アナバチ科
(ジガバチ科 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/27 06:37 UTC 版)
アナバチ科 | |||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]()
狩った獲物を運ぶアナバチの一種
|
|||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
|
アナバチ科(Sphecidae)はハチ目ハチ亜目ミツバチ上科に分類されるカリバチ。ジガバチ科とも。この科に属す種を総称してアナバチと呼ぶ[1]。下位にはジガバチ亜科などが属す。
かつてはセナガアナバチ科などもアナバチ科に含まれ、11亜科226属、世界には約8000種がおり、このうち日本には7亜科38属の約280種が分布する[1]とされていた。その後2000年代になって、大半の亜科は独立したギングチバチ科に再分類されている[2]。この、かつてのアナバチ科のハチを総称してアナバチと呼ぶことも多い。
現在のアナバチ科は、アナバチ亜科(Sphecinae)、ジガバチ亜科(Ammophilinae)、ドロジガバチ亜科(Sceliphrinae)、Chloriontinae亜科の4亜科(世界で約800種)のみとされる[3][4]。
典型的な狩りバチであり、獲物は各種の昆虫やクモ類である。自ら営巣して幼虫室をつくり、幼虫の食料として麻酔した獲物を運び込んで卵を産み付けたあと部屋を閉じるものが大半だが、一部の種(Chlorion lobatumなど)は外部寄生する[5]。社会性はなく、単独行動をとる[1]。
日本産アナバチ科
以下では主に寺山守・須田 2016[4]を参考に日本産の種について概要を記す。
ジガバチ亜科 - 腹柄は2節からなり長い。ミカドジガバチは朽木に、他の3種は地面に穴を掘ってチョウ目の幼虫(イモムシやシャクトリムシ)を貯える[5]。
- サトジガバチ Ammophila sabulosa 体長19-25mm 北海道、本州、(四国及び[6])九州、対馬、南西諸島(大隅諸島)[7]
- ヤマジガバチ Ammophila infesta 体長19-25mm 北海道、本州、九州、南西諸島(屋久島)[7]
- フジジガバチ Ammophila clavus 体長20-30mm 本州、九州、南西諸島(沖縄島以南)
- ミカドジガバチ Hoplammophila aemulans 体長約26mm 本州(主に青森県津軽以南[8])、四国及び[8])九州[7]、対馬
ドロジガバチ亜科 - 腹柄は1節からなり長い。幼虫の食料として数匹のクモを貯える。ドロジガバチ属Sceliphronは泥を使って葉巻き型の壺を作って育房とし、数個の育房をかためて作ると全体をさらに泥で上塗りする。ルリジガバチ属はキゴシジガバチの古巣や竹筒など既存の穴を利用して育房とし、最後に白い泥(鳥の尿など)で封をする[5]。
- ヤマトルリジガバチ Chalybion japonicum 体長約26mm 本州(主に青森県津軽以南[9])、四国、九州、南西諸島、伊豆諸島、小笠原諸島
- ベンガルルリジガバチ Chalybion bengalense 体長約13-16mm 南西諸島
- キゴシジガバチ Sceliphron madraspatanum 体長20-28mm 本州(主に南部[10])、四国、九州、対馬、南西諸島
- モンキジガバチ Sceliphron deforme 体長15-20mm 北海道、本州、四国、九州、南西諸島
- アメリカジガバチ Sceliphron caementarium 体長20-25mm 本州、九州、小笠原諸島 - 外来種
アナバチ亜科 - 腹柄は1節で短い。幼虫の食料として主にキリギリス科の幼虫または成虫を数匹貯える[5]。オキナワアナバチは大型のバッタ、ツマキアナバチはコマダラゴキブリの成虫を狩ることが知られている[4]巣はツツアナバチ属Isodontiaでは枯れ木の坑などを利用し、部屋の隔壁や出入口の封鎖にはコケ(キバネアナバチ、アルマンアナバチ)や枯れ草(コクロアナバチ)、木クズ(ツマキアナバチ)が使われる[4]。他の2属は地面に穴を掘る[5]。
- クロアナバチ Sphex argentatus 体長22-30mm 北海道、本州、四国、九州、伊豆諸島、南西諸島[7]
- キンモウアナバチ Sphex diabolicus 体長23-30mm 本州(主に東京都、千葉県以西[11])、四国、九州、南西諸島
- フクイアナバチ Sphex inusitatus 体長20-30mm 本州、九州
- キンイロアナバチ Sphex sericeus 体長20-25mm 南西諸島(沖縄島)
- コクロアナバチ Isodontia nigella 体長15-24mm 北海道、本州、九州、対馬、伊豆諸島、南西諸島
- キバネアナバチ Isodontia nigella 体長約20mm 本州、四国、九州、南西諸島(屋久島、奄美大島)
- アルマンアナバチ Isodontia harmandi 体長15-24mm 本州、四国、九州、対馬
- ツマキアナバチ Isodontia auripygata 体長21-28mm 南西諸島(八重山諸島)
- オガサワラアナバチ Isodontia boninensis 体長約15mm 小笠原諸島
- オキナワアナバチ Prionyx viduatus 体長12-24mm 南西諸島
出典
- ^ a b c コトバンク アナバチ
- ^ 平嶋 & 森本 2008, p. 554.
- ^ Marshall,S.A.2023 Hymenoptera: The Natural History & Diversity of Wasps,Bees & Ants. Firefly Books
- ^ a b c d 寺山守・須田博久編著 2016 日本産有剣ハチ類図鑑. 東海大学出版部
- ^ a b c d e 岩田久ニ雄 1975 自然観察者の手記 朝日新聞社
- ^ “サトジガバチ 広島大学東広島キャンパス”. 広島大学デジタルミュージアム (2020年10月1日). 2025年7月14日閲覧。
- ^ a b c d 文一総合出版『ポケット図鑑 日本の昆虫1400 ②トンボ・コウチュウ・ハチ』281-282頁
- ^ a b “青森県レッドデータブック 2020年版 昆虫類(p.250-353)p,324”. 青森県庁 (2020年). 2025年7月14日閲覧。
- ^ “青森県レッドデータブック 2020年版 昆虫類(p,250-353)p,271”. 青森県庁 (2020年). 2025年7月14日閲覧。
- ^ “キゴシジガバチ|京都府レッドデータブック2015”. www.pref.kyoto.jp. 2025年7月14日閲覧。
- ^ “教室博日記:キンモウアナバチ”. www.chiba-muse.or.jp. 2025年7月14日閲覧。
参考文献
- 平嶋義宏・森本桂(監修者)『トンボ目・カワゲラ目・バッタ目・カメムシ目・ハエ目・ハチ目 他』 第3巻(新訂版初版発行(旧版初版発行:1965年5月30日))、北隆館〈新訂 原色昆虫大圖鑑〉、2008年1月20日、554頁。ISBN 978-4832608276。
「ジガバチ科」の例文・使い方・用例・文例
- 膜翅目ジガバチ科とハナダカバチモドキ科
- ジガバチ科のページへのリンク