リスクアプローチとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > リスクアプローチの意味・解説 

リスク・アプローチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/15 07:29 UTC 版)

リスク・アプローチ (: risk-based approach) は、財務諸表監査の手法のことである。財務諸表監査において世界中で採用されている手法であり[1]、現代の監査の基本的なモデルとされる[2]

概要

リスク・アプローチは、監査リスクを低く抑えることを目的とする。リスク・アプローチに基づく監査は以下の手順で行われる。

  • リスク評価手続
  • 発見リスクの水準の決定
  • 監査計画の策定
  • リスク対応手続

リスク・アプローチの考え方は、監査基準 「実施基準・基本原則1」(2016年現在)において次のように説明されている。

監査人は、監査リスクを合理的に低い水準に抑えるために、財務諸表における重要な虚偽表示のリスクを評価し、発見リスクの水準を決定するとともに、監査上の重要性を勘案して監査計画を策定し、これに基づき監査を実施しなければならない。

また、監査基準 「実施基準・基本原則2」(2016年現在)はいわゆる「事業上のリスクを重視したリスク・アプローチ」を行うべきであると規定している(後述)。

監査リスク

監査リスク (AR:Audit-Risk)とは、財務諸表の重要な虚偽表示を見逃して誤った監査意見を表明してしまう可能性のことである。監査リスクは監査の保証水準の補数であり、重要な虚偽表示リスクと発見リスク が組み合わさったものである。

重要な虚偽表示リスク (RMM:Risk of Material Misstatement) - 監査が行われない場合に、財務諸表に重要な虚偽表示が存在するリスク。固有リスクと統制リスクから構成される。
  • 固有リスク (IR:Inherent-Risk) - 関連する内部統制が存在しないとしたときに(個別にまたは集計して)重要な虚偽表示が存在する可能性
  • 統制リスク (CR:Control-Risk) - 企業の内部統制によって重要な虚偽表示が防止あるいは適時に発見・是正されない可能性
発見リスク (DR:Detection-Risk) -監査人の監査手続によっても重要な虚偽表示が発見できないリスク

それぞれのリスクを確率とすると、監査リスクは以下のように表される。

監査リスク = 固有リスク × 統制リスク × 発見リスク[3]
監査リスク =  1 - 監査の保証水準[3]

事業上のリスクを重視したリスク・アプローチ

事業上のリスクを重視したリスク・アプローチとは、 アサーション・レベル (財務諸表項目レベル)のみならず、財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示リスクを評価する点に特徴がある。また、内部統制を含む、企業及び企業環境を理解することを求められる。監査基準 「実施基準・基本原則2」(2016年現在)は以下のように述べている。

監査人は、監査の実施において、内部統制を含む、企業及び企業環境を理解し、これらに内在する事業上のリスク等が財務諸表に重要な虚偽の表示をもたらす可能性を考慮しなければならない。

意義

リスク・アプローチは日本においては平成3年に導入された。その意義は二つある。

  • 監査人が時間・人員・費用を効率的・効果的に配分できるようになり、監査の失敗が起きる可能性を低くするこができるようになった。
  • 監査人が自らの判断過程をより論理的に説明することが可能となった。

また、平成17年の監査基準の改訂で、事業上のリスクを重視したリスク・アプローチが導入された。

関連項目

脚注

  1. ^ 長吉眞一他著『監査論入門 第二版』中央経済社、2015年、p.29。
  2. ^ 盛田良久・蟹江章・長吉眞一編著『スタンダードテキスト監査論 第3版』中央経済社、2013年、pp.14-15。
  3. ^ a b 南成人・中里拓哉・高橋和則『財務諸表監査の実務 クラリティ版対応』中央経済社、2015年、pp.1-2。

参考文献

  • 長吉眞一他著『監査論入門 第二版』中央経済社、2015年。
  • 南成人・中里拓哉・高橋和則『財務諸表監査の実務 クラリティ版対応』中央経済社、2015年。
  • 盛田良久・蟹江章・長吉眞一編著『スタンダードテキスト監査論 第3版』中央経済社、2013年。

リスク・アプローチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/03 00:05 UTC 版)

財務諸表監査」の記事における「リスク・アプローチ」の解説

詳細は「リスク・アプローチ」を参照実施基準一・1> 監査人は、監査リスク合理的に低い水準抑えるために、財務諸表における重要な虚偽表示リスク評価し発見リスク水準決定するとともに監査上の重要性勘案して監査計画策定し、これに基づき監査実施しなければならない。 この監査手法をリスク・アプローチという。従来重要な虚偽表示リスクは「固有リスク」と「統制リスク」と二つリスク分かれていたが、平成17年改定され監査基準では「重要な虚偽表示リスク」に統合され原則として両者別々に評価することはなくなった。ただし、リスク・アプローチの考え方としては、重要な虚偽表示リスク固有リスク統制リスクから構成されているものとしている。

※この「リスク・アプローチ」の解説は、「財務諸表監査」の解説の一部です。
「リスク・アプローチ」を含む「財務諸表監査」の記事については、「財務諸表監査」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「リスクアプローチ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「リスクアプローチ」の関連用語

リスクアプローチのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



リスクアプローチのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのリスク・アプローチ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの財務諸表監査 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS