ピアノ三重奏曲第2番 (シューベルト)とは? わかりやすく解説

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ピアノ三重奏曲第2番 (シューベルト)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/29 15:28 UTC 版)

『ピアノ三重奏曲第2番』
ドイツ語: Klaviertrio No. 2
シューベルトの直筆譜
ジャンル ピアノ三重奏曲
作曲者 フランツ・シューベルト
作品番号 作品100D929
作曲 1827年11月

ピアノ三重奏曲第2番変ホ長調 作品100D929(Piano Trio No. 2 in E-flat major (Es-dur) , D. 929)は、フランツ・シューベルトが作曲したピアノ三重奏曲。シューベルトらしい歌心に溢れ、また、曲調や調性が途中で大胆に変化する点は、第1番とは異質であり、ドラマチックとさえ言える曲。更に、時折り漂う寂寥感は、晩年のシューベルトならではの深淵を垣間見せる。全4楽章の構成で、演奏時間は約45分(下記のカットなしでは約50分)。

概要

第2番は1827年11月の作曲とされ、歌曲集「冬の旅」や、後期3大ピアノソナタと言われる第19番第20番第21番が生み出された時期でもあるが、シューベルトの健康は勝れなかった。しかし、頭痛とめまいに悩まされながらも、驚くべき余力で創作を進め、晩年の傑作群に加えていった。

初演

本作品は、シューベルトの生前からすでに有名で 少なくとも2回はウィーン楽友協会のホールで演奏されている。1度目は1827年12月26日、2度目は 翌1828年3月26日。どちらも大変に好評で、シューベルト自身も友人のヒュッテンブレンナーライプツィヒの出版者へ送った手紙の中で、とりわけ聴衆に喝采されたこの曲のことを自慢している。また、後者(1828年3月)の演奏会では、一夜にして320フローリンを稼ぎ、大成功したと言われる。

出版

1828年の秋、ライプツィヒのプロープスト社から、作品100として出版される。シューベルトの存命中に、オーストリア国外から出版された唯一の曲であった。ただし、おそらくシューベルト自身の手により終楽章に大幅なカットが加えられており、現在のペータースなどの楽譜にも踏襲されている[1]。自筆譜による原典版はベーレンライターから出版されている。

構成

第1楽章 : アレグロ、変ホ長調ソナタ形式(3/4拍子 634小節)

第1主題:


\relative c'' {
\time 3/4
\key ees \major
ees2.\f | bes2 g4 | aes( c) bes8-. g-. | ees4 r r |
ees4\p( g) ees8-. c-. | g'4-. g-. r | f( aes) f8-. d-. | bes'4-. bes-. r |
b-.\f b r | c-. c-. r | f,8-.\< g-. aes-. bes-. c-. d-.\! | ees2.\ff
}

第2主題:


\relative c'' {
\time 3/4
\key ees \major
d4-.\pp d8-.[ d-. d-. d-.] | b4-. b8-.[ b-. b-. b-.] | cis4-. cis8 [( fis) fis-. ees-.] | d2.
d,4-. d8-.[ d-. e-. fis-.] | g4 \appoggiatura g16 e'8-.[ d-. c-. b-.] | a2\trill \grace { g16[ a8] } b-.[ a-.] | g4-.
}

力強く重厚なユニゾン主題で始まり、ささやくようなピアノの第2主題が対比される。


第2楽章 : アンダンテ・コン・モート、ハ短調三部形式(2/4拍子 212小節)

\relative c'' {
\time 2/4
\key ees \major
g4\p(-. g)-. | \grace { aes16[( bes] } c4.)( bes16 aes) | 
g8( ees') b8.\trill( a32 b) | c2 | c4. c8 |
\grace {c16(} bes4)( g) | g8( ees') b8.\trill( a32 b) | c2 |
ees4\<( d\!) | \grace {d16(} g,4.\>) g8\! | g4\dim( a8. g16\!) | g2\pp |
}

ピアノの歩みの上に、チェロによるロマンティックな主題が重なり、ヴァイオリンも加わって歌い交わす優美な楽章。この主題は、シューベルトが1827年にウィーンで耳にした「太陽は沈み」というスウェーデンの民謡に基づいて書かれている。


第3楽章 : スケルツァンド、アレグロ・モデラート、変ホ長調、三部形式(3/4拍子 175小節)

\relative c'' {
\time 3/4
\key ees \major
\partial 4
ees,8\p( g)
bes4-. bes-. bes-.
bes( c8 d ees f)
g4( ees) c-.
bes2 ees4-.
d( f8 ees d c)
bes4( g) aes-.
g( bes8 aes g f)
ees2
}

カノンの手法を使ったスケルツォ。トリオは変イ長調


第4楽章 : アレグロ・モデラート、変ホ長調、ロンド・ソナタ形式(6/8拍子 748小節)

晩年のシューベルトについてよく形容される「天国的な長さ」の典型のような楽章。後半では、これまでの楽章の主題も回想される。原典版では、出版時にカットされた展開部の98小節を含め、846小節にも及ぶ[1]

(小節数はオイレンブルクのスコアによる)

参考

第2楽章の主題は、映画『バリー・リンドン』のラヴ・シーンに使われ、エロスとタナトスとを同時に感じさせる名選曲となっている。

同じく第2楽章は、映画『メカニック』にも、主人公の殺し屋がLPレコードをかけて聴く場面があり、それは更にラストにも登場する。

脚注

  1. ^ a b シューベルト ピアノトリオ第2番 4楽章

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