaction of trivalent phosphorus compounds with diethyl azodicarboxylate in the presence of alcohols”. Bull. Chem. Soc. Jpn. 40: 935-939. doi:10.1246/bcsj.40.935.
- ^ Mitsunobu, O.; Yamada, M. (1967). “Preparation of esters of carboxylic and phosphoric acid via quaternary phosphonium slats”. Bull. Chem. Soc. Jpn. 40: 2380-2382. doi:10.1246/bcsj.40.2380.
- ^ Tsunoda, T.; Yamamiya, Y.; Ito, S. (1993). “1,1'-(Aazodicarbonyl)dipiperidine-tributylphosphine, a new reagent system for mitsunobu reaction”. Tetrahedron Lett. 34: 1639-1642. doi:10.1016/0040-4039(93)85029-V.
- ^ 角田、伊東 アザクライゼン転位とその周辺-発送と展開. 有機合成化学協会誌, 1994, 52, 113.
- ^ Tsunoda, T.; Nagino, C.; Oguri, M.; Itô, S. (1996). “Mitsunobu-type alkylation with active methine compounds”. Tetrahedron Lett. 37: 2459. doi:10.1016/0040-4039(96)00318-8.
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