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ゴーラル属

(ゴーラル から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/12 05:01 UTC 版)

ゴーラル属
ゴーラル Naemorhedus goral
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 偶蹄目 Artiodactyla
亜目 : 反芻亜目 Ruminantia
下目 : Pecora
: ウシ科 Bovidae
亜科 : ヤギ亜科 Caprinae
もしくは(Antilopinae
: (ヤギ族 Caprini)
: ゴーラル属 Naemorhedus
学名
Naemorhedus Smith, 1827[1]
タイプ種
Naemorhedus goral (Hardwicke, 1825)
和名
ゴーラル属[2]
  • オナガゴーラル N. caudatus
  • アカゴーラル N. baileyi
  • ゴーラル N. goral
  • チュウゴクゴーラル N. griseus

ゴーラル属(ゴーラルぞく、Naemorhedus)は、偶蹄目ウシ科に含まれる

分布

インド大韓民国タイ中華人民共和国朝鮮民主主義人民共和国ネパールミャンマーロシア南東部[2][3]

形態

尾は短いか中程度で、先端には房状の体毛が伸長する[2][3]

眼窩がわずかに突出する[2]前顎骨鼻骨に接しない[2]。頭頂部が盛り上がり[4]、頭骨の顔と頭頂部の稜線の間の角度が60°以上に達する[2]。角は後方に向かい、鉤状にならない[2]。眼下部に臭腺(眼下腺)がない[2][4][5]。吻端の体毛で被われない裸出した皮膚部(鼻鏡)は大型で、鼻孔より後方に達する[2]。臼歯の数は上顎・下顎共に左右に3本ずつ(上顎・下顎で6本ずつ)[2]中手骨中足骨は細長い[2]。蹄の間に臭腺(蹄間腺)がある[2][4]

乳頭の数は4個[2]

分類

ジャコウウシOvibos moschatus

ニホンカモシカ
Capricornis crispus

スマトラカモシカ
Capricornis milneeswardsii

タイワンカモシカ
Capricornis swinhowe

N. griseus griseus

アカゴーラルN. baileyi

N. griseus evansi

Hassanin et al.(2012)よりミトコンドリアDNAのシトクロムbとCOI遺伝子の塩基配列を決定し最大節約法で推定した系統図を抜粋[6]

カモシカ属と形態が類似し近縁と考えられ、本属の方がやや進化した分類群だと考えられていた[2]。2012年に発表されたミトコンドリアDNAのシトクロムbとCOI遺伝子の塩基配列を決定し最大節約法などによる系統解析でも、カモシカ属とは単系統群を形成すると推定されている[6]

以下の分類・英名は、Grubb(2005)に従う[1]。和名は川田ら(2018)に従う[7]

以前はゴーラルのみで本属を構成していたが[8]、亜種と考えられていたオナガゴーラルやアカゴーラルが形態から別種とされるようになった[4][5]。2005年の分類ではチュウゴクゴーラルが独立種とされた[1]。一方で2019年にはチュウゴクゴーラルとゴーラルを同種とする説が提唱された[9]。2021年の分子系統学的研究でも狭義のチュウゴクゴーラルとゴーラルを同種とみなしたが、チュウゴクゴーラルの亜種とされていたN. griseus evansiがゴーラルやチュウゴクゴーラルよりもアカゴーラルと近縁であることから独立種N. evansiとし、アカゴーラルをN. baileyiN. cranbrookiの2種に分割する説も提唱されている[10]。狭義のチュウゴクゴーラルを独立種として認める場合、本属は最大6種に分類される[11]

なお、日本列島においては鹿間時夫栃木県葛生町から出土した後期更新世化石Naemorhedus nikitini として報告したが、後の調査でカモシカ属(ニキチンカモシカ)として再分類されている[12][13]

生態

食性は植物食で、、木の葉、果実などを食べる[4][5]

繁殖形態は胎生。1回に1頭(まれに2頭)の幼獣を産むと考えられている[2][4][5]

人間との関係

生息地では食用とされたり毛皮が利用され、内臓が薬用になると信じられている[5]

伐採・造林・焼畑による生息地の破壊、食用や薬用、毛皮用の乱獲などにより生息数が減少している種もいる[4][5]

参考文献

  1. ^ a b c Peter Grubb, "Naemorhedus,". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, pp.705-706
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 今泉吉典 「ゴーラル属」『世界の動物 分類と飼育7 (偶蹄目III)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1988年、92-94頁。
  3. ^ a b Valerus Geist「ヤギ,ヒツジの仲間」「ヤギ亜科26種」三浦慎悟訳、今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科4 大型草食獣』、平凡社、1986年、144-149頁。
  4. ^ a b c d e f g h 小原秀雄 「アカゴーラル」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、158頁。
  5. ^ a b c d e f g 小原秀雄 「オナガゴーラル」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社2000年、156頁。
  6. ^ a b Alexandre Hassanin, Frederic Delsuc, Anne Ropiquet, Catrin Hammer, Bettine Jansen van Vuuren, Conrad Matthe, Manuel Ruiz-Garcia, Franc ois Catzeflis, Veronika Areskoug, Trung Thanh Nguyen, Arnaud Couloux, "Pattern and timing of diversification of Cetartiodactyla (Mammalia, Laurasiatheria), as revealed by a comprehensive analysis of mitochondrial genomes," Comptes Rendus Biologies, Volume. 335, Issue. 1, 2012, pp. 32-50.
  7. ^ 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  8. ^ Jim I. Mead, Nemorhaedus goral, Mammalian Species, No. 335, American Society of Mammalogists, 1989, Pages 1–5.
  9. ^ Emiliano Mori, Luca Nerva, Sandro Lovari, “Reclassification of the serows and gorals: the end of a neverending story?,” Mammal Review, Volume 49, Issue 3, 2019, Pages 256-262.
  10. ^ Guogang Li, Nan Sun, Kyaw Swa, Mingxia Zhang, Ye Htet Lwin & Rui-Chang Quan, “Phylogenetic reassessment of gorals with new evidence from northern Myanmar reveals five distinct species,” Mammal Review, Volume 50, Issue 4, Mammal Society, 2020, Pages 325-330.
  11. ^ Bheem Dutt Joshi, Vinaya Kumar Singh, Hemant Singh, Saurav Bhattacharjee, Ashutosh Singh, Sujeet Kumar Singh, Kailash Chandra, Lalit Kumar Sharma & Mukesh Thakur, “Revisiting taxonomic disparities in the genus Naemorhedus: new insights from Indian Himalayan Region,” Mammalia, Volume 86, Issue 4, Walter de Gruyter, 2022, Pages 373-379.
  12. ^ 仲谷英夫「日本産の更新世ウシ科化石」(pdf)『化石研究会会誌』第19巻第2号、化石研究会、1987年3月、48-52頁、2025年6月12日閲覧 
  13. ^ 樽野博幸、石田克、奥村潔「岐阜県熊石洞産の後期更新世のヒグマ、トラ、ナウマンゾウ、カズサジカ、カモシカ属の化石」(pdf)『大阪市立自然史博物館研究報告』第72号、大阪市立自然史博物館、2018年3月31日、81-151頁、2025年6月12日閲覧 

関連項目


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