くぶしっくり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/25 23:14 UTC 版)
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概要
長野県伊那市西箕輪羽広で語られていた妖怪で、夕方に道端に生えている木の下を子供が通ると顔に貼りついてくる[1][2]という。くぶしっくりが出るとされる木は「くぶしの木」[1]だとされる。くぶしはコブシ(辛夷)[3][4][5][6]あるいはタムシバ(田虫葉、ニオイコブシ)[7]の地方名で、「くぶしっくり」の「くぶし」もコブシのことだと考えられる[1]。
『長野県史』では「道に出る妖怪」[2]の一種類として分類されており、長野県の妖怪としては同様に木から現れる薬缶吊るや袋下げなども道に出る妖怪として分類されてきている[8]。岐阜県の袋下げにも、「大きなえのきの木」に暗くなると出現するので近づいてはいけないと子供の注意に用いていたという話がある[9]。
くぶしの木
くぶしの木に関する言い伝えには、他にも長野県美和村(現・伊那市)にみることができる。道祖神の脇に「くぶしの木」が生えており、これに不用意に触れると瘧(おこり)にかかるといわれ、伐ってはならない木とされていた[10]。
一般的に、コブシは開花などを農作の基準目安とする木として、あるいは花のつき方を作柄の予兆とする木としての役割も持たれていた。そのため、人々にとっては季節の移り変わりを示す、地域社会にとって身近な樹木でもあった[11]。長野県以外の各地でも迎春花[12]または白桜・田植桜・田打桜・種蒔桜などの呼び名でサクラと同様に季節や農期を示す木とされていた[13][14][15][16]。
注釈
- ^ a b c 怪作戦テラ,高橋郁丸,毛利恵太 『日本怪妖怪事典 中部』 2023年 笠間書院 222頁
- ^ a b 長野県 『長野県史 民俗編 第2巻(3)南信地方』 1989年 長野県史刊行会 99頁
- ^ 向山雅重 『向山雅重著作集』第2巻(山国の生業) 1988年 新葉社 94頁
- ^ 倉田悟『日本主要樹木名方言集』 1963年 地球出版 61頁
- ^ 田中芳男・編, 堀田正逸・補 『林産名彙』 1913年 大日本山林会 34頁
- ^ 川口謙二『花と民俗』 1982年 東京美術 71頁
- ^ 倉田悟『日本主要樹木名方言集』 1963年 地球出版 62頁
- ^ 迷信調査協議会 『迷信の実態』 1949年 技報堂 70頁
- ^ 恵那市史編纂委員会 編 『恵那市史 恵那のむかしばなしとうた』 1974年 恵那市 216頁
- ^ 柳田國男・編 『山村生活の研究』 1937年 民間伝承の会 466頁
- ^ 長野県 『長野県史 民俗編 第5巻 総説1』 1991年 378-379頁・636頁
- ^ 正宗敦夫・編 『日本古典全集 第4期第17』 1931年 日本古典全集刊行会 (物類称呼巻三)86頁
- ^ 大藤時彦『日本民俗学の研究』 1979年 学生社 313-314頁
- ^ 能田多代子 『青森県五戸方言集』109頁1982年 国書刊行会 109頁
- ^ 岩手県教育委員会事務局文化課 編 『岩手の俗信 第5集 生物に関する俗信』 1982年 岩手県教育委員会 116-117頁
- ^ 長岡民俗の会 『長岡市の民俗調査報告1』 1985年 長岡民俗の会 18頁
関連項目
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