コナン (ハビエル・ミレイの犬)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/23 18:00 UTC 版)
生物 | 犬 |
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犬種 | イングリッシュ・マスティフ |
性別 | 雄 |
生誕 | 2004年 アルゼンチン ブエノスアイレス州 |
死没 | 2017年5月(12 - 13歳没) アルゼンチン |
飼い主 | ハビエル・ミレイ |
名の由来 | コナン・ザ・グレート |
コナン(Conan)は第59代アルゼンチン大統領ハビエル・ミレイがかつて飼っていた犬。犬種はイングリッシュ・マスティフ。1982年の映画『コナン・ザ・グレート』でアーノルド・シュワルツェネッガーが演じたキャラクターに因んでコナンと命名された[1]。2004年から飼い始めたコナンは独身で家族のいないミレイにとって最高の友あるいは息子のように感じられ、常に身近で最大の愛を持って支えてくれる存在だったが2017年に脊椎がんで亡くなった[1]。
2018年、コナンとの死別を受け入れ難いミレイは保存していたコナンの細胞をアメリカのPerPETuate社に託しクローン犬を誕生させた。またコナンに加えミルトン、マレー、ロバート、ルーカスと名付けた4頭のクローン犬も手に入れた[2][3][4]。ミレイは身近なクローン犬たちはもちろん他界したコナンとも霊媒師を通して会話し政策面で助言を得たとして大統領当選後に最大の感謝を述べた。こうしたオカルトめいたミレイの発言はたびたび世間に論争を巻き起こした[5]。
生涯
2004年頃生まれたコナンは子犬のうちにミレイに引き取られた。ミレイは彼の存在を「真実のそして最高の愛」であり「まさしく私の息子」だと語っている[5][6]。傍らに寄り添い苦難の日々を支えてくれたコナンに深い愛情を注ぎ、例えば夕食時にシャンパンを振る舞うなど人間の家族同様の扱いをしていたことも明かした[7]。 2017年コナンは脊椎がんで亡くなった。ミレイは霊媒師の導きにより死後のコナンとコンタクトを開始しやがてお互い前世で出会っていたと信じるに至った。その内容は前世で剣闘士とライオンとして出会ったが来世の壮大なプロジェクトで協力する運命であることを予見し決闘を拒んだというもので、ミレイはこれを来るべきアルゼンチン大統領選への出馬を預言したものと解釈した[8][9][10]。 ミレイはまたコナンの死を現実的な死ではなく「物理的な消失」と呼び、あたかもまだ存在するかのように振る舞い続けた。コナンはミレイを守るために神の隣に座っておりそのおかげでミレイは神自身とも対話できるようになったのだと語った[11]。
クローン
2018年、コナンのDNAを利用したクローン犬入手にあたってミレイはアメリカの企業PerPETuate社に5万ドル(当時のレートで約550万円)を支払った。クローン化の意図はコナンを永遠に手元に置きたいとの願いからだった[10]。クローニングで誕生した犬は6頭だったが1頭はすぐに亡くなってしまった。夭逝した1頭は「小さな天使(Angelito)」、残りの5頭はそれぞれ1頭がコナン他の4頭は尊敬する経済学者にあやかりミルトン(ミルトン・フリードマン)、マレー(マレー・ロスバード)、そしてロバートとルーカス(いずれもロバート・ルーカス)と命名された[12][13][14][15]。ミレイにとって新しいコナンは初代コナンの生まれ変わりであり自分の息子、そしてミルトン以下4頭は孫に等しい存在だと語った[6]。ミレイは彼らを「四つ足の子供たち」と呼んでいる[3]。
ミレイは妹カリーナや霊媒師の手助けとテレパシーの探求により初代のコナンやクローン犬たちと会話できると主張している[2][3]。彼によれば新しいコナンは総合戦略を、ロバートは未来の予見と失敗からの学びを、ミルトンは政治を、そしてマレーは経済を担当する助言者たちであるとされる[4]。こうした超自然的な発言はしばしば世間の論争を巻き起こした。疑念を抱くマスコミのインタビューに対しミレイは「私が自宅でどんな霊的な行為をしようがそれは私の勝手だ。コナンが政治のアドバイスをしてくれるなら、即ちそれは彼が最高のコンサルタントだということだ」と回答した[9]。
2023年 大統領選挙戦

コナン、クローンコナン、そして4頭のクローン犬たち、彼らの存在とテレパシーなどにまつわるエピソードはミレイが政界で頭角を現し大統領選に出馬する頃には国内のみならず海外でも注目を集めた[3][16]。クローン犬を提供したPerPETuate社の社長ロン・ギレスピーは「私に投票権はないが5頭の犬を大統領選に参加させている」と語った[17]。 ミレイは自分と初代コナンが神に導かれ使命を全うするため巡り合わされたと信じていた。彼らの初めての出会いは2000年以上前のローマ帝国のコロッセオで、剣闘士のミレイとライオンのコナンは決闘を義務付けられた立場だったが、来世で協力して壮大なプロジェクトに挑む運命であることを予見し闘いを避けたのだという。またその使命がこの大統領選であるとも確信していた[3]。選挙戦勝利後、ミレイは親族で唯一の理解者であり犬たちとの交信を手助けしてくれた妹カリーナに加え、コナンを始めとする犬たちに最大級の感謝を述べた[16]。

大統領選出から5日後の2023年11月24日、ミレイは「家族写真」とのタイトルで自らのInstagramにAI生成の画像を投稿した[18]。そこにはミレイと5頭の犬たちが描かれていた。中央の犬だけかなり大きく描かれコナンであることを現していた。この画像には多くのコメントが投稿された[19]。 第59代アルゼンチン大統領に就任したミレイは、就任式で渡される大統領警棒にコナンと4頭の犬たちが彫刻されたものを採用した。歴代大統領の警棒を担当した伝説の金細工職人フアン・カルロス・パヤロルスが提供した警棒や、他の職人が手掛けた伝統のライオン彫刻の警棒などを選ばなかった結果ちょっとした「警棒騒動」に発展した[20]。自作の警棒が採用されたと主張していたパヤロルスは後にミレイの広報担当から嘘つきだと非難された[21]。 ミレイはキンタ・デ・オリヴォス(大統領官邸)に犬舎を増築し4頭の犬も住まわせる予定だと公言したことからスタッフの間にはセキュリティ上の懸念が広がった[22][23]。なお官邸に住む犬は5頭のうち孫たちと呼ぶ4頭でコナンは含まれないように見受けられた。ミレイがコナンに言及する際新旧どちらのコナンを指すのか区別せず曖昧で、公の写真には4頭しか登場しないためコナンの存在が疑問視されたがミレイ或いは大統領報道官から明確な回答は得られていない[15][23]。
関連項目
- 第58代アルゼンチン大統領アルベルト・フェルナンデスの犬
- 商業的クローニング
- クローン動物一覧
- 実在した犬の一覧
脚注
- ^ a b Guzman, Chad de (20 November 2023). "Argentina's President-Elect Seeks Counsel From His Cloned Dogs". TIME (英語). 2025年1月19日閲覧。
- ^ a b “Javier Milei, il leader di estrema destra che ha vinto le primarie in Argentina” (イタリア語). Il Post. (2023年8月14日). ISSN 2610-9980. オリジナルの2023年8月16日時点におけるアーカイブ。 2023年12月1日閲覧。
- ^ a b c d e De Guzman, Chad (20 November 2023). "Argentina Just Elected an Eccentric Populist Who Seeks Counsel From His Cloned Dogs". Time. ISSN 0040-781X. 2023年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月1日閲覧。
- ^ a b Pokorowski, Federico (2023年7月30日). “Elecciones 2023: 'El loco', un viaje al lado oscuro de Javier Milei” (スペイン語). El Destape. 2023年11月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月1日閲覧。
- ^ a b Nicas, Jack (2023年10月19日). “The 5 Clones in Argentina's Election”. The New York Times. ISSN 1553-8095. オリジナルの2023年11月24日時点におけるアーカイブ。 2023年12月1日閲覧。
- ^ a b González, Juan Luis (July 2023) (スペイン語). El loco: La vida desconocida de Javier Milei y su irrupción en la política argentina (1st ed.). Planeta Argentina. pp. 1–4. ISBN 9504982891
- ^ Brigida, Anna-Catherine (2023年10月22日). “Milei's cloned dogs steal limelight in Argentina election”. Reuters. ISSN 2293-6343. オリジナルの2023年11月24日時点におけるアーカイブ。 2023年12月1日閲覧。
- ^ “Su perro muerto, esoterismo y la 'misión' de Dios: los secretos de Javier Milei” (スペイン語). iProfesional (2023年7月6日). 2023年8月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月1日閲覧。
- ^ a b González, Juan Luis (9 August 2023). "Milei y su perro muerto: quién es la fuente secreta de 'El Loco', el libro sobre él". Revista Noticias (スペイン語). 2023年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月1日閲覧。
- ^ a b “Conan, el perro cordobés de Milei que murió y fue clonado por miles de dólares” (スペイン語). El Doce (2023年8月15日). 2023年8月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月1日閲覧。
- ^ Salomé, René (2023年7月2日). “Los secretos mejor guardados de Milei: telépatas para hablar con su perro muerto y la misión que le encomendó Dios” (スペイン語). Infobae. オリジナルの2023年11月20日時点におけるアーカイブ。 2023年12月1日閲覧。
- ^ “Milei presentó a su 'hijo' Conan y a sus 'nietos' de cuatro patas en Infama Recargado” (スペイン語). América TV. (2018年8月20日). オリジナルの2019年3月28日時点におけるアーカイブ。 2023年12月1日閲覧。
- ^ Portes, Ignacio (2023年7月9日). “Argentina's media takes aim at Milei's craziest side”. The Brazilian Report. 2023年7月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月1日閲覧。
- ^ “Revelan los secretos místicos de Javier Milei: esoterismo, la 'misión' de dios y charlas con su perro muerto” (スペイン語). Ámbito Financiero. (2023年7月5日). オリジナルの2023年8月16日時点におけるアーカイブ。 2023年12月1日閲覧。
- ^ a b “「チェーンソー大統領の参謀」という5匹のクローン犬…始まりは黄禹錫氏だった”. /japanese.joins.com (2023年11月23日). 2025年3月13日閲覧。
- ^ a b Viriglio, Veronique (2023年8月16日). “Il 'Trump argentino' che sfida Kirchner” (イタリア語). AGI. オリジナルの2023年8月18日時点におけるアーカイブ。 2023年12月1日閲覧。
- ^ “Quotation of the Day: In Argentina, Five Cloned Dogs and an Unusual Political Run”. The New York Times: p. 2. (2023年10月20日). ISSN 0362-4331. オリジナルの2023年11月29日時点におけるアーカイブ。 2023年12月1日閲覧。
- ^ “El 'álbum familiar' de Javier Milei junto a sus 5 perros” (スペイン語). La Capital. (2023年11月24日). オリジナルの2023年12月11日時点におけるアーカイブ。 2023年12月11日閲覧。
- ^ “Javier Milei, Conan y el resto de sus perros: la foto con IA que posteó en Instagram” (スペイン語). Ámbito Financiero. (2023年11月24日). オリジナルの2023年12月4日時点におけるアーカイブ。 2023年12月11日閲覧。
- ^ Devita, Marina (2023年12月10日). “El sorprendente bastón presidencial de Javier Milei con sus cinco perros tallados” (スペイン語). Clarín. オリジナルの2023年12月10日時点におけるアーカイブ。 2023年12月11日閲覧。
- ^ Oria, Santiago [@Santiago_Oria] (2023年12月11日). "Este es el VERDADERO bastón presidencial de JAVIER MILEI. Pallarols estuvo mintiendo todo este tiempo". X(旧Twitter)より2025年3月13日閲覧。
- ^ Niebieskikwiat, Natasha (2023年12月10日). “La nueva vida de Milei en Olivos: temor en la seguridad por los perros mastines del nuevo presidente” (スペイン語). Clarín. オリジナルの2023年12月9日時点におけるアーカイブ。 2023年12月11日閲覧。
- ^ a b Mar Centenera (2024年4月26日). “The mystery of Milei’s cloned dogs: Argentina wonders if there are four or five”. english.elpais.com. 2025年3月13日閲覧。
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