リコーオートハーフ
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メーカー | 理研光学工業 |
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レンズ | リコー 25mm F2.8 3群4枚構成 |
焦点 | 単焦点 |
露出 | 自動 |
ストロボ | アクセサリーシュー |
シャッター | 精工舎 BS 11 |
シャッター速度 | 1/125(AE時) 1/30(フラッシュ時) |
焦点領域 | 2.5m |
寸法 | 幅90mm 高さ71.5mm 奥行き31mm |
重量 | 270g |
生産地 | 日本国 |
リコーオートハーフシリーズ(英: Ricoh Auto Half)は、理研光学工業(後にリコー)[注 1]が製造販売したハーフサイズカメラである。
概説
理研光学工業に入社して4年目の安宅久憲は、同僚の若手技術者らと、もっと簡単に撮れるカメラがあれば、女性にも普及するのではないかと話し合っていた[2]。1961年5月頃、時間に余裕ができたことから、操作はシャッターを押すだけで、露出が合った写真が次々と撮れ、尚且つ小型でハンドバッグに入る全自動カメラの設計を始めた[2]。目標とする外寸はタバコの箱と同じとした[3]。その設計図が上層部の目に止まり、正規の製品開発計画として採用された[2]。開発名はタバコの銘柄に由来するLM[注 2]とした[2]。小型化のために、ほとんどの部品が新開発されることとなった[2][3]。フィルムの自動巻き上げ動力源に薇バネを採用することに決めたが、外注先の理解を得るのに苦労した[2]。外観は斬新な意匠とし、製品の革新性が表現された[2][3]。1962年11月に発売されると、日本ではリコーカメラ販売[注 3]の営業力も手伝い人気商品となった[2]。レンズは比較的広角の25mm・F2.8で単焦点、セレン光電池式露出計を用いた自動露出機能を持ち、シャッター押下毎にフィルムは自動巻き上げられる[2]。ハーフ・サイズ・カメラとして先発のオリンパスペンと大いに競い合い、1982年の販売終了までの20年間で、累計製造台数は600万台に達したと言われている[2][3][5]。
機種リスト
オリジナル
- リコーオートハーフ – 日本では1962年11月に発売され、価格はストラップが付いて13,800円だった[6]。外寸は、幅90mm、高さ71.5mm、奥行き31mm[6]。重量は270g[6]。
- リコーオートハーフゾーンフォーカス – アンスコの求めに応じ、リコーオートハーフにゾーン・フォーカシング機能を付加した製品[注 4]を供給した[7]。日本でも自社製品として1963年11月に発売され、価格はストラップが付いて13,800円だった[7]。外寸は変わらず、重量は297g[7]。
- リコーオートハーフS – シャッター・リリースが上部に移るなど、内部構造が見直された[8]。セルフ・タイマーを装備し、裏蓋は本体に蝶番で繋いだ[9]。新たに前面に貼り付けたアルマイト板は変更が容易で、色違いなど多くの変種が製造された[8]。日本では、1965年3月に発売され、価格はケース及びストラップが付いて13,800円だった[8]。外寸は、幅89mm、高さ67mm、奥行き34.5mm[8]。重量は350g[8]。
- リコーオートハーフE – 裏蓋を本体に蝶番で繋いだ[9]。セルフ・タイマーは装備していない[9]。新たに前面に貼り付けたアルマイト版は変更が容易で、色が違うなど多くの変種が製造された[10]。日本では、1966年11月に発売され、価格はケース及びストラップが付いて12,800円だった[10]。外寸は変わらず、重量は330g[10]。
- リコーオートハーフSE - フィルムを装填した際に、自動的に1コマ目までフィルムが送られる[9]。日本では、1967年9月に発売され、価格はケース及びストラップが付いて14,800円からだった[11]。外寸は、幅89mm、高さ67mm、奥行き34.5mm[11]。重量は350g[11]。
- リコーオートハーフSE2 – リコーオートハーフの最終改良型[5]。ホットシューが装備された[9]。日本では、1976年11月に発売され、価格は18,800円からだった[5]。外寸は変わらず、重量は350g[5]。
- リコーオートハーフE2 - リコーオートハーフSE2からセルフ・タイマー機能を省いた[5]。ホットシューが装備された[9]。日本では、1976年11月に発売され、価格は17,800円だった[5]。外寸は変わらず、重量は325g[5]。
派生商品
ハーフサイズカメラ
- リコーオートハーフSL (1970年4月発売) - 35mm・F1.7の大口径レンズを装着した[9]。価格は17,800円からだった[12]。外寸は、幅94.5mm、高さ67mm、奥行き61mm[12]。重量は電池別で395g[12]。[注 5]
- リコーテレカ35 (1970年4月発売) - 単眼鏡とリコーオートハーフEを一体とした[13]。
- リコーテレカ240 (1971年発売) - 双眼鏡とリコーオートハーフEを一体とした[14]。価格は88,000円だった。外寸は、幅190mm、高さ194.5mm、奥行き90mm。重量は1,700g。
- リコーオートハーフEF (1978年3月発売) - ピッカリコニカ[注 6]がヒット商品となった影響から、エレクトロニック・フラッシュを内蔵した[15]。価格は25,800円だった[15]。外寸は、幅120.5mm、高さ76.5mm、奥行き41.5mm[15]。重量は電池別で395g[15]。1978年度グッドデザイン賞を受賞[16]。
- リコーオートハーフEF2 (1979年12月発売) - リコーオートハーフEFの改良機で、内蔵エレクトロニック・フラッシュが、ポップアップ式になった[17]。価格は26,800円だった[18]。外寸は、幅120mm、高さ72mm、奥行き44mm[18]。重量は電池別で380g[18]。
フルサイズカメラ

- リコーオートショット (1964年4月発売) - リコーオートハーフの設計を再構成してスプリングモーター搭載の35mmフルサイズレンズシャッターカメラとした最初の機種。リケノン35mm・F2.8 3群4枚。レンズキャップがフラッシュガンとして使えた。重量440g。[19]

リコーハイカラー35を米国シアーズ社へのOEM供給仕様とした機種
- リコーハイカラー35 (1968年9月発売) - リコーオートショットのセレン光電池EEをCdS測光に変更したスプリングモーター搭載の35mmフルサイズカメラ。リコー35mm・F2.8 3群4枚。生産時期によって前面にあったシャッターボタンがが上部に変更、シューの有無、外装がシルバー・ブラックのバリエーションがある。445g。公式サイトに「見分けかた レンズを囲む大きなセレン光電池」とあるのは誤りである。[20]
- リコーハイカラー35S (1970年10月発売) - リコーオートショットのセレン光電池EEをCdS測光に変更したスプリングモーター搭載の35mmフルサイズカメラ。リコー35mm・F2.8 3群4枚。セルフタイマーつき。シャッターボタンは上部に変更。470g。公式サイトに「見分けかた レンズを囲む大きなセレン光電池」とあるのは誤りである。[20]
- リコーハイカラーBT (1971年2月発売) - リコーハイカラー35の外装デザインを黒色プラスチックに変更したスプリングモーター搭載の35mmフルサイズカメラ。リコー35mm・F2.8 3群4枚。専用フラッシュ用独自シューつき。470g。[21]
- リコーAD-1 (1979年7月発売) - リコーハイカラーBT以来約8年半ぶりに開発されたスプリングモーター搭載の35mmフルサイズカメラ。連写機能、日付写し込み機能が搭載された[22]。価格は33,500円だった[23]。外寸は、幅112.5mm、高さ76.5mm、奥行き52.1mm[23]。重量は390g[23]。別売りアクセサリーとして防水パックが用意された。
- リコーA-2 (1980年3月発売)- リコーAD-1から日付写し込み機能を省略した[23]スプリングモーター搭載の35mmフルサイズカメラ。価格は25,800円だった[23]。外寸は、幅112.5mm、高さ76.5mm、奥行き51.7mm[23]。重量は390g[23]。
インスタマチックカメラ
1963年にコダック社が発表したインスタマチックカートリッジフィルムに26×26mmの画面サイズを撮影するシステムを採用したカメラ

- リコマチック 126 (1965年11月発売)- スプリングモーター搭載のインスタマチックカメラ。リコー35mm・F2.8 3群4枚。AG1 バルブ用フラッシュガン内蔵。500g。[24]公式サイトに「画面サイズ 28×28mm」とあるのは誤りである。
- リコー 126 C オートマチック (1969年11月)- スプリングモーター搭載のインスタマチックカメラ。フラッシュキューブ用ソケット搭載。リコー40mm・F2.8 3群4枚。500g(発光用電池別)。[25]公式サイトに「画面サイズ 28×28mm」とあるのは誤りである。
- リコー 126 C オート Cds (1969年11月)- スプリングモーター搭載のインスタマチックカメラ。フラッシュキューブ用ソケット搭載。CdS測光搭載。リコー43mm・F2.8 3群4枚。500g(露出計、発光用電池別)。[25]公式サイトに「画面サイズ 28×28mm」とあるのは誤りである。
余聞
- 三愛ドリームセンターに入居するリコー直営のフォト・ギャラリー「RING CUBE」で、リコーオートハーフが「密かなブーム」だとして外観を形取ったピン・バッジが販売されていた[26]。
- 2024年に発売されたハーフサイズカメラ「PENTAX 17」[27]の設計には、リコーオートハーフの技術も取り入れられた[28]。
脚注
注釈
- ^ 1963年4月に理研光学工業株式会社は、株式会社リコーに商号を変更した[1]。
- ^ LMの由来となったL&Mは、リゲット・アンド・マイヤーズ(現在のフィリップ・モリス)が1953年から販売している紙巻きタバコの銘柄である[4]。
- ^ リコーカメラ販売株式会社は、理研工学工業株式会社の販社。
- ^ アンスコメモ II オートマチック(英: Ansco Memo II Automatic)。
- ^ この機種のみとなる4群6枚の大口径レンズリコー35mmF1.7、またCdSを用いた測光機能が搭載され、シャッター速度も1/30~1/250秒の段階調節が可能なものとなっており、セルフタイマーも備える高性能機種。ピントは可動式であり、ゾーンフォーカス方式となっている。また他機種のように強制的な絞り優先機構ではなく、任意に絞り、シャッター速度を変化させられるため、ある程度写真機の操作に慣れた中級者向けのカメラと言える。しかし、小型のボディに大口径レンズや測光機能といった高性能部品を詰め込みすぎた印象は否めず生産数は少ない。またボディの厚みも他の機種に比べるとかなり厚くなっている。鏡面シルバーと波紋柄ブラックの二色が発売された。
- ^ 1975年に小西六写真工業が発売した世界初の商業的に成功したエレクトロニック・フラッシュ内蔵カメラ。
出典
- ^ “リコーのあゆみ”. リコーについて. リコー. 2024年2月28日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 安宅久憲「リコーオートハーフはこうして開発した」『カメラレビュー クラシックカメラ専科』第29号、朝日ソノラマ、東京、1994年6月25日、92頁、全国書誌番号:00031026、 オリジナルの2005年1月28日時点におけるアーカイブ、2024年2月28日閲覧。
- ^ a b c d “カメラ史に残る長寿命機 リコーオートハーフ (1962)”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ “Building leading brands” (英語). Investor Relations. Philip Morris International Inc.. 2024年2月28日閲覧。
- ^ a b c d e f g “リコー オートハーフ SE2 / E2”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ a b c “リコー オートハーフ”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ a b c “リコー オートハーフ ゾーンフォーカス”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ a b c d e “リコー オートハーフ S”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g “RICOH AUTOHALFを徹底解説。作例から中古相場・使い方まで”. ONE SCENE(ワンシーン). ワンシーン. 2024年2月29日閲覧。
- ^ a b c “リコー オートハーフ E”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ a b c “リコー オートハーフ SE”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ a b c “リコー オートハーフ SL”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ 高島鎮雄 (2018年11月10日). 私の珍品カメラ その4 (PDF). AJCC研究会. 東京: 全日本クラシックカメラクラブ. 2024年2月28日閲覧.
- ^ Joe McGloin. “RICOH HALF FRAME CAMERAS” (英語). THE CAMERA SHOP. 2024年2月28日閲覧。
- ^ a b c d “リコー オートハーフ EF”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ “35ミリハーフサイズカメラ オートハーフEF”. 受賞ギャラリー. 公益財団法人日本デザイン振興会. 2024年3月2日閲覧。
- ^ Keith South. “Ricoh Auto Half EF2, 35mm half frame camera, c1979” (英語). Living Image Vintage Camera Museum. 2024年2月28日閲覧。
- ^ a b c “リコー オートハーフ EF2”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ “リコー オートショット”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2025年9月22日閲覧。
- ^ a b “リコー ハイカラー”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2025年9月22日閲覧。
- ^ “リコー ハイカラーBT”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2025年9月22日閲覧。
- ^ いいじまもとお (2020年10月19日). “第83夜 ゼンマイだって連写も出来る:22時54分の寫眞機”. note. 2024年2月29日閲覧。
- ^ a b c d e f g “リコー AD-1 / A-2”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- ^ “リコマチック 126”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2025年9月23日閲覧。
- ^ a b “リコー 126 C オートマチック リコー 126 C オート Cds”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2025年9月23日閲覧。
- ^ “グッズ販売”. RING CUBE. リコーイメージング. 2024年2月28日閲覧。
- ^ 宮本義朗 (2024年6月18日). “2024年のいま誕生したフィルムカメラの新製品「PENTAX 17」”. デジカメWatch. 株式会社インプレス. 2024年6月20日閲覧。
- ^ 曽根原昇 (2024年6月18日). “【実機速報】フィルムカメラ新モデル「PENTAX 17」のデザインに詰め込まれたコダワリとは”. デジカメWatch. 株式会社インプレス. 2024年6月20日閲覧。
参考文献
- 飯田鉄、良心堂『ハーフサイズカメラ遊楽』枻出版社、東京〈枻文庫〉、2006年9月。 ISBN 4-7779-0617-5。 NCID BA79860210。全国書誌番号: 21099678。
- 龍樹『20%オートハーフを楽しむ本』枻出版社、東京〈枻文庫〉、2007年9月。 ISBN 978-4-7779-0834-9。
外部リンク
- “リコーカメラ全機種リスト > 1961-1980”. RICOHブランドフィルムカメラ. リコーイメージング. 2024年2月27日閲覧。
- 安宅久憲「リコーオートハーフはこうして開発した」『カメラレビュー クラシックカメラ専科』第29号、朝日ソノラマ、東京、1994年6月25日、92頁、全国書誌番号: 00031026、 オリジナルの2005年1月28日時点におけるアーカイブ、2024年2月28日閲覧。
- いずみたく作曲「RICOH(リコー)オートハーフ」CM - YouTube
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