ポール・ロワイヤル学派とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ポール・ロワイヤル学派の意味・解説 

ポール・ロワイヤル学派

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/07 19:09 UTC 版)

ポール・ロワイヤル学派フランス語: École de Port-Royal)は、17世紀フランスポール・ロワイヤル修道院を中心に展開されたカトリック内部の宗教的・哲学的改革運動を行った組織である。ジャンセニスムの思想に基づき[1]、厳格な道徳観と内面の信仰を重視し、教育・論理・言語の分野にも多大な影響を与えた[2]

概要

ポール・ロワイヤル学派はポール・ロワイヤル修道院を拠点に活動していた。17世紀には宗教改革を志向する知識人たちの活動の拠点となった。この学派は、コルネリウス・ヤンセンアウグスティヌス恩寵論に立脚したジャンセニスムを背景に[1]、カトリック教会内の形式主義的傾向を批判し、より厳粛で内面的な信仰のあり方を追求した[3]

中心人物には、アントワーヌ・アルノー(Antoine Arnauld)、ピエール・ニコル(Pierre Nicole)、ジャン・ラシーヌ(Jean Racine)らがいる [4]

哲学と教育

ポール・ロワイヤル学派は、哲学・論理・教育においても重要な成果を残している[2]。代表的な著作として、アルノーとニコルによる『論理学、あるいは思考の技法(La Logique ou l’art de penser)』(1662年)は、後に『ポール・ロワイヤル論理学』として有名になりデカルトやパスカルの哲学を融合させた教科書として、現代まで大きな影響を与えている。この論理学書は、フランス人の思考方法の模範となった教科書である[5]

ジャンセニスムとの関係

ポール・ロワイヤル学派は、ジャンセニスムの思想的拠点であり、特にジャンセニウスの『恩寵論』の影響のもと、様々な主題をめぐってローマ教皇庁イエズス会としばしば対立した[6]。教義論争は政治問題にも発展し、修道院は一時閉鎖・解散に追い込まれることもあった[7]

影響

ポール・ロワイヤル学派は、フランスにおける教育の近代化に貢献するとともに、合理主義哲学や宗教思想にも深い影響を残した[7]

関連項目

出典

  1. ^ a b 哲学思想辞典・岩波 1998, p. 704.
  2. ^ a b 哲学思想辞典・岩波 1998, p. 1503.
  3. ^ 壺齋散人. “パスカルにおける神と人間”. 知の快楽. 壺齋散人. 2025年5月4日閲覧。
  4. ^ Dominique DESCOTES. “Pensées de M. Pascal sur la religion et sur quelques autres sujets, qui ont été trouvées après sa mort parmi ses papiers”. Dominique DESCOTES. 2025年5月4日閲覧。
  5. ^ 法政大学出版局. “ポール・ロワイヤル論理学”. 法政大学出版局. 2025年5月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年5月4日閲覧。
  6. ^ 塩川 2007, p. 466-467.
  7. ^ a b 西川 1994, p. 713.

参考文献

  • 青木国夫、青木保青野太潮、赤城昭三、赤堀庸子、赤松昭彦、秋月觀暎、浅野守信 ほか 著、廣松渉子安宣邦; 三島憲一 ほか 編『岩波 哲学・思想辞典』(第1版)岩波書店、1998年3月18日。ISBN 4-00-080089-2 
  • 西川宏人 著、渡邊靜夫 編『ポール・ロアイヤル運動』 21巻(第2版第1刷)、小学館〈日本大百科全書〉、1994年1月20日、712-713頁。 ISBN 4-09-526121-8 
  • 塩川徹也 著、下中直人 編『ポール・ロアイヤル運動』 26巻(改訂新版)、平凡社〈世界大百科事典〉、2007年9月1日、466-467頁。 



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  ポール・ロワイヤル学派のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ポール・ロワイヤル学派」の関連用語

ポール・ロワイヤル学派のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ポール・ロワイヤル学派のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのポール・ロワイヤル学派 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS