Yak-1 (航空機) 構造

Yak-1 (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/01 16:25 UTC 版)

構造

鋼管と木を組み合わせた混合構造

Yak-1は当時の戦闘機の中でも最も軽量な機体のひとつであった。Yak-1は低翼機で、機体は混合構造であった。すなわち、胴体の骨組みはクロマンシル(クロムマンガンシリカ鋼)製の溶接管で、機首外板はジュラルミン製、主翼の主桁はいわゆる「デルタ合板」、主翼と胴体の大半の外皮は合板、後部胴体から尾部までの下部と方向舵・昇降舵は羽布張りだった。「デルタ合板」は積層材の一種で、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂をアルコール溶液によって浸透させ、加熱によってプレス加工した薄い白樺材を、VIAM-ZB (ВИАМ-ЗБ) と呼ばれる接着剤で互いに貼り合わせたものであった。「デルタ合板」はたいへん丈夫で耐火性に優れるという長所を持ち多くのソ連機に使用されたが、その反面で重量がかさむという重大な欠点を持っており、これにより機体の操縦特性や機動性の悪化が招かれた。だが、当時のソ連国内の鉄鋼業事情を考えると、主力機を混合構造の機体としたのは得策といえた。特に、重工業をはじめあらゆる産業の中心地であったウクライナが真っ先にドイツ軍による侵略と損害を受け、各工業施設がシベリア方面への疎開を余儀なくされたことを考慮すれば、もしYak-1をはじめとする多くの軍用機が全金属製で設計されていたら、それは大戦末期の日本のように致命的な航空機生産力の低下を招いていたであろう。西側では木製軍用機として合板で挟んだバルサ材と羽布張りの主翼をもったモスキートが特に有名であるが、ソ連ではYak-1やIl-2をはじめ終戦まで混合構造の軍用機がその主力となっており、モスキートもソ連ではごくありふれた構造をもつ航空機のひとつでしかなかった。ソ連で全金属製の戦闘機が主力となるのは、戦後Yak-9PLa-9が配備されてからである。

Yak-1は、1050馬力の液冷V型12気筒のレシプロエンジン M-105PAにより、最大580 km/hで飛行、高度5000 mまでは5.4分以内に到達できた。

Yak-1の武装はすべて胴体に集中位置されており、20mm ShVAK 1門がエンジンのプロペラハブ軸上に、7.62mm ShKAS 2挺が機首エンジン上面に並べて搭載されていた。この武装は当時としては強力なもので、同時期に開発されたミグやラーヴォチキンの機体は7.62 mmや12.7 mm機銃しか搭載していなかった。これらの機体が打撃力不足に悩まされていたのに対し、Yak-1の20 mm機関砲ShVAKは脆弱な防御しか持たない当時の多くの機体に対して致命打となりうる攻撃を加えることが出来た。ShVAKは、大型の爆撃機に対しても大きな威力を発揮した。LaGG-3の原型機が搭載していた23 mm機関砲 MP-6が不調で機体の改良に伴い撤去されたのに対し、ShVAKは十分な働きを見せ、第二次大戦におけるソ連戦闘機の標準武装のひとつとなった。ShKASも、同じくソ連軍戦闘機の標準武装のひとつであった。ShKASは小口径で一発の威力には劣ったが、高い射撃速度により戦闘機など軽防御ではあるが軽快な動きを見せる機体に対し効果的であると考えられた。のち戦闘機の防御力の向上により7.62 mm機銃弾では威力不足となると、改良型のYak-1には12.7 mmのUBがShKASにかわって搭載されるようになった。当初はUBを2挺搭載したものもあったが、これは望ましくない重量の増加を招いたため、のちに1挺に減じている。


  1. ^ 「M」は「モトール」(мотор:「発動機」の意味)を意味していたが、のちに設計者ウラジーミル・クリーモフロシア語版のイニシャルをとったVK-105 (ВК-105) に改称された。





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