交響曲ヘ短調 (ブルックナー)
(交響曲第00番 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/31 00:27 UTC 版)

アントン・ブルックナーの交響曲ヘ短調、または習作交響曲(しゅうさくこうきょうきょく、独語:Studiensinfonie)ヘ短調WAB99は、1863年にオットー・キッツラーの指導のもと、楽式と管弦楽法の実習として作曲された交響曲である。
概要
ブルックナーは最晩年、若き日に作曲した譜面を整理し、残すに値しないと考えた作品は破棄しようとしたが、この交響曲に関しては "Schularbeit"(「宿題」)と記るすにとどめ、破棄しなかった。本作はその後も作曲者による改訂は行われなかったと考えられている。
この交響曲の作曲中に、キッツラーの指揮によるワーグナーの『タンホイザー』のリンツでの初演があり、ブルックナーは作曲の師であるキッツラーと一緒にこの歌劇を熱心に研究した。このことが、熱烈なワーグナー信奉者へとなるきっかけとなった。
なお、この曲以降に作曲された交響曲の順序は、第1番、第0番、第2番であり、現在ではナンバリングの通りの0番、1番、2番の順序は否定されている。
曲の名称
ブルックナーが作曲した交響曲のうち、第1番から始まる番号が命名されていない曲が2曲ある。そのうちの一つは、作曲者が "
初期のブルックナーらしい緩徐楽章で、特有ののどかで美しい旋律を聞かせてくれる。Cの部分では速度の速い楽節が挿入され、後年には見られない曲の運びである。ノヴァーク版ではアンダンテ・モルトの指定になっている。
ブルックナーらしいスケルツォで基本的な骨格は後年のものと同じだが、まだ小規模である。特にトリオは短い。スケルツォには反復指定があるが、トリオには反復がない。コーダーはなしである。ノヴァーク版ではトリオを「よりゆっくりと」の指定をつけている。
- 第4楽章 Finale:Allegro ヘ短調~ヘ長調、2分の2拍子、ソナタ形式
呈示部は3つの主題からなるが第2主題にブルックナーらしい内省的な美しさがみられる。第3主題は再現部に出てこない。第1楽章同様、提示部の反復指定がある。終結部はヘ長調に転調し、第1主題を奏して曲を締めくくる。後年の交響曲のような壮大なフィナーレではないが、ドラマティックに締めくくっている。
音源
最初の商業録音は、エリアクム・シャピラ指揮ロンドン交響楽団によって1972年にEMIレーベルに吹き込まれた。最初のCDは、1991年にテルデック・レーベルから発売された、エリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団の録音である。この録音は、演奏に47分かかっており、ティントナー指揮ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団の録音(ナクソス)に比べて、10分長い。ティントナーは両端楽章の呈示部の反復を飛ばしているためで、しかもティントナーは随所で金管楽器の音量を加減している。このほか、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮ソヴィエト国立文化省交響楽団による録音があり、さらに長い52分程度で演奏している。
スケルツォ楽章のオルガン版は、エルヴィン・ホルン演奏によるノヴァーリス・レーベルのCDが存在する。
関連項目
- キッツラーの練習帳 - この作品のスケッチが含まれる。
参考文献
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- 作曲家別名曲解説ライブラリー 5 ブルックナー (音楽之友社、1993年) ISBN 4276010454
- ブルックナー協会版スコア「交響曲ヘ短調 1863年稿」(第2次全集版、1973年出版)およびその序文(ドイツ語原文Leopold Nowak、英語訳Richard Rickett。日本語訳なし。)
- ブルックナー協会版スコア「交響曲ニ短調 NULLTE」(第2次全集版、1968年出版)の序文(ドイツ語原文Leopold Nowak、英語訳Richard Rickett。日本語訳なし。)
外部リンク
- 交響曲ヘ短調の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 交響曲ヘ短調 (ブルックナー)のページへのリンク