バーチャル大腸内視鏡検査とは? わかりやすく解説

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バーチャル大腸内視鏡検査

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/09 14:14 UTC 版)

バーチャル大腸内視鏡検査
Virtual colonoscopy
治療法
直腸腫瘤のCTコロノグラフィー。左の画像はボリュームレンダリング、右の画像は薄い断面像である。大腸を拡張するために送気する直腸チューブも示されている。
MeSH D023881
MedlinePlus 007253
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バーチャル大腸内視鏡検査: virtual colonoscopyVCCTコロノグラフィー、CT pneumocolonとも呼ばれる)は、CTスキャンまたは磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、結腸(大腸)の最下部である直腸から小腸の下端までの2次元および3次元画像を生成し、その画像を電子表示装置に表示する検査方法である[1][2]。この検査は大腸がんやポリープスクリーニングに用いられ、憩室症の検出にも役立つ。バーチャル大腸内視鏡検査では、3次元に再構成された腸管の内腔像が得られる。VCには大腸以外での疾患や異常を発見するという副次的な利点もある。

検査

逆行性に行われた直腸S状結腸のバーチャル大腸内視鏡検査の様子を示す動画。動画の中盤、画面上部に、大腸内視鏡で確認された10 mmのポリープが見られる。動画は結腸への送気に使用された直腸チューブの先端で終わる。

VCの準備は様々あるが、通常、患者は検査の前日に自宅で下剤やその他の経口薬を服用し、便を大腸から排出するよう指示される。また、座薬を使用して直腸に残っている便を除去することもある。下剤で排出されなかった残留便をコーティングするための溶液が患者に投与されることもあり、これは「タギング法(fecal tagging)」と呼ばれる。これにより医師(通常はコンサルタント放射線科医)は3次元画像を観察し、偽陽性の結果につながる可能性のある残留便を効果的に判別することができる[要出典]

処置の手順

VCは、病院または医療センターの放射線科で行われる。検査時間は約10分である[3]鎮静薬は必要ない[要出典]

  • 患者は検査台に仰向けに寝かされる。
  • 検査部位の筋肉の動きを最小限に抑えるため、ブチルスコポラミンを静脈内投与する場合もある。
  • 直腸に細いチューブが挿入され、チューブを通じて空気を送り込んで結腸を膨らませ、鮮明に観察できるようにする。
  • 検査台がスキャナー内を移動し、結腸の全長に沿って2次元の断面画像を連続して撮影する。コンピュータプログラムがこれらの画像を組み合わせ、ビデオ画面上で観察できる3次元画像を生成する。
  • 画像の歪みを避けるため、患者はスキャン中に息を止めるよう指示される。
  • 次いで患者をうつ伏せの姿勢にして再度スキャンを行う。

検査後、スキャナーで生成された画像が処理されて、3次元画像やフライスルー画像(通常の大腸内視鏡検査のように腸管内を移動できる動画プログラム)を作成する。放射線科医が結果を評価して異常の有無を確認する。

検査後、患者は通常の生活に戻ることができるが、異常が見つかり、通常の大腸内視鏡検査が必要であれば、当日中に検査を受けることもある[3]

長所

大腸内視鏡検査を要しないことから、VCは一部の患者にとって苦痛の少ない検査方法である。そのため鎮静薬の投与が不要で、患者は検査後、他の人の助けを借りずに通常の生活に戻ったり、帰宅することができる。また従来の検査で使用される鎮静薬に対して副作用反応を起こす患者もいるため、鎮静薬を投与しないことでそのリスクも低減される。VCは、バリウム注腸X線検査下部消化管造影英語版とも呼ばれる)よりも鮮明で詳細な画像を提供する。さらに、従来の結腸内視鏡検査では、10人に1人の患者は、右結腸(盲腸)の完全な検査が完了しなかった[4]。また、従来の大腸内視鏡検査や下部消化管造影検査は長時間を要していた[5]

VCには、大腸以外での疾患や異常を発見できるという副次的な利点もある[6]。定期的なVCを受けた無症状の成人を対象としたある研究では、300件のスクリーニングにつき約1件の大腸以外の臓器における予想外のがんが発見され、さらに500件のスクリーニングにつき約1件の浸潤性大腸がんが発見されたことが明らかになった。つまり、200件のスクリーニングにつき約1件の予想外のがんが発見されたことになる。最も多く検出された悪性腫瘍は浸潤性結腸直腸がんであり、次いで腎細胞がんであった[7]

短所

バーチャル大腸内視鏡検査では組織サンプルの採取(生検)やポリープの切除ができないため、異常が見つかった場合は通常の大腸内視鏡検査を行う必要がある[8]。また、VCでは通常の大腸内視鏡検査ほど詳細な画像は得られないため、直径2-10 mm未満のポリープは画像に表示されない可能性がある[9]。さらに、CTによるバーチャル大腸内視鏡検査では、患者はミリグレイ単位の電離放射線に暴露される[10]。いくつかの研究では、超低線量VCでも、空気と大腸内壁を構成する組織とのX線吸収率の大きな差により、腸疾患の検出に同等の効果があることが実証されている。大多数の医療機関および研究機関は、大腸がんスクリーニングの「ゴールドスタンダード」として光学的な大腸内視鏡検査を採用している。しかし、大腸がんスクリーニングにおいてVCを推奨する放射線科医もいる。バーチャル大腸内視鏡検査は、大腸全体を完全に視覚化できるため、前がん性のポリープやがんを発見する機会が増え、これらの病変部に対して迅速な診断検査や治療的切除が可能になるとして、一部の専門家から支持されている[要出典]

代替法

MRIコロノグラフィー(MRI colonography、MRC)は、放射線被曝なしで同様の画像化が可能である。従来の大腸内視鏡検査よりも感度は劣るが、より大きな腺腫や腫瘍を高い特異度で検出することができる[11]

脚注

  1. ^ Heiken, JP; Peterson CM; Menias CO (November 2005). “Virtual colonoscopy for colorectal cancer screening: current status: Wednesday 5 October 2005, 14:00–16:00”. Cancer Imaging (International Cancer Imaging Society) 5 (Spec No A): S133–S139. doi:10.1102/1470-7330.2005.0108. PMC 1665314. PMID 16361129. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1665314/. 
  2. ^ Bielen DJ; Bosmans HT; De Wever LL et al. (September 2005). “Clinical validation of high-resolution fast spin-echo MR colonography after colon distention with air”. J Magn Reson Imaging 22 (3): 400–5. doi:10.1002/jmri.20397. PMID 16106357. 
  3. ^ a b "Virtual Colonoscopy" Archived 2014-10-09 at the Wayback Machine. - National Digestive Diseases Information Clearinghouse - NIH
  4. ^ Menardo G (December 2004). “Sensitivity of diagnostic examinations for colorectal polyps”. Tech Coloproctol 8 (Suppl 2): s273–5. doi:10.1007/s10151-004-0175-0. PMID 15666105. 
  5. ^ Virtual Colonoscopy - Mayo Clinic. "Virtual colonoscopy is typically faster than traditional colonoscopy. A scan of your colon takes about 10 minutes. Expect the entire virtual colonoscopy procedure to take 20 to 30 minutes."
  6. ^ Yee J; Kumar NN; Godara S et al. (August 2005). “Extracolonic abnormalities discovered incidentally at CT colonography in a male population”. Radiology 236 (2): 519–26. doi:10.1148/radiol.2362040166. PMID 16040909. http://radiology.rsnajnls.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=16040909 2008年12月22日閲覧。. 
  7. ^ Pickhardt, Perry J. (April 2010). “Colorectal and Extracolonic Cancers Detected at Screening CT Colonography in 10,286 Asymptomatic Adults”. Radiology 255-1 (1): 83–88. doi:10.1148/radiol.09090939. PMID 20308446. https://pubs.rsna.org/doi/pdf/10.1148/radiol.09090939. 
  8. ^ Virtual Colonoscopy”. National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK), US. 2018年12月11日閲覧。
  9. ^ Findings presented at the American College of Gastroenterology annual scientific meeting in Las Vegas, Nev. An abstract of the study was printed in the September 2006 issue of The American Journal of Gastroenterology.
  10. ^ Lim, Hyun Kyong; Lee, Kyoung Ho; Kim, So Yeon; Kim, Kil Joong; Kim, Bohyoung; Lee, Hyunna; Park, Seong Ho; Yanof, Jeffrey H. et al. (Feb 2011). “Does the amount of tagged stool and fluid significantly affect the radiation exposure in low-dose CT colonography performed with an automatic exposure control?”. European Radiology 21 (2): 345–52. doi:10.1007/s00330-010-1922-4. PMID 20700594. 
  11. ^ Graser, Anno; Melzer, Anja; Lindner, Evelyn; Nagel, Dorothea; Herrmann, Karin; Stieber, Petra; Schirra, Jörg; Mansmann, Ulrich et al. (Apr 2013). “Magnetic resonance colonography for the detection of colorectal neoplasia in asymptomatic adults.”. Gastroenterology 144 (4): 743–750.e2. doi:10.1053/j.gastro.2012.12.041. PMID 23415805. 

参考文献

外部リンク




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